中国政府、半導体企業買収を加速化 民間投資会社を隠れ蓑に=仏メディア

2021/11/22
更新: 2021/11/22

半導体分野での遅れを取り戻すため、中国政府は民間投資会社を使って、水面下でフランスをはじめとする外国の半導体メーカーの買収を着々と進めている。仏国営放送RFIがこのほど、報じた。

5月中旬、中国の民間投資ファンドである智路資本(Wise Road Capital)は、仏半導体ウエハー測定・検査装置メーカーのユニティSCに買収意向表明書を提出した。

2017年に設立され、半導体を中心としたテクノロジー企業への投資を目的としている智路資本は自社ホームページで「民間企業」「独立経営」と記載しているが、オランダの経済情報会社ダテンナ(Datenna)によると、同投資ファンドの主要株主らは中国政府と密接な関係を保ち、実質上、中国政府の管制下に置かれている。

ユニティSCは、前年度の売上高は2500万ユーロ(約32億円)だったが、集積回路のエッチングに使われる重要な技術の開発に成功したため、将来性が見込まれている。

今回の買収は、智路資本にとって初めての海外買収ではない。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、同社が買収した海外の半導体メーカーのうち、数社は研究や生産の拠点を中国に移した。

シンガポールのUTAC社(United Test and Assembly Centre)は買収の1カ月後、中国山東省に工場を設立すると発表した。

1カ月前にシーメンス社から買収したドイツのフーバコントロール(Huba Control)社はすでに一部の生産を中国四川省に移した。

2020年7月に設立され、半導体センサー製造に特化するオーストリアのAMS社との合弁会社は、安徽省に工場を設けた。

仏シンクタンク、モンテーニュ研究所のアジア部門の責任者マオジ・ドゥ氏は、「中国政府が世界でリーダーシップを築くには、技術の発展が不可欠」と指摘した。

中国の自国製は現在、年間半導体消費量の15%程度しか賄っていない。残りは日本や台湾の大手メーカーに頼っている。2020年、中国の半導体輸入額は3500億米ドル(約40兆円)に達し、石油の購入総額を上回った。

習近平指導部が2015年に打ち出した「中国製造2025」という国家長期戦略は、2025年までに「次世代情報技術(半導体、5G)」を含む10の重点分野で「世界製造強国」を目指している。

元オランダ外交官で、前述のダテンナ社のヤープ・ファン・エッテン最高経営責任者(CEO)は、「半導体買収の分野では、中国政府は民間投資ファンドの陰に隠れて積極的に関わっている」と述べた。

フランスでは、外国資本による半導体部門の買収は、仏経済省の認可を受けなければならない。智路資本の買収計画について、仏経済省もユニティSC 社も現時点ではコメントしていない。

欧州連合(EU)は2019年春、加盟国にセンシティブな技術への外国投資を報告する義務を定め、審査体制を強化すると宣言した。

(翻訳編集・叶子静)