米中間選挙で、民主党が上下両院の多数派を奪還した。専門家は、イラン戦争による原油高への不満に加え、トランプ米大統領の急激な政策転換が、民主党の躍進を意味する「ブルーウェーブ(青い波)」を生んだと分析する。
今回の選挙結果はトランプ政権の政策遂行を制約するものの、米国の対中政策がかつての宥和路線に戻る可能性は低く、むしろ強硬姿勢が一段と強まるとの見方が出ている。
米中間選挙で民主党が躍進 「ブルーウェーブ」の背景
米国の保守系評論家でジャーナリストの方偉氏は、今回の中間選挙について、民主党が大きく躍進する「ブルーウェーブ」が起きたと述べた。
方氏は、民主党の躍進はトランプ政権に対する有権者の不満を反映していると分析する。ただし、不満の原因は減税や規制緩和、投資誘致、エネルギー政策ではなく、イラン戦争による原油価格の高騰にあるという。
方氏によると、トランプ氏は4年間で米国の進路を60~70年前の方向へ戻し、社会主義へ向かう流れを完全に逆転させようとしている。
「トランプ氏は一度にすべてを成し遂げようとしている。そのため、政策の進め方が非常に急激だ。大きく方向転換する過程で、あまりにも強引に進めれば反発を招き、国民の支持を失うことになる」
方氏は、2024年の大統領選でトランプ氏をホワイトハウスに送り込んだ有権者を、大きく2つのグループに分けて分析した。
1つは、MAGA(米国を再び偉大に)を支持する共和党保守派の岩盤支持層だ。もう1つは、トランプ氏の公約に期待して投票したブルーカラー労働者や多くの中間層である。後者は、政策による恩恵を実感できなければ、トランプ氏を支持し続けるとは限らない。イラン戦争によってガソリン価格が高騰したことで、こうした有権者がトランプ氏から離れたと方氏はみている。
方氏は、米国の有権者にとって生活に直結する問題が極めて重要だと強調する。
トランプ氏が社会主義の拡大を阻止し、米国に保守的な価値観を取り戻そうとしていることを理解する国民は一部に限られる。多くの有権者は、政治理念よりも目の前の暮らしや経済的利益を重視している。
政権がこうした人々の生活を改善できなければ、民主党を支持する「ブルーウェーブ」が生まれると説明した。
トランプ氏の敗因はイラン戦争か 専門家が外交上の誤算を指摘
オーストラリア在住の法学者、袁紅冰氏は大紀元に対し、トランプ氏の国内政策は基本的に正しく、「米国を再び偉大にする」という目標に役立つだけでなく、中国共産党(中共)による米国社会への全面的な浸透を阻止するうえでも有効だと評価した。
「トランプ氏が進める、共産主義や左派思想への対抗を柱とした国内政策は、人類の自由と民主主義の発展に役立つものだ」と強調した。
袁氏は、今回の中間選挙で共和党が大敗した最大の原因は、イラン戦争が引き起こした米国内の経済危機にあると指摘している。
米国は現在もイラン戦争を完全には終結できていない。イラン軍は依然としてホルムズ海峡の安全を脅かしており、国際原油価格の上昇を通じて米国経済にも影響を及ぼしている。さらに、イランは今も中東にある米国の同盟国や米軍基地を攻撃する能力を維持している。
袁氏は、トランプ氏が重大な判断ミスを犯したと指摘した。
トランプ氏はイランへの攻撃を開始した際、この戦争が米国・イスラエルとイランの対立にとどまらず、国際的な対立構造の一部であることを認識していなかったという。
「イランの背後には、中共の独裁体制を中心に、ロシア、北朝鮮、パキスタン、イランを含む現代の『悪の枢軸』が存在する。米国の対イラン戦争は、実際にはこの『悪の枢軸』全体との戦いなのだ」
袁氏は、中共がイランに対し、外交、経済、軍事の各方面で全面的な支援を提供していると指摘した。
さらに袁氏は、米国の対中政策の変遷を振り返った。
トランプ政権1期目が発足するまでの20年以上、民主党政権は中共の独裁体制に対して容認と譲歩を重ねる宥和政策を取り、中国共産党(中共)に20年以上にわたる経済急成長の機会を与えた。
袁氏は、トランプ政権1期目の大きな功績は、西側諸国の対中共宥和路線を転換させたことにあると評価した。
トランプ政権2期目も当初、関税戦争や貿易戦争、技術分野での対立を通じて中共に圧力をかけようとした。しかし、行き詰まった末に、中共との貿易上の休戦に踏み切らざるを得なかったという。
