NASA 月への競争に火を灯す

2026/04/05
更新: 2026/04/05

評論

「アメリカは二度と月を諦めることはない」

この大胆な宣言は、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジャレッド・アイザックマン局長によってなされた。3月24日、NASAは「イグニッション(点火)」と題した一連のブリーフィングを行い、驚異的な内容の詳細を明かした。そこでは月面基地の建設や原子力推進宇宙船の開発、民間宇宙ステーションへの移行、さらには多岐にわたる科学プログラムの計画が語られた。

アメリカがかつて月を諦めていたというアイザックマン氏の指摘は正しい。

もちろん、NASAのアポロ計画は1969年に月を「勝ち取り」、1972年までに12人の宇宙飛行士を送り込んだ。しかし、アポロ計画が時期尚早に打ち切られると、ワシントンはこの勝利を無駄にし、混迷を極めることとなった。

2010年4月、当時のバラク・オバマ大統領が、前任のジョージ・W・ブッシュ大統領による有人月探査再興計画「コンステレーション」を中止したのは有名な話だ。彼はそれを火星への空虚な転換へと置き換え、アメリカが宇宙において地政学的な競争に直面しているという現実を、傲慢にも否定した。

オバマ氏による中止からバイデン政権の停滞までの間に、合衆国は中国に対して10年近い先行期間を失った。中国は現在、2030年までに中国人を月へ送り込むという目標に向けて急速な進歩を遂げている。これは、地球・月・火星系、ひいては太陽系を支配しようとする中国共産党(CCP)の大きな目的の一環である。

NASAによる月探査の「再始動」が現在実現しているのは、紛れもなくトランプ大統領の洞察力と指導力の賜物である。彼は2017年12月に米国の月探査プログラムを復活させ(宇宙政策指令1)、2020年には月での平和的行為のための画期的な「アルテミス合意」を確立。そして今年初め、NASAに対し2029年より前にアメリカ人を月へ帰還させるよう命じた。

その後のブリーフィングでは、NASAが2029年以前の月帰還というトランプ氏の目標達成に向けてすでに動いていることが明確にされた。同時に、戦略的に極めて重要な月への競争に勝つために不可欠なスピードと広がりを持って、月面基地計画を推進している。これは、中国による軍事的な拡張を抑止するとともに、アルテミス合意に加わる現在のパートナー61カ国に対し、月への自由なアクセスを保証する体制を築くためのものである。

NASAのロリ・グレイズ(探索システム開発担当)とカルロス・ガルシア=ガラン(月面基地担当)の両氏は、今後の月面基地計画について具体的な詳細を説明した。

進行中の3つのミッションについて、グレイズ局長代行は現状を説明した。4月初旬には、米国・カナダの宇宙飛行士計4名を擁する「アルテミスII」が、月周回へ向けてすでに打ち上げを完了している。

現在、イーロン・マスクのSpaceXとジェフ・ベゾスのBlue Originの2社が「有人着陸システム(HLS)」の開発を加速させている。2027年までに実施される「アルテミスIII」では、これらの着陸機の片方、あるいは両方を地球低軌道でテストする計画が浮上している。

2028年に予定されている「アルテミスIV」ミッションに向けては、初期の構成要素の組み立てがすでに始まっている。このミッションでは2名の宇宙飛行士が5日から7日間、月へ帰還する予定だ。

両氏はまた、2028年中に「アルテミスV」を含む計2回の有人月ミッションを行う計画を明らかにした。NASAの最終目標は、年2回以上の頻度で月へ宇宙飛行士を送り込む体制を整えることにあるという。

NASA月面基地計画責任者のカルロス・ガルシア=ガラン氏は、2026年3月24日、アメリカの月面基地建設に向けた10年間で300億ドル規模の計画を発表した(NASA提供)

 

続いてガルシア=ガランが、NASAが月で何を計画しているかについて詳細を説明した。それは2026年から2036年までの10年間で300億ドルを投じるプログラムであり、以下の内容を含んでいる。

79回の月打ち上げ

72回の月着陸(うち24回は有人クルーを含む可能性あり)

11台の小型月面移動車(ローバー)と、1台の大型加圧有人ローバーの輸送

4つの大型月面居住施設

2組の通信・ナビゲーション・観測衛星コンステレーション(各5基の衛星で構成)

アイザックマン氏は、NASAの月プログラムは議会からの追加予算を必要としないことを明言した。アイザックマン氏は、月面基地の建設を加速させるため、小型月軌道ステーション「ゲートウェイ」などの既存計画から、予算や技術を月面開発へと振り向ける方針を示した。

またガルシア=ガラン氏は、月に送られるほとんどの機材(ペイロード)にカメラが搭載されることも明らかにした。これにより、NASAのウェブサイトにアクセスできる人なら誰でも、米国と同盟国の月での活動を詳細に追うことができるようになる。

「イグニッション」ブリーフィングは、月帰還において中国との競争に勝つだけでなく、より重要な「月への定住」という競争においても勝利するというアメリカの計画を露わにした。

たとえ中国が、しばしば言及される「2030年までの初の中国人宇宙飛行士の月送り込み」というスケジュールを守ったとしても、合衆国はその2030年までに、無人・有人合わせて37回の月打ち上げと29回の月着陸を達成していることになる。

したがって、トランプ氏が5月中旬に中国共産党の党首・習近平と会談する際、地球上での軍事的優位性だけでなく、宇宙地政学における現在の戦略的高地である月においても、支配的な勢いを持ったリーダーとして北京に乗り込むことになる。

トランプ氏は、地球上の中国のテロ代理勢力を打ち倒すことができるだけでなく、中国が地球上で戦争を扇動する能力を持ったとしても、アメリカの月への意欲を逸らすことはできないということを証明するだろう。

3月24日の「イグニッション」導入ブリーフィングの冒頭、アイザックマン氏は次のように締めくくった。

「今は、我々全員が再び信じ始めるべき瞬間だ。アイデアがミッションとなり、懸命な努力が世界を変える成果を生むとき、かつてNASAはすべてを変えた。そして我々はそれを再び成し遂げようとしている。科学と発見の最高の時代は、我々の前にあるのだ」

「月をめぐる」競争に勝つことは、今や合衆国およびすべての民主主義国家にとって戦略的急務である。それは一貫したアメリカの資金提供と政治的関与、そして同盟国やアルテミス・パートナーからの支持に値するものである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
米シンクタンク「The International Assessment and Strategy Center(国際評価戦略センター)」の上級研究員。専門分野はアジアの軍事問題。