中国監視社会の実態 ドローン・顔認識・AIを統合 海外にも波及

2026/10/06
更新: 2026/10/06

チベットの最新事例では、中国共産党(中共)が監視カメラやドローン、顔認識、AIなどを組み合わせ、監視体制を継続的に高度化している実態が浮かび上がった。監視網は空、地上、ネット空間をまたぎ、個人にまで及んでいる。

監視対象も、都市の街頭や当局が「敏感」とみなす地域や人々から、全国の市民へと広がっている。

ドローンによる「治安維持」 都市警備から宗教・国境地域へ

ラジオ・フリー・アジア(RFA)は10月1日、英国の非営利人権団体チベット・ウォッチがまとめた報告書について報じた。

報告は、中共当局が2017年6月~26年7月に公開した入札文書、調達公告、警察発表、飛行禁止令、訓練資料などを基に、チベットにおけるドローン監視体制の拡大を追跡した。

チベット・ウォッチが9月30日に公表した報告書によると、調達主体は自治区の対テロ捜査部門から市・県の公安機関にまで広がり、武装警察や国境管理機関も関与している。

導入する監視設備の種類も、警察用ドローンから自動ドローンドック、対ドローンシステム、低空防衛網へと広がっている。

報告によると、ドローンは過去にチベット人による抗議活動や宗教行事が行われた地域、人々がチベットを離れようとした地域などに配備している。

対象地域にはチベット自治区ナクチュ市ビル県、四川省デルゲ県、ラサ、シガツェ、ネパールへ通じる国境地域などが含まれ、自治区、市、県など各級の公安・治安機関が設備を使用しているという。

シガツェ市サムドゥプツェ区では、警察の記録によると、2024年5月以降、ドローンが5723回出動し、累計飛行距離は2万2700キロを超えた。

ドローンには熱画像装置、レーダー測距装置、拡声設備などが搭載され、大規模行事での人の流れの監視などに使われている。報告によると、同区で行われる大規模行事には、タシルンポ寺での宗教行事も含まれる。

また、ニンティには軍との関係があるとされる「低空防衛網」を整備し、レーダー、AIによる識別、電子フェンス、5か所のドローン基地、ドローン登録システムなどを導入しているという。

このシステムは、対象の発見・識別から、追い払い、調査、対処までを担うとしている。

チベット警察学院には、警察用ドローンの訓練制度も設けている。2023年の警察用ドローン訓練では、巡回、緊急救助と並んで「治安維持」を任務に位置付けていた。

中共 ドローンで法輪功学習者を追跡・監視

明慧ネットに掲載された資料によると、中共は2020年にはすでに、ドローンを使って法輪功学習者を追跡・監視し、警察による拘束のための情報収集に利用していた。

警察がドローンで撮影した写真を、学習者を罪に問うための「証拠」として利用した事例も報告している。

新型コロナウイルスの流行期には、ドローンを使って法輪功学習者の自宅周辺を偵察し、在宅しているかを確認した上で、警察が自宅を訪れ嫌がらせをする事例もあったという。

「法輪功迫害追跡調査国際組織(追査国際)」の汪志遠主席は以前、大紀元の取材に対し、「法輪功への迫害が始まった当初から、中共は監視技術の開発を全面的に進め、その後も対象を拡大し続け、映像、インターネット、ビッグデータ、AIによる監視を一体化させてきた」と述べた。

さらに、「近年、中共が先端技術を使って行う迫害はますます深刻になっており、法輪功学習者への迫害から、社会全体の人々に対する迫害へと広がっている」との見方を示した。

大紀元はこれまでにも、中共が監視カメラや電子追跡装置などを使って法輪功学習者を監視していると報じている。

SNSへの検閲のほか、ビッグデータ分析、AIによる識別、携帯電話の位置情報なども監視に利用しているという。

顔認識・生体認証からAIまで 監視技術を高度化

中共による市民監視は、段階的に高度化してきた。

2017年から2020年ごろにかけて、新疆などで大規模な顔認識、生体認証、予測型警務システムを整備した。オーストラリア戦略政策研究所の研究によると、DNA採取など生体情報を使った監視は、新疆やチベットから徐々に全国へと広がった。

2021~24年にかけては、監視が一般市民のスマホやアプリ、SNS、公共空間にまで及ぶようになった。

Big Data Chinaの研究では、社会的混乱が起きた後、公安当局によるAI関連システムの調達が増える傾向を確認している。

2024年には、香港警察がAIで映像を分析する自動ドローン巡回の導入を計画し始めた。同年には、中国国内で取材していた外国人記者がドローンに追跡される事例も報告した。

2025~26年にかけては、既存の監視カメラ網とAIの統合がさらに進んだ。

英紙フィナンシャル・タイムズは2026年5月、中国の地方政府が、人の集まりをリアルタイムで分析し、異常行動を検知したり、特定の人物や出来事に関連する映像を検索したりできるAIシステムを調達し始めていると報じた。

こうした動きから、監視技術が予測型警務に活用される方向へ進んでいることがうかがえる。

2026年には、ドローン、自動ドローンドック、AI監視カメラ、携帯電話のデータ、生体認証、公安当局のデータベースなど、複数の監視技術を組み合わせる動きがさらに進んでいる。

ブラウン大学の研究者ハン・ジャン氏は2026年、学術誌「Social Forces」に研究を発表した。中共当局による5万1611件の調達契約を基にデータセットを作成し、デジタル監視と社会抗議の関係を分析した。

研究では「二層構造のパノプティコン(two-layer panopticon)」という概念を提示している。

一つは、政府がデジタル技術を使って一般市民を監視する仕組みである。もう一つは、監視を担う現場の行政職員を上級機関が監視する仕組みだ。

研究によると、この二つの監視はいずれも抗議活動の発生が少なくなる傾向と関連しており、両者を組み合わせると、その傾向がさらに強まることも示している。

監視技術と統治手法 国内から海外へ

AP通信は2025年9月、大規模な調査報道を公表した。流出した中国の監視関連企業の資料や政府調達文書、企業資料、数万通の電子メールなどを分析し、中共の監視体制を検証した。

APによると、米国など欧米のテクノロジー企業の技術を、中共公安システムで顔認識、予測型警務、生体認証、DNA採取、少数民族を識別する技術、ネット監視、大規模データ分析などに利用していた。

米戦略国際問題研究所は2025年6月、チベット高原のインフラ整備に関する研究を発表した。

研究によると、中共はファーウェイなどが提供するデジタルインフラを大規模な監視に利用している。関連技術は音声分析や拘禁施設の監視、当局に異議を唱える人物の追跡、警察活動の支援などに使われているという。

こうした監視技術や統治手法は、海外にも広がり始めている。

ロイター通信は2025年9月、中共の警察がソロモン諸島で「楓橋経験」と呼ばれる地域統治モデルを試行していると報じた。

現地では、住民管理や住民登録、地域地図の整備、指紋や掌紋の採取などが行われ、警察関係者が住民に監視用ドローンを紹介したという。

オーストラリア国立大学のベン・ヒルマン氏はロイターに対し、この統治モデルの核心は、地域住民同士に相互監視を促し、社会的な対立が表面化する前に把握することにあるとの見方を示した。

こうした監視技術や統治手法は、中国国内にとどまらず、海外へ持ち込まれる動きもみられる。

呈工