分散型情報網 企業 ドローン サイバーに広がるスパイ活動

2026/09/12
更新: 2026/09/12

従来の工作員による直接的なスパイ活動とは異なり、中国共産党(中共)の情報収集は、より分散し、実態を捉えにくい形へと変化している。相次いだ事例からは、中共が商業活動や民生用ハイテク機器を情報収集の手段として利用し、追跡の難しい「分散型」の情報網を広げている実態が浮かび上がる。

ロイター通信は9月1日、トランプ政権の高官2人の話として、中共国有の海運大手、中国遠洋海運集団が傘下の船舶に秘密の情報収集装置を搭載し、アメリカを含む対象国の沿岸で軍事通信などの機密情報を収集する中共の活動を支援していると報じた。

中国遠洋海運の船舶はアメリカの港に頻繁に寄港しているほか、米国内で複数のコンテナターミナル関連の合弁事業にも関与している。米国防総省は2025年、同社を中共軍と関係する企業のリストに加えた。

サイバー空間でも、同様の動きがみられる。

8月26日、米司法省とFBIは、ハッカープラットフォームQScanとQTRouterを押収したと発表した。米側によると、中共政府の支援を受けたハッカーがこれらのプラットフォームを利用し、世界各地で乗っ取ったネットワーク機器や「ボットネット」を経由して攻撃元を隠し、アメリカの重要インフラを狙った攻撃を仕掛けていた。

ドローンも、新たな情報収集の手段となっている。

2025年春、米ニューメキシコ州のホワイトサンズ・ミサイル実験場で、ドローン1機が制限空域に侵入し、軍事情報を収集していた疑いがもたれていた。米軍は電子戦手段を使ってドローンを強制着陸させた。付近では中国籍の人物とレンタルのキャンピングカーも確認され、報道によると中共の情報機関との関係が疑われている。

米防諜当局者によると、現在の中共の情報収集は高度に「分散化」しており、情報機関の工作員を直接送り込むとは限らない。民間の協力者や「情報ブローカー」を通じ、情報収集を分散して行うケースもあるという。

シドニー工科大学の馮崇義准教授は、情報活動の分散化は突然始まったものではなく、専門の工作員から企業、技術者、海外の協力者へと徐々に広がってきたと見ている。

同氏は次のように指摘した。

「このネットワークは非常に広く張り巡らされ、深く潜んでいる。外部の資本主義市場と結びつき、大きな利益を得れば、さらに多くの資源を使ってネットワークを拡大できる。民主主義諸国にとって非常に大きな課題だ。あらゆる隙間に入り込んでくるからだ。アメリカも警戒を強め、ファーウェイやZTEを排除し、現在はほかの組織に対しても厳しい防備を敷いている」

では、なぜ中共はこうした情報収集方式を取るのか。

台湾国防安全研究院の沈明室研究員は、末端の情報網と中枢の情報機関との直接的なつながりを断つことが狙いの一つだと指摘する。末端の協力者が摘発されても、背後の組織までたどられにくくするためだ。また中共は、情報の価値や対象に応じて収集手段を使い分けているという。

「中央につながる情報網であれば、1人を摘発することで、そこから上層部へたどり、誰が指示したのか、ほかにどのような情報網があるのかを突き止められる。そうなれば、そのネットワークを徹底的に破壊したり打撃を与えたりできる。分散型にすれば、それを避けられる。国家安全保障や軍事情報であれば、中核の情報機関が担うだろう。一方、ハイテク関連や一般的な社会情報など、より一般的な情報ほど、こうした分散型の方法で収集する可能性が高い」

つまり、防諜対策は「誰がスパイなのか」だけに目を向けるのでは不十分で、企業や機器、ネットワークそのものが情報収集の入口になることも警戒する必要がある。

沈氏は、アメリカは侵入経路に応じた防護、法的制裁、能動的な防諜活動の3方面から防衛線を構築すべきだと指摘する。

「第一に、どのようなネットワークを通じて浸透してくるのか分かっているなら、その経路に防御策を講じ、機密保護や防諜対策を先に整える。第二に、周辺の協力者や関連企業の関係者を摘発した場合に厳しく処罰できるよう、スパイ行為に関する法制度を整備する。第三に重要なのが能動的な対策だ。こちらから情報要員を派遣し、相手の手法を逆手に取って、中共によるアメリカへの情報収集や浸透を積極的に阻止する」

アメリカはすでに対策を進めている。

ドローンをめぐっては、FBIとサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁が2024年、中国製ドローンの使用によって重要インフラに関する機密情報が中共政府に渡る可能性があると警告した。

さらに2025年12月、米連邦通信委員会(FCC)は外国製ドローンと主要部品を「対象リスト(Covered List)」に追加し、DJIやAutelなど中国メーカーのドローンも規制の対象となった。2026年1月には、一部品目の扱いを見直した。