日銀による9月の利上げが市場の共通認識となりつつある中、円相場は一時、1ドル=152円付近まで上昇し、10年物国債利回りも一時3%を突破した。4~6月期の国内総生産(GDP)成長率の上方修正や、実質賃金の7か月連続上昇に加え、日銀当局者が2026年を「新たな利上げ局面」と位置付けたことで、市場の関心は、9月に利上げするかどうかから、日本の金利がどこまで上昇するのかへと移りつつある。
翌日物金利スワップ(OIS)市場によると、日銀が9月18日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げ、1.25%とする確率は、9月8日時点で7日の75%から97%へ大幅に上昇し、今回の金融引き締め局面で最高となった。利上げ観測を受け、円の対ドル相場は8日午前、一時1ドル=152円台を付けた。
経済指標が利上げ観測を後押し
日本経済新聞によると、日本の4~6月期の実質GDPは年率換算で1.4%増となり、速報値の1.1%増を上回った。プラス成長は3四半期連続となった。企業の設備投資の減少率も、当初推計の1.2%から0.9%へ縮小し、金融環境の引き締まりによって経済が明らかに失速した兆候は、現時点では見られないことを示した。
これは、日銀の植田和男総裁が以前述べた「実質金利は依然として極めて低い水準にあり、金融環境はなお緩和的である」との見解とも一致する。現在の経済指標は、利上げが経済を明らかに下押しする可能性をまだ示していないことも意味する。
消費に関係する賃金については、日本の7月の実質賃金が前年同月比2.4%増となり、7か月連続で上昇した。伸び率は2021年5月以来、最大となった。実質賃金の持続的な上昇は、賃金が家計の購買力を支える力が強まっていることを示すとともに、物価上昇が持続するかどうかを日銀が判断するための新たな材料となる。
現在、市場が注目しているのは、賃金上昇が消費と物価をさらに支え、より持続的な「賃金と物価の循環」を形成できるかどうかである。
IDNフィナンシャルズによると、JPモルガン証券のチーフ日本エコノミスト、藤田亜矢子氏は、日銀が金利調整を前倒しすることは次第に避けられなくなっていると述べた。野村総合研究所のチーフエコノミスト、木内登英氏も、ダイアモンド・オンラインで9月に1.25%へ利上げする可能性が明らかに高まったとの見方を示した。
経済と賃金の指標が改善する中、市場の関心は、9月に利上げするかどうかから、今後の利上げのペースへと徐々に移っている。
日銀の高田創審議委員は9月2日、札幌市で開かれた金融経済懇談会で、2026年に日本の金融政策は新たな利上げ局面に入ったと述べた。講演では、2026年を金融政策正常化の「第3局面」と位置付け、「政策体制の転換」と表現した。高田氏は具体的な利上げの日程を示さず、日銀は経済、物価、金融環境に応じて柔軟に判断すべきだと強調した。
1.25%が終着点ではない可能性
9月の利上げが市場の共通認識に近づく中、日銀の今回の利上げ局面における終端金利の予測には、ばらつきが見られ始めている。
野村證券のチーフエコノミスト、森田京平氏は、基本シナリオでは終端金利が1.75~2%に達する可能性があると予測している。第一生命経済研究所のチーフエコノミスト、藤代宏一氏はさらに高く、最終的に2.25~2.5%まで上昇する可能性があるとみている。金融市場の速報や分析を配信するinvestingLiveによると、元日銀審議委員の足立英之氏は、日銀が9月に利上げした後、2027年1月にも再び利上げする可能性があると予測した。
これらの予測には開きがあるものの、いずれも現在市場が予想する1.25%を上回っており、1.25%が今回の金融政策正常化の終着点とは限らないことを示している。
ロイター通信が8月に実施した調査によると、回答したエコノミスト35人は、日銀が2027年3月末までに政策金利を少なくとも1.5%へ引き上げると予測した。約60%は、2027年7~9月期までに少なくとも1.75%に達すると予想した。
終端金利に関する質問に回答したエコノミストのうち、1.75%を選んだ割合は7月の19%から50%へ上昇した。2%以上を選んだ割合も23%から36%へ上昇した。
円の急上昇が政策判断の要因に
金融政策の正常化は、日本の金融市場に反映され始めている。
円は9月に入って急速に上昇し、一時1ドル=152円89銭を付け、約7か月ぶりの高値となった。ロイター通信によると、日銀の利上げ観測に加え、円売り持ち高の解消、日本への資金還流、キャリートレードの解消も、円のさらなる上昇を促した。
円高は輸入コストとインフレ圧力の低下につながる。一方、上昇のペースが速すぎれば、輸出企業や経済成長に影響する可能性もあり、日銀が考慮すべき要因となる。
また国境を越えた円建て借り入れの規模は3月、一時約360兆円に達した。円を使った資金調達の規模が大きいため、円高が続けば、キャリートレードの解消が為替相場の変動をさらに増幅させる可能性がある。
片山さつき財務相は9月8日の記者会見で、為替政策を巡る日米の協調姿勢に変わりはなく、両国は今後も緊密な意思疎通を通じて外国為替市場の安定を維持すると述べた。
長期金利を再評価
円高と並行して、日本の長期金利も再評価されている。10年物国債利回りは9月初め、一時3.015%まで上昇し、1996年以来の高水準となった。その後は2.9%付近まで低下しており、債券市場が金利の正常化に適応し直していることを示している。
これは、日銀の利上げによる影響が短期金利だけにとどまらなくなったことを意味する。金利の上昇は政府の債務調達コストを増加させるほか、銀行や保険会社などの金融機関に、長期資産の価格と投資配分の見直しを促すことになる。
政府が拡張的な財政政策を続ければ、財政需要と日銀による金融政策正常化との間の矛盾が、長期国債の利回りに一段と表れる可能性がある。長期金利が上昇する中、日本政府は経済成長と財政資金の調達を両立させる必要があり、日銀はインフレの抑制と金融環境の急速な引き締まりの回避との間で、均衡を図る必要がある。
市場が注視すべき問題も、「9月に利上げするかどうか」から、「日本経済の中立金利はどこにあり、経済はどの程度の政策金利に耐えられるのか」へと移りつつある。
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