米中貿易関係の緊張が一段と高まる中、トランプ政権が推進する製造業の国内回帰政策を背景に、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は1月22日、ビュイックの主力SUVを中国で生産する体制を終了し、生産ラインをアメリカ本土へ移管する方針を正式に明らかにした。
GMは、中国で生産してきた中型SUVビュイック・エンビジョンについて、次世代モデルから米カンザス州のフェアファクス組立工場で生産する計画で、2028年の生産開始を見込んでいる。
ロイター通信によると、エンビジョンは2017年以降、中国山東省煙台市にあるGMと上海汽車の合弁会社上汽通用の東岳工場で生産され、アメリカに輸出されてきた。これは、過去10年近くにわたりGMが中国からアメリカに輸入してきた唯一の車種だった。直近3年間のアメリカでの年間販売台数は4万台を超え、ビュイックブランド全体の米販売台数の約25%を占めている。
CNBCは、今回の生産移管の主な背景として、次の要因を挙げている。
第一に、関税負担の重さである。2018年に米中貿易摩擦が始まって以降、中国製の同SUVには25%の制裁関税が課されてきた。昨年以降、対立がさらに激化する中で、関税コストはアメリカ市場での収益性を大きく圧迫していた。
第二に、ホワイトハウスからの政策的圧力がある。トランプ氏は、製造業の雇用をアメリカに取り戻すよう多国籍企業に繰り返し求めてきた。GMは声明で、今回の決定について「国内の製造体制を一段と強化し、アメリカの雇用を支援するため」と説明しており、昨年発表した米国内への総額55億ドル規模の新規投資計画の一環だとしている。
第三に、政治的な配慮もある。エンビジョンが中国製であることは、全米自動車労組(UAW)や、ミシガン州、オハイオ州など主要な激戦州から、長年にわたり批判の対象となってきた。
生産移管の背景には、GMの中国合弁事業である上汽通用の経営悪化もある。
中国乗用車市場情報連席会や業界データによると、ビュイック、シボレー、キャデラックを傘下に持つ上汽通用の年間販売台数は、最盛期の約200万台から、2025年には80万台を下回る水準まで急減した。中国の国産EVメーカーによる価格競争の激化により、ビュイックなど外資系ブランドの価格優位性は失われ、市場シェアを奪われている。
販売不振に伴い、上汽通用の中国国内工場の稼働率は50%を下回る水準に低下している。GMがエンビジョンのような高収益の輸出向け車種をアメリカへ移すことは、合弁事業に残された数少ない収益性の高い資産を切り離す動きともいえる。
中国市場がかつての「成長エンジン」から「経営上の重荷」へと変化する中で、外資系大手が中国事業の整理や縮小を進めている。
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