米のグリーンランド購入案は中ロの抑制力になる=防衛専門家

2019/09/04
更新: 2019/09/04

米トランプ大統領がこのほど、北米への足場となるデンマーク領のグリーンランドについて購入を検討していると発言した。国防専門家によると、鉱物と石油が豊富な同島は、中国とロシアが狙っているという。

大紀元英字版の取材に答えた、ミッチェル航空宇宙学研究所の上級防衛コンサルタント兼戦略的抑止研究代表のピーター・ヒューシー氏は、その戦略的価値の高さから、米国によるグリーンランド購入案は想定外のことではないという。

「北極圏に沿ってグリーンランド北部に攻撃力のある通常兵器・ミサイルを配備でき、ロシアと中国の大部分をカバーできるだろう」とヒューシー氏は述べた。同島に設置するミサイルシステムは、太平洋のグアムのように、米国または欧州同盟国にとって、あらゆる種類の弾道ミサイルへの効果的な抑止力になるという。

また、グリーンランドには経済的な利点が含まれる。中国はグリーンランドで、レアアースや他の鉱物を採掘して、北極圏を経由し米国東部に出荷するという計画を持つ。2018年には、北京は広域経済圏構想「一帯一路」の一環として、鉄道、港、その他のインフラ設備共同計画「北極のシルクロード」を、日本を含む数十カ国に呼び掛けた。

ヒューシー氏によると、中国とロシアはグリーンランドをパナマ運河のような貿易の拠点にして、北極海に関所を設置することを考えているという。「貿易と商業、そして経済問題に大きな意味を持つ。彼らは南シナ海でも同じことをしている」

北米と欧州西部の間に位置するデンマーク領グリーンランドは、世界で11番目の面積を持つ世界最大の島。人口わずか5万6000人。ヒューシー氏は、島の購入の可能性について触れたトランプ大統領の言葉は、北極圏でインフラや影響力の拡大をしようとする中国とロシアをけん制する狙いあると見ている。

米国の軍事戦略的視点から見て、グリーンランドは、北極と北大西洋の間の海軍作戦のための重要な回廊となる。また、北極圏の一部であり、米国に近接しているため、その豊富な天然資源も価値が高い。しかし、その自治はデンマーク政府の支援に依存している。

その潜在的な価値を見越して、1946年、当時のハリー・トルーマン大統領も同島の購入計画を提案したことがある。

ヒューシー氏は、グリーンランドは米国が手にすることで、その資産を有効的に取り扱うことができると述べた。「鉱物と石油は、デンマーク政府および欧州連合(EU)の規則と合意に従って入手することができる。しかし、外国投資と所有権が障壁となる。領土を購入することで、これらの障壁を取り除くことができる」とヒューシ―氏は述べた。

トランプ大統領によると、このグリーンランド購入案について、メッテ・フレデリクセン首相(Mette Frederiksen)と電話会談している。

北極権に手を伸ばす中国とロシア

ロシアは北極圏での影響力を高めている。1990年、冷戦終了後に閉鎖された6つの軍事基地を新たに作り直すなどして、運営を再開している。さらに、21隻の新造船と2隻の原子力潜水艦を含む北部地域艦隊を増強させて、北極で頻繁に海軍演習を実施している。

5月、マイク・ポンペオ米国務長官はホワイトハウスで開いた記者会見で、ロシアは北極圏で積極的に行動しており、中国の行動も注意深く監視する必要があると述べた。

米国は1951年、デンマークとの条約の下、島の北西チューレに空軍基地を建設し、これを維持している。米政府は、グリーンランドでの軍事的な存在感を高めて、基地の防衛を強化し、島とヨーロッパ大陸間の水域の監視を強化する方向で動いている。

グリーンランドは、中国以外では最大の希土類鉱物の鉱床を持っていると考えられている。これはバッテリーや携帯電話の製造に使用される。

2018年ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、ジェームズ・マティス国防長官(当時)は、グリーンランドにある3つの商業空港の所有権が中国に渡らないよう、デンマークと交渉し、中国側の計画を封じることに成功した。

(翻訳編集・佐渡道世)

関連特集: 一帯一路