イラン戦争の勃発後、トランプ氏はさらに、米国の望む形で戦争を終わらせるよう、習近平がイランを説得することを期待した。
袁氏は「これはトランプ氏の重大な外交上の失敗だ」と批判した。中共はむしろ、イランへの支援を通じて米国の関心と国力を中東に向けさせようとしているという。
袁氏によると、こうした状況の中、トランプ氏は習近平とすでに2回会談し、「米中の戦略的安定関係」を築いた。しかし、これは明らかに中共への譲歩だと指摘した。
民主党の議会掌握 対中共政策は強硬化するのか
今回の選挙を受け、民主党は今後2年間、議会の上下両院を掌握することになり、トランプ政権の政策遂行は大きく制約される見通しだ。特に、米国の対中政策や台湾海峡をめぐる問題への影響が注目されている。
袁氏は、民主党が上下両院の主導権を握ったとしても、対中共政策については、かつてのように中共を容認し、その勢力拡大を許す宥和路線には戻らないと分析した。
むしろ民主党は、トランプ政権に対し、台湾への武器売却などを確実に進めるよう圧力をかけるとの見方を示した。
一方、民主党による議会掌握によって、トランプ氏の残りの任期中、政権運営は大きな制約を受けるという。国内政策だけでなく、外交面にも影響が及ぶ。例えば、トランプ氏がプーチン氏と合意し、ウクライナ戦争を終結させる可能性は急激に低下すると予測した。
また、トランプ氏が習近平との首脳外交を通じて進めようとするあらゆる取引も、議会による厳しいチェックを受けることになるという。
袁氏は「こうした制約も、米国の民主主義制度が持つ政治的な力の強さを示している」と述べた。
民主党が上下両院を掌握したことで、米国の対中共政策が現在より強硬になるかについて、方氏もその可能性は十分にあると分析した。
方氏によると、中共への対抗をめぐり、民主・共和両党の立場に大きな違いはない。むしろ両党とも、トランプ氏にさらに強硬な対応を求めるとみている。仮にトランプ氏が中共に軟化する姿勢を示せば、議会が圧力をかけるため、米国の対中共政策は今後さらに強硬になるという。
米国はすでに中共をけん制するため、技術や貿易など幅広い分野で対中規制を実施している。
一方、米中貿易交渉について、方氏は議会の勢力図が変わっても、トランプ氏の交渉権限が大きく制限されることはないとみている。米国では長年にわたり、議会が大統領にさまざまな政策手段を認めてきた。そのため、トランプ氏は貿易交渉を進めるうえで必要な権限をすでに持っており、議会の新たな協力や承認を必要としない。
方氏は、今回の議会の勢力変化が米中貿易交渉にさらなる制約をもたらすことはないと分析した。
中共は漁夫の利を得るのか
今年に入り、トランプ氏と習近平はすでに2回会談している。両者は11月に深圳で開かれるAPEC首脳会議と、12月にフロリダ州で開かれるG20首脳会議でも再び会談する見通しだ。
では、共和党の敗北は中共にとって有利に働くのだろうか。
袁氏は、中共が国内で弱体化したトランプ氏の立場につけ込み、国際舞台で米国への対抗を全面的に強めることは間違いないとみている。
具体的には、中東でのイラン支援を強化するとともに、アラブ諸国との関係を深め、イラン戦争を米国の思惑どおりに終結させないようにするという。
袁氏は、中共が「米国内の対立や、国際問題で米国の方針が一貫しない状況を利用し、共産主義による全体主義支配を世界に広げようとしている」と指摘した。
また、トランプ氏が今後、中共に対して自ら強硬姿勢に転じることは難しいと予測した。欧州の同盟国との間に一連の対立が生じているうえ、イラン戦争による悪影響も重なり、トランプ政権は守りの姿勢を取らざるを得なくなるという。
一方、方氏は、米議会の勢力図が変わったことが中共にとって必ずしも有利とも不利とも言えないと分析した。
「中共の脅威に対抗することは、米国の民主・共和両党に共通する認識だ。両党はむしろ、どちらがより強硬な姿勢を取るかを競っている。今後、対中共政策はさらに強硬になる方向にしか進まない。中共が両党の対立を利用して漁夫の利を得る余地は非常に小さい」
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