地方で何度訴えても解決しない。最後の望みをかけて北京まで来ても、声を聞いてもらえない。
中国・北京で9月16日、市民の訴えを受け付ける政府機関「国家信訪(陳情)局」を訪れていた陳情者2人が農薬を飲み、その後死亡したと現場にいた陳情者が本紙に明らかにした。
中国には「信訪」と呼ばれる陳情制度がある。土地の強制収用や行政とのトラブルなど、地方で解決できない問題を抱えた市民が、上級機関に救済を求める仕組みだ。北京の国家信訪局は、長年訴え続けてきた人にとって「最後の訴え先」の一つである。
しかし7月から、北京への陳情はさらに難しくなった。省レベルの機関が発行した「すでに地方で陳情手続きをしたことを示す書類」がなければ、北京では受け付けてもらえない。
問題は、その書類を地元で入手できない人がいることだ。そもそも北京まで来るのは、地元で訴えても問題が解決しないからである。ところが陳情者によると、地元では必要な書類を出してもらえず、北京では「書類がない」と受け付けてもらえないという。
地方で救われず北京へ。北京では再び地方へ。事実上のたらい回しである。
別の陳情者によると、新規則で国家信訪局で訴えることが難しくなった人々は、天安門や中南海など中央政府の重要施設周辺へ移り、そこで訴えようとしているという。
訴える場所を封じても、不満そのものは消えない。絶望して命を絶とうとする人がいる一方、長年陳情を続けた末、無差別襲撃など「社会への報復」に走ったとされるケースも実際に起きている。
今回の2人についても、行き場を失った末に農薬を飲み、命をかけて訴えようとしたのではないかとの見方が出ている。
こうした悲劇は、長年繰り返されてきた。
国家信訪局に隣接する永定門護城河(南護城河)では、絶望した陳情者の飛び込みが後を絶たない。陳情者の間ではこの川を「永定河」と呼び、「今日も永定河に陳情者が浮いている」と語られるほどで、2025年には十数件に上ったとの情報もある。2026年5月には、川沿いに高い柵まで設置された。
救済を求める人々が集まる国家機関。そのすぐそばで、救われなかった人々が農薬を飲み、川へ身を投げる。
華人圏では、現代中国を象徴する光景として、こんな話がよく語られる。
「中国で長い列ができるのは、病院の前、米国大使館の前、そして信訪局の前」

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。