Anthropic(アンソロピック)によると、ある運用者は30日間で2475件の諜報成果物を作成し、宗教関係者や在外コミュニティを監視していたという。
中国政府系の関係者が、信仰グループ「法輪功」の学習者や大紀元(エポックタイムズ)の姉妹メディア「新唐人電視台(NTD)」を含む反体制派および宗教コミュニティを監視するためにClaude(クロード)を利用していたと、テック企業Anthropicが報告書で明らかにした。
Anthropicが9月10日に公表した脅威インテリジェンスレポートによると、中国政府と連携した活動主体は、中国当局が歴史的に抑圧してきたグループを標的とし、同社の人工知能(AI)モデルを使って宗教指導者の身元調査調書を作成し、政権が利用可能な弱点を特定していた。
Anthropicは、中国側の関係者が、従来ならアナリストチームを要したであろう作業をAIに行わせていたと述べている。同社はこうした活動を、高度な脅威グループがAIの安全制限の抜け穴を探る試みの一環であると分析し、技術が進歩するにつれてこの種のリスクは増大していくと指摘した。
報告書によると、アカウントの1つは自らを中国政府の情報セキュリティ担当者であると名乗っていた。
Anthropicはこれらのアカウントを中国を拠点とする諜報活動の一部と評価しており、その活動内容は、中国の宗教事務機関、国家安全部(トップの情報機関)、そして在外中国人の取り込みや体制批判者の標的化を担う共産党・国家組織「統一戦線工作部」の重点課題と極めて一致していると言及した。
Anthropicは該当アカウントを停止し、同様の活動を検知するシステムを強化したと発表している。
「情報収集デスク」
ある監視工作において、Anthropicは「宗教関連の情報収集窓口」を担当する人物を特定した。この人物はClaudeを使って4つの収集・分析作業を同時に並行処理させていた。Claudeは多言語の資料を読み込んで翻訳・要約を行い、中国語の身上調書や報告書、日次まとめレポートを作成していた。
対象となったのは、アジア全域のカトリック上級枢機卿、台湾長老教会の指導部、チベット仏教徒および亡命指導者、法輪功、そしてNTDである。
工作員らは、WeChat(微信)、RED(小紅書)、TikTokの中国版である抖音(Douyin)、Weibo(微博)といった中国系プラットフォームに加え、欧米のLinkedIn、Instagram、Threads、X、Facebookからも情報を収集していた。彼らは誕生日や移住日などの機微な情報を収集し、フロアプラン(間取り図)、外観画像、構造図を通じて宗教施設の全容把握を試みた。
この報告サイクルは日次で行われており、国家安全機関の内部向けを意図したものであると報告書は指摘している。Anthropicによると、工作員らは標的の中国関連の活動、「ネガティブな情報」、そして交渉材料となり得る個人や組織の脆弱性を特定するよう指示していた。
また、工作員はClaudeに対し、「中国の立場」を採用し、中国当局が標的に対して用いる「不法分裂分子」などの用語を使用するよう指示していた。
報告書によると、単一の端末から30日間で2475件の完成版身上調書および報告書が生成された。
「法輪大法」としても知られる法輪功は、瞑想法と「真・善・忍」の原則を中心とする精神修練法である。1992年に中国で一般公開されると、口コミで急速に広まり、1990年代末までに学習者数は推定7千万人から1億人に達した。
法輪功の人気の高まりが政権の支配を脅かすと恐れた中国共産党は、1999年7月に全国的な弾圧を開始した。それ以来、多くの人々が恣意的な拘束、強制労働、拷問、さらには強制的な臓器摘出による死に苦しんできた。
監視対象となった人物の一人は、オンタリオ州ノースヨークにある飛天大学ノースキャンパスの指導員である。この教育機関は、法輪功学習者によって2006年に設立されたニューヨーク拠点の中国古典舞踊団「神韻芸術団(Shen Yun Performing Arts)」の関連機関である。
神韻は毎年の世界ツアーで、「共産主義以前の中国」というスローガンのもとで伝統的な中国文化を披露するとともに、法輪功学習者への弾圧をはじめとする現代中国の人権侵害に光を当てている。
Anthropicによると、中国政府系工作員は法輪功の在外教育関係者らのリストを作成していたという。工作員らがNTDをどのように標的としたかについては明らかにされていない。
同社は、本記事の公開までに大紀元からの質問に回答しなかった。
拡大する圧力キャンペーン
法輪大法情報センターによると、米国を拠点とする法輪功学習者や神韻は、2020年以降、米国内で数百件に及ぶ「国境を越えた弾圧」を経験している。
報告された弾圧の手口には、身体的暴行、器物損壊、暴力的な脅迫、中国国内の親族に対する報復措置などが含まれる。標的となったのは、神韻の出演者、スタッフ、公演プロモーションのボランティアなどである。
同センターが大紀元に語ったところによると、そのうち50件に監視が関与していたという。ある男性が友人に台湾渡航の予定を話した直後、中国国内の親族が中国の公安警察から警告を受けた事例を挙げ、これは政権が男性を監視していた証拠であると指摘した。
同センターは、Anthropicの報告書に記載されている内容以外に新たな標的は特定していないとしている。
Anthropicによると、台湾長老教会の指導者らは複数の身上調書や「施設偵察」の対象となっており、アジア全域のカトリック上級枢機卿も個別にプロファイリングされていた。また、アクターらはシンガポール、香港、中国本土に関連するキリスト教宣教師ネットワークに関する国家安全機関仕様の諜報報告書を作成するようClaudeに求めていた。
同社はこれとは別に、海外の反体制派や人権団体を監視するためにClaudeを利用していた中国の地方公安機関および国家安全機関に関連する3つのアカウントを特定した。
ある事例では、地方の国家安全局が、海外での抗議活動や集会が開催される場所に関する事前情報を求めていた。要求された詳細には、バンクーバーでの民主化デモの集合場所、ルート、終点、トルコでのウイグル文化イベントの会場、オスロ自由フォーラムの上映会などが含まれていた。同社はこの活動を「作戦前の施設偵察インテリジェンス」と表現している。
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