中国 売れない街と職を失う人々

中国不動産は回復?  官製報道と現場の深刻な落差

2026/04/12
更新: 2026/04/12

中国の不動産市場に「回復の兆し」とする報道が相次いでいる。しかし本紙の取材で見えてきたのは、業界の崩壊と失業の拡大が進む現場の実態だ。

4月上旬、中国の官製メディアが足並みをそろえるように同様の報道を展開した。中央ラジオ系や経済メディアなどが相次いで、不動産市場に持ち直しの兆しがあると伝え、北京や上海、広州、深圳などで「小さな回復局面」が見られると強調した。

だが、その実態は限定的だ。取引の中心は、大幅に値下がりし「かなりお得になった」中古住宅だ。つまり、市場が回復したというより、大幅な値下げによってようやく動いているにすぎない。

実際のデータでも回復は見えない。主要都市の多くで住宅価格は下落が続き、新築住宅の販売面積も前年を大きく下回っている。いわゆる「春の商戦」と呼ばれる時期でさえ、業界関係者の間では期待する声はほとんどない。

本紙が不動産業界の関係者に独自に取材した結果、現場では回復とはほど遠い厳しい実態が明らかになった。

まず、不動産業界は雇用の直撃を受けている。かつて多くの人が生活を支えてきたこの業界は、今では解雇や倒産が相次ぐ状況だ。

地方都市で10年以上働いてきた販売担当者は最近解雇され、収入はゼロになった。周囲の仲介会社も次々と閉鎖され、かつて複数あった店舗は1社だけになった。「買う人がいない。物件だけが余っている」と語る。

仲介業者は成果報酬が中心だが、半年どころか1年以上契約が取れないケースも珍しくない。「お金を払って働いているようなものだ」との声も出ている。

背景には構造的な問題がある。すでに購入できる層は買い終えており、残る人々には購入する余力がない。価格が下がっても需要は増えない状態だ。

一方で、中国当局は経済に対して明るい見方を強調する姿勢を崩していない。しかし今年の政府報告では、不動産対策の優先順位が下がり、表現も弱まった。専門家の間では、これは政策の行き詰まりを示すサインとみられている。

こうした政策の変化について、中国問題の専門家・王赫氏は、「表現の調整は、過去の政策の失敗を事実上認めたものだが、それを正面から認めることはできない」と指摘する。そのうえで、「当局はすでに不動産に期待を持っておらず、事実上は放置に近い状態だ」との見方を示した。

また、米サウスカロライナ大学エイキン校の謝田教授は、「こうした状況下で専門家が住宅購入を呼びかけるのは、本来の役割から逸脱している」と批判する。「政策に沿った発言が優先され、国民に市場への参加を促すことで、財政の穴埋めを図る意図がある」と指摘した。

こうした中、一部の経済学者は若者に住宅購入を呼びかけている。しかしネット上では、「まずは専門家が率先して買うべきだ」といった皮肉まじりの反発が相次いでいる。

不動産は長年、中国経済を支えてきた柱だった。その柱が揺らぐ中、回復をうたう声とは裏腹に、現場では崩壊が静かに進んでいる。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!