中国 声が消されていく社会への静かな抵抗

「抗議も涙も歌にされる」中国の若者が繁華街で「命がけの朗読」

2026/04/18
更新: 2026/04/18

中国のネット上で広まった詩「小鳥を殺す方法」には、次のような一節がある。

「一羽の小鳥を黙らせる最も確実な方法は、その小鳥がどんなに叫んでいても、すべて『歌っている』ことにしてしまうことだ。抗議も、泣き声も、助けを求める声も、すべて『歌声』として塗り替えてしまうことだ」

この詩は、中国の詩人・周長風が詠み、2025年4月ごろから中国の主要なSNSで爆発的に広まり、若者の間で人気を集めた。直接的な批判は避けつつ、現実の苦しみや抗議の声は「なかったこと」にする社会を描いた作品として、広く共感されている。

この詩を、中国・遼寧省瀋陽市の繁華街で、拡声器を使って朗読した若者の行動が注目を集めている。

現場は市内有数のにぎわいを見せる歩行者天国「中街」。夜の広場に立った若者は、悲しみと怒りをにじませた声で、人通りの中で拡声器を手に詩を読み上げた。周囲には多くの若者が集まり、その様子をスマートフォンで撮影していた。

一見すれば、ただの詩の朗読に見える。しかし中国の現実を知る人々にとって、この行動はまったく別の意味を持つ。

中国では、体制に対する批判と受け取れる発言は厳しく制限している。内容によってはその場で連行されることもあり、実際に路上で声を上げた人が拘束された後、そのまま消息を絶つケースも相次いでいる。

つまり「声を上げる」という行為そのものが、自由を失うだけでなく、突然社会から姿を消してしまう危険と隣り合わせなのである。

特に、不特定多数が集まる繁華街で、拡声器を使って訴える行為は、当局の目に触れる可能性が極めて高い。こうした行動が拘束や投獄につながりかねない現実を踏まえ、ネット上では、この若者を「勇者」と呼ぶ声が相次いでいる。

中国のSNSでは、直接的な表現は避けられているものの、「よくやった」「私たちの代わりに声を上げてくれた」といった支持の声が広がった。一方で、「どうか無事でいてほしい」「捕まらないでほしい」と、その身を案じる声も多く見られた。

声を上げること自体が大きな代償を伴う社会の中で、それでもあえて人前に立つという選択。その行動は、現実を歪められることへの静かな抵抗であり、同時に、誰かが声を上げなければならないという切実な思いの表れでもあるのだろう。

語られない現実がある限り、それを語ろうとする人も現れ続ける。その事実そのものが、多くの人の心に残っている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!