米自動車業界の主要団体が、議会に対し、中国製自動車の輸入や販売、関連ソフトウエア・ハードウエアの使用を恒久的に禁止する措置を法制化するよう求めている。中国メーカーによる政府補助金を背景とした不公正な競争に加え、通信機能を備えた車両を通じた情報収集など、国家安全保障上のリスクを懸念しているためだ。
米自動車業界団体である「自動車イノベーション協会 (AAI)」の最高経営責任者(CEO)ジョン・ボゼラ会長は11月2日、議会で証言し、中国製自動車の大量流入から米国市場を守る必要性を強調。中国メーカーが不公正な競争を通じて、米国内の地域社会に長年投資してきた自動車メーカーを圧迫していると指摘した。
自動車イノベーション協会には、ゼネラル・モーターズ(GM)、トヨタ自動車、フォルクスワーゲンなどの大手メーカーが加盟している。
ボゼラ氏は議会に対し、「国家安全保障上の明白なリスクと、中国当局が繰り返してきた不公正な行為を踏まえれば、米国の防衛産業と先端製造業の基盤を守らなければならない」と訴えた。そのうえで、欧州で中国メーカーの市場参入が進んでいる現状を引き合いに出し、「同じことを米国で許してはならない」と強調した。
同氏によると、欧州連合(EU)が2026年1〜8月に中国から輸入した自動車は110万台を超え、2025年の年間輸入台数を既に上回った。中国メーカーは欧州のほか、豪州、東南アジア、メキシコ、南米でも販売を拡大しているという。
自動車イノベーション協会は9月、議会指導部に書簡を送り、2027年1月3日の議会閉会前に対策を講じるよう要請していた。
書簡では、中国の自動車産業について、政府補助金や不公正な貿易慣行、知的財産の窃取、監視活動などによって競争力を高めてきたと批判。政府の支援を受けた中国メーカーが、コネクテッドカー(通信機能を備えた車両)や関連技術を世界市場で不当廉売していると指摘した。
ボゼラ氏は「米国内ではまだ同様の事態は起きていない」としながらも、脅威の規模と緊急性を踏まえ、年内の議会閉会前に中国製自動車と関連ソフトウエア、ハードウエアを禁止する措置を法制化し、恒久的な国家政策として確立するよう求めた。
米議会では、中国製自動車の市場参入を制限する超党派の動きが進んでいる。上院では9月下旬、民主党のエリッサ・スロットキン議員と共和党のバーニー・モレノ議員らが、関連法案の制定を目指す動きを主導した。
スロットキン氏は当時、連邦議会議事堂での記者会見で、「民主党であろうと共和党であろうと、米国に中国車が入ってくることを望む人はいない」と述べ、党派を超えた対応の必要性を訴えた。
自動車業界も規制強化を求めている。フォードやテスラを含む大手メーカーを代表する6つの業界団体は9月17日、トランプ大統領に書簡を送り、中国メーカーによる米国内での自動車販売、輸入、製造を禁じる現行政策を維持するよう要請した。
米国では既に、中国製コネクテッドカーに対する規制が導入されている。商務省が2025年1月に導入した規則は、中国またはロシアに関係する一部の車両や関連ソフトウエア、ハードウエアを対象としている。ソフトウエアと対象国に関係する車両メーカーへの規制は2027年モデルから、対象ハードウエアへの規制は2030年モデルから適用される。
さらに、上院商業委員会は7月、中国に関連するスマートカーの米国内での販売などを禁止する「2026年コネクテッドカー安全保障法案」を全会一致で可決し、上院本会議での審議に進めた。同法案は、バイデン前政権時代の大統領令に盛り込まれた規制を法律として明文化するもので、同様の法案を下院でも審議している。
規制強化の背景には、車両の通信機能を通じた情報漏えいや遠隔操作への懸念がある。米国側は、中国やロシアに関係するソフトウエアやハードウエアを搭載した車両について、運転者の個人情報や機密性の高い施設に関する情報が外部に流出したり、車両が遠隔操作されたりする恐れがあると警戒する。
近年は新車のほぼすべてに通信機能を搭載しており、自動車が安全保障上の新たなリスクになり得るとの認識が広がっている。
米国では既存の規制を法律として定着させるとともに、対象範囲を拡大する動きが強まっている。中国メーカーの競争力拡大を背景に、米国の自動車産業保護と国家安全保障を理由とした対中規制が、超党派の議会と業界団体の双方から求められている。
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