米国で物議 「TikTokを介して個人情報が中国に筒抜け」説を親会社から検証する

2024/03/20
更新: 2024/03/21

バイトダンス(字節跳動科技)がTikTokの所有者である以上、「同社はTikTokを介して中国共産党(中共)を支持し続けるであろう。これは、単に企業の存続を目的とした行動に留まらない」

ある学者はTikTokが米国ユーザーの個人データの安全性を保障しているとは考えにくいと述べている。

米国議会では、TikTokをバイトダンスから切り離し、中国共産党(中共)の支配から自由にするための法案が審議されている。

現在、約1億7千万人の米国人がTikTokを使用しており、同社は米国のユーザーデータを中共政府と共有したことがないと繰り返し強調し、そうした要求を受けたこともないと述べている。

では、TikTokは本当に安全なのであろうか?バイトダンスと中共との間にどのような関係が存在するのであろうか?そして、中共の指令に従わないことは可能であろうか?

 バイトダンスの全貌

中国を拠点とするバイトダンスは、2012年に北京にてソフトウェアエンジニアの張一鳴氏により設立された。福建省出身の張氏は、2005年に南開大学でソフトウェアエンジニアリングを専攻し、卒業後マイクロソフトをはじめとする複数のテクノロジー企業で豊富な経験を積んだ。 

創立以来、バイトダンスは驚異的な速さで成長を遂げ、先進的なアルゴリズムを駆使したアプリ開発において世界をリードする企業へと進化した。そのため、「アプリ工場」という異名を持つほどに、次々とスマートフォンアプリを市場に送り出している。

同社の初期の成功例は、創業年にリリースされた、ユーザー個々の関心に応じたニュースを機械学習アルゴリズムを用いて提供するニュース集約アプリ「今日頭條(今日のトップニュース)」だ。

2016年末には、短編動画アプリ「Douyin(抖音)」を発表。このアプリは中国国内でたちまち大人気となり、発表からわずか1年以内に1億ユーザーを超えるセカンドアプリとなった。

続いて2017年、Douyinの国際版であるTikTokが登場。バイトダンスはDouyinとTikTokを最初から異なる製品として位置付けていたと説明しているが、両者は同じロゴと似たユーザーインターフェースを共有している。

TikTokとDouyin、そして「今日頭條」は、バイトダンスの代表的なアプリであり、強力なレコメンデーションエンジンによるサポートを受け、ユーザーに高い魅力を提供している。

最近では、TikTokの企業価値が2680億ドル(約40兆5237億円)と評価されている。

 バイトダンスと中共との繋がり

中共の公式メディアの情報によれば、中国の他の多くの大手企業と同様に、バイトダンスにおいても2014年に共産党支部が設立されたことが明らかにされている。

さらに2017年には中共政府がバイトダンスが保有する中国国内の企業への出資を行ったとされている。

この出資により、中共が国家として機能する中核機関の一つである、北京を拠点とする「網投中文」が、バイトダンスの子会社である「北京字節跳動科技」の1%の株式を取得した。

これにより、中共政府は当該子会社の取締役会に席を確保し、同社が保有するDouyinや「今日頭條」(ニュースアプリ)を含む一部の事業ライセンスに関して発言権を持つこととなった。これは、中共によるバイトダンスの監視の強化へと繋がっている。

「網投中文」についてさらに詳しく見ると、この企業は中国インターネット投資基金(中網投)、中央人民放送ラジオの子会社、そして北京市文化投資発展集団によって共同で所有されている。

そして、「中網投」は中共の国家インターネット情報弁公室および財政部によって設立されたことが知られている。また北京字節跳動科技における株式の移転は2021年4月30日に公式に記録されている。

一部の情報源では、中共政府がTikTokの株式を保有していないと指摘されているが、これはTikTokが中国国内にはサービスを提供していないためだ。

昨年5月にTikTokが公開したプレスリリースによれば、その親会社であるバイトダンスの約60%の株式は、カーライル・グループやジェネラル・アトランティック、サスケハナ・インターナショナル・グループなど、世界中の有名な機関投資家が実質的に保有している。また、従業員が20%、創業者である張一鳴氏が残りを所有している。

2021年には、張一鳴氏はバイトダンスのCEO職を退き、その役割を共同創業者であり、大学時代のルームメイトである梁汝波氏へと委ねた。この移行は、張氏がメディアの注目から一歩退き、企業の長期戦略についてじっくり考える時間を確保する意向を示したものである。

情報源によると、張一鳴氏は依然としてバイトダンスの50%以上の投票権を持っていると言われている。

TikTokをバイトダンスから分離

トランプ政権下で、バイトダンスは米国政府の厳しい視線を浴びた。2020年には、トランプ政権が行政命令を発令し、バイトダンスに対し米国内でのTikTok資産の売却を求めた。

この命令に従わなければ、TikTokは米国での使用が禁止される可能性があったが、民主党の裁判官が多数を占める連邦法院によってこの命令は一時停止された。

一方、中共は中共政府の承認が必要な技術リストを見直した。専門家たちは、このリストにTikTokの推薦アルゴリズムのような中共にとって重要な技術が含まれていたと考えている。

米国政府関係者は、TikTokに関してセキュリティとプライバシーの問題を指摘し、米国国内のユーザーデータが中共に共有される可能性があると批判している。TikTokを利用する米国国内のユーザーは現在、約1億7千万人にのぼる。

