動画削除 取材制限 美談化 中共がいかに土石流の報道を塗り替えたか

2026/09/04
更新: 2026/09/04

ネパールとチベットの国境地帯で大規模な土石流が発生して以降、現地では救助活動が続いている。一方、災害をめぐる情報公開では、ネパールと中国共産党(中共)側の対応に大きな違いがみられる。

ネパールでは被害状況や死傷者数が随時公表され、外国メディアも被災者を取材している。これに対し、中国側では現場映像の削除や外国人記者の取材制限が指摘される一方、「正能量」を強調する(前向きな姿勢を強調するため災害を美談化する)報道が目立っている。

ネパールと中国 災害報道に大きな違い

独立メディアThe Conversationは最新の記事で、吉隆国境検問所で土石流が発生した後、ネパール政府は死傷者数を随時更新し、外国人記者も被災地や住民を比較的自由に取材できたと伝えた。

一方、中国では、現場映像の削除、外国人記者による独立取材の制限、「正能量」を強調する報道の3つを通じて、報道内容や論調を厳しく管理していると指摘した。

その結果、事故の責任や監督体制の問題、実際の死傷者数ではなく、「指導部の対応」「迅速な救助」「社会の団結」「救助にあたった人物」などに報道の焦点が移っている。

BBCは、中国では8月26日に洪水と土石流が吉隆国境検問所を襲った際の映像を、中国のネット上から相次いで削除していると報じた。ウェイボーやdouyinなどでは、現場の全容が分かる映像はほとんど確認できず、生還者や行方不明者の家族が撮影・投稿した映像や証言も限られているという。

中共中央テレビは8月28日、災害発生時の映像を一部放送したが、報道の中心は被害状況ではなく、現場で住民の避難誘導にあたった人物だった。

外国メディアによる現地取材にも制限がある。

ロイターは、中共当局が安全や交通事情を理由に外国人記者の被災地入りを制限し、独立した取材を難しくしていると報じた。

The Conversationによると、オーストラリア放送協会のアリソン・ホーン記者は、チベットでの取材を複数回申請したものの、中共から繰り返し拒否された。他の外国人記者も同様の対応を受けている。

同記事は英紙ガーディアンの報道を引用し、中国メディアでは中共指導部の対応や李強首相による被災地視察、救助活動が大きく取り上げられる一方、災害が住民や地域社会に与えた影響についての報道は少ないと指摘した。

動画削除 取材制限 「正能量」強調

The Conversationは、中共による災害報道への統制は、過去の大規模災害を経て強化してきたと分析している。

2008年の四川大地震では、発生直後はメディアによる被災地取材や死者数の更新が比較的広く認められ、学校建築の安全性を疑問視する報道もあった。しかし、その後、中共当局は報道への規制を強めた。

同記事が引用した研究によると、2011年の温州高速鉄道事故では、中共は発生当初からメディア報道を厳しく管理した。一方で、地元住民による献血など、社会の連帯を示す正能量の話題を積極的に報じるようメディアに求めた。

その後、2021年の河南省洪水、2022年の中国東方航空MU5735便墜落事故、2023年の河北省涿州市の洪水などでは、中共によるこの3つの手法の運用が、さらに巧妙になったと記事は指摘している。

習近平が2012年に中共トップに就任して以降、新聞やテレビだけでなくSNSへの統制も一段と強まったという。

The Conversationは、外国メディアが中国国内で独自に事実関係を確認することが難しい状況を背景に、中共当局が海外メディアの報道を「偏向している」「事実に反する」などと批判する例も増えていると分析した。

李平