【独占インタビュー(1/2)】高市早苗氏 国民の生命と財産を守り抜く

2021/09/03
更新: 2021/09/03

拡張主義を固守する中国共産党とそれに対抗する西側諸国の関係は日増しに悪化し、日本を取り巻く安全保障環境はかつてないほど緊張したものになっている。いっぽう国内では、新型コロナウイルス感染症の影響がいまだ続いており、中国共産党の多種多様な浸透工作は社会に影響を及ぼしている。

このような状況下で、自民党総裁選が間近に控えている。菅義偉首相は3日、出馬しないことを明らかにした。日本の舵取りを決める今回の選挙にさらなる注目が集まる。

迫りくる脅威にどのように対処し、日本の伝統をどのように次の世代へと伝えていくのか。大紀元は総裁選に名乗りを上げる高市早苗前総務相にその考えを伺った。


湧き上がるような想い

ーー総裁選に出馬しようと考えたきっかけは。

7月末に決断をした。今年の夏も災害が相次ぎ、多くの方が亡くなった。そして新型コロナウイルス感染症でも多くの方が亡くなり、家族の無念さがしのばれる。命を守ることは国家の究極の使命である。新型コロナウイルス感染症の蔓延により傷んでしまった日本の経済を建て直さなければならないという大きな仕事がある。そして、これから日本が確実に直面する数々のリスクは、今のうちに着手しなければ間に合わないと考えている。湧き上がるような、燃えるような思いがあった。

総裁選への意気込みについて語る高市早苗前総務相(清雲/大紀元)

ーー「大切なものを守り抜く」ことを政策の一番目に掲げているが、米国はバイデン政権になってから海外への介入を減らしている一方、中国共産党政権は拡張を続けている。日本の安全保障を取り巻く環境が日増しに悪化するなか、今後の日本の防衛についてどのようにお考えか。

アフガニスタンで日本人とともに働いた方や日本大使館に勤務していた方を退避させられなかったことは本当に悔しいことだ。しかし自衛隊は自衛隊法によって行動を厳しく制限されており、アフガン政権が崩壊した現状では、効果的な救出活動ができなかった。

他国の政府が内紛やクーデター等により機能を停止した場合、邦人の旅行客や留学生、ビジネスマンを守ることができないことが、今回のアフガンの事例で明らかになった。世界中のどこにいても日本国政府が助けに来てくれるという安心感を国民に与えることができるよう、更なる法整備が必要だ。

衛星や電磁波、戦争の形は変化する

防衛を考える際、戦争の形が従来のものと大きく変化していることに気づかなければならない。今後の戦争のなかで、ゲームチェンジャーとなりえるのは衛星や電磁波、サイバーそして無人機であろう。

中国はサイバー攻撃の能力が非常に高く、衛星を破壊する技術を確立したとの情報もある。中国軍によって日本や米国の衛星が破壊され、海底ケーブルを切断されると通信と情報収集ができなくなる。さらに変電所等にサイバー攻撃を受け、大停電が発生すると、基地機能が停止した自衛隊は全く防衛をすることができなくなる。そのため、今後の戦争は先に相手の基地を無力化することが重要となってくる。この「敵基地先制攻撃」は、安倍内閣の積み残した懸案である。必ずしも直接ミサイルを撃ち込む必要はなく、強力な電磁波で装備を無力化することもできる。

さらに衛星破壊は、大量の宇宙ゴミを発生するため禁じ手とされているが、衛星を捕獲したり向きを変えたりすることはできるかもしれない。しかしサイバー攻撃で敵基地を無力化することは、法律がないため現時点ではできない。サイバー防御を行うためには、やはり「アクティブディフェンス」、いわゆるサイバー空間での反撃ができるようにしなければならない。一番恐ろしいのは、民間の電力会社や水道、ガス、鉄道、航空、自動車などがサイバー攻撃を受けた場合、日本政府のどの部門が防御を担うのか、その主体すら明らかではないことだ。

高市早苗前総務相は、多様化する戦争の形態に対処するため、先手を打つ必要があると強調した(清雲/大紀元)

実際、医療機関へのサイバー攻撃は発生している。ロシアの病院で、脳の手術中に機器がすべて無効化される事件が起きた。このような事態を防ぐためにも、情報通信を振興させ、産業としての競争力をつけるための情報通信省を設けたいと考えている。そして、外局としてサイバーセキュリティ庁を設置したい。現状として、サイバーセキュリティは総務省や経済産業省、内閣府などで各々行っている。情報通信省を設置し、担当大臣と局長で現場の実情に合う法律を作成できるようにしなければならない。

ーー高市議員は南モンゴルを支援する議員連盟の会長を務めている。中国では他にも、ウイグル人やチベット人、そして法輪功学習者が弾圧を受けている。このことに今後どのように対処するか。

今年の通常国会で非難決議ができなかったことが一番悔しかった。ウイグル、チベット、モンゴルそして香港の現地で苦しんでいる方がいる。そのことについて日本政府が発言すると、内政干渉だと言われる。しかし、来日した留学生や、日本国内で仕事をしている方にまで脅迫のような行為が行われており、彼らの家族はまだ中国国内にいる。少なくとも日本国内に在住する方を日本の国内法で守ることが、私たちの役目である。彼らが安心して日本で勉強し、母国にいる家族のことを心配せずに済むような環境を作るにも、しっかりと国会が意志を示すことが大事だと思う。

先祖に感謝 伝統を受け継ぎたい

ーー会議室に仏像の写真を飾る議員は少ない。思い入れのあるものなのか。

地元が奈良県であり、寺院がたくさんある。ふるさとなので、思い入れは当然持っている。東大寺の方が描いた絵もある。

ーー高市議員は郷土愛や国に対する愛を強調しているが、今後も伝統的な美徳を広めていくか。

先人から学ぶことは非常に多い。江戸時代末期以降に日本を訪れた外国人が書いた本を見ると、当時の日本人の礼儀正しさと清潔さに感銘を受ける。そして男女を問わず、財産の多寡にかかわらず、しっかりと教育を受けていたことが分かる。そして、石ころひとつもない見事な農地の姿も記されている。このような素晴らしい日本の姿を書き残している。先祖は勤勉に働き、産業を起こし、田畑を耕し、地域社会を豊かに作り、伝統文化を守り、子供をしつけ、時には国と家族を守るために命を捧げた。そのような姿には感動せずにはいられない。そのような想いを大切にし、感謝をしながら、次の世代にもっとよい日本を残していきたいと思う。

(つづく)

(聞き手・王文亮)