しかしTikTok側は、米国国内のユーザーデータを中共と共有した事実は一切なく、そのような要請を受けたこともないと断言している。

米国での懸念を和らげるため、TikTokは米国の大手テクノロジー企業、オラクルと手を組み、2020年からテキサス州にあるオラクルのクラウド基盤を利用して、米国国内ユーザーのデータを管理している。

2024年、米国議会はTikTokに対する新たな動きを見せた。3月13日には下院で352対65という圧倒的な票差で、TikTokの親会社であるバイトダンスに対し、165日以内にTikTokを売却するか、そうでなければ米国内での運用を禁止する可能性がある法案が可決された。

この法案は既に上院に提出され、ジョー・バイデン大統領からも支持を受けている。

この事態は、トランプ政権時代以降、TikTokが直面した中で最も大きな挑戦と言えよう。

現在、人々は中共がTikTokに及ぼす影響に対してさらに強い懸念を抱いている。新しい法案の支持者たちは、この法案の目的はバイトダンスが米国の国家安全保障にとっての脅威を減少させることにあると説明している。

具体的には、バイトダンスが米国ユーザーの機密情報を中共と共有するリスクや、TikTokを通じて米国人の政治的意見に影響を与える可能性、例えば選挙介入などが懸念されている。

米国の懸念が増す中、バイトダンスが中共との関係を強化

こうした中、バイトダンスは密かに「創星半導体(InnoStar Semiconductor)」の株式を取得した。この企業は上海を拠点とし、中共からの支援を受けているメモリチップメーカーである。該当の取引は、中国とシンガポールの企業記録によって確認されている。

最初にこの投資が実施されたのは、バイトダンスがVR(バーチャルリアリティ)ヘッドセットの開発とVR市場への進出を促進するためであったが、それは中共が先端コンピュータチップ技術分野での影響力を強化しようとする国家戦略とも一致している。

この動きによりバイトダンスは、TikTokの米国市場での立場にさらに否定的な影響を及ぼす可能性がある。

クリエイティブな半導体技術とリソースを活用し、VRおよび先端コンピュータチップ技術分野での事業拡大を図ることによって、バイトダンスは技術製品の質を向上させ、事業の多角化を推進し、TikTokのグローバルマーケットでの位置づけを強化することが可能となる。

バイトダンスは、自社のVR事業を支えるためと主張して創星半導体への投資を行っているが、この行動は中共の国家戦略に沿っており、その影響が単にVR事業に留まらない。

この動きは、中共が重要な技術分野での能力強化に力を入れていることを示唆しており、TikTokと中共政府との関係に対する疑念を一層深めている。また、TikTokが米国において中共との関係を否定しようとする努力を弱めることにも繋がっている。

この投資がTikTokの米国における将来へどのような影響を与えるかについては、引き続き注視する必要がある。

バイトダンスは中共を支援する

米国のオールドドミニオン大学で国際ビジネスを専門とする著名な中国系学者、李少民教授は最近、「ザ・カンバセーション」ウェブサイト上で公開された3月15日付けの記事で、TikTokに関する最近の議論について言及した。

「ザ・カンバセーション」は、専門家による見解や分析を含む、ニュースレポートや研究報告をインターネット上で公開する非営利のメディアネットワークである。

同教授は、TikTokが米国のユーザーデータが安全であると主張していることに対し、そのデータが米国国内に保存されている場合であっても、その主張を信じていないと述べた。

李少民教授は中共について、通常の政党とは異なり、極めて強大な権力を持つ組織であり、自由に加入や離脱が許されず、協力を拒む者たちは重大な結果に直面する可能性があることを指摘している。

また李教授は「生存し、成功を収めている民間企業は、すべてが中共の支持者である。それが自発的であるか否かにかかわらずだ」と述べ、中共と民間企業との関係の深さを強調している。

加えて、中共の国家情報法が中国の情報機関に広範囲にわたる権限を与え、企業に対して情報収集の支援を義務付けている点にも言及している。これは、国家の安全保障と個々の企業とが緊密に関係していることを示唆している。

米国の議員たちの間では、中共政府によってバイトダンス社が米国人の個人データを中共政府に提供することを強いられる可能性に対する懸念が高まっている。

TikTokはこの指摘を否定しているが、最近になって漏洩した中共関連のハッカーグループ、I-Soonの文書は、中国における官民の協力によるデータ共有の実態を示している。

李少民教授はTikTokが米国のユーザーデータを安全に保持しているとの主張に疑問を呈している。データが中国国外、例えば米国国内に保存されている場合であっても、その信頼性には懐疑的である。

李教授によれば、バイトダンスの取締役会に共産党員がいるかどうかはそれほど重要ではない。より大きな問題は、企業の利益が中共の利益と対立した際に、企業が共産党の方針に従うことを余儀なくされる点にある。

「バイトダンスがTikTokの所有者である限り、企業の存続はもちろん、従業員やその家族の安全を守るためにも、バイトダンスは中共を支持する方向でTikTokを利用することになるだろう」と李少民氏は強調している。

これらの発言は、米国と中国の間のデータ保護およびプライバシーに関する複雑な課題を浮き彫りにしている。

程雯