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中共一帯一路インフラに欠陥 エクアドルで590億円賠償へ

2025/08/27
更新: 2025/08/27

南米のエクアドル政府は、中国企業が建設した大型水力発電所に深刻な欠陥が見つかった問題で、中国共産党(中共)国有企業から4億ドル(約590億円)の賠償を受けることで合意した。専門家は、これをきっかけに他の「一帯一路」参加国も損害賠償を求める動きが広がる可能性があると指摘している。

エクアドル水力発電所の構造欠陥と環境リスク

問題となっているのは、2009年に着工したコカ・コド・シンクレ水力発電所。総工費は約30億ドルで、当時のラファエル・コレア大統領の政権下で推進された。施工は中国電建の子会社である中国水電(Sinohydro)が担当した。発電所は2016年11月18日に完成し、習近平も竣工式に出席した。しかし、2017年5月にコレア大統領が退任すると汚職疑惑が浮上し、ベルギーに亡命。2020年には最高裁が汚職罪で欠席裁判を行い、禁錮8年の判決を下した。この発電所も事件に巻き込まれている。

シンクレ水力発電所は2016年に稼働を開始したが、ひび割れや漏水などの不具合が続発し、発電効率や安全性に深刻な懸念が生じていた。調査により、施工会社が欠陥を認識しながら引き渡していたことが明らかになった。

エクアドル政府は2021年に仲裁を申し立て、中共側も反訴していたが、今回の合意で長年の紛争に一区切りがついた。専門家は「本来50年使用できるはずが、実際には15年程度しか持たない可能性がある」と警告。国家の電力供給だけでなく、アマゾン生態系に長期的かつ不可逆的な被害を与える恐れも指摘されている。

「一帯一路」に逆風

カナダの作家、評論家である盛雪氏は「『一帯一路』の本質は、資金と工事で各国の政治家を取り込む手法だ」と述べた。そのうえで「だが政権交代や政局の混乱が起これば、新政府は前政権と中共との癒着を清算する。中共はもはや工事で支持を買うことはできず、むしろ汚職や粗悪工事の不祥事に対して繰り返し責任を問われる立場に追い込まれている」と分析した。

実際に、中共はエクアドルに対し総額約190億ドルの融資を行っており、その資金はコカ・コド・シンクレ水力発電所だけでなく、橋梁や高速道路、灌漑施設、学校、診療所、さらに他の6基のダム建設にも充てられている。

エクアドルの議員や元閣僚、反汚職活動家らは、中共からの融資に透明性が欠け、契約が公開入札を経ずに特定企業に発注された結果、建設品質が低く、コスト増大や汚職を招いたと批判している。

2018年12月、当時のエネルギー相カルロス・ペレス氏は「中国はエクアドルを食い物にしている。中国共産党の戦略は明らかで、他国経済を支配することが目的だ。我々は支払いを拒否する」と発言した。

盛雪氏は「エクアドルのケースは、一帯一路が危機に瀕している象徴だ。今後、他の国々も中共に対し賠償や債務減免を求める可能性が高い」と指摘した。

ネパール国際空港の欠陥問題

ネパールのポカラ国際空港は、中国輸出入銀行の2億1600万ドルの融資で建設され、中共国有企業のCAMCエンジニアリングが施工を担当した。当初は大きな期待を集めたが、現在は定期国際便がほとんど運航されておらず、事実上閑散としている。

2025年4月にネパール国会公共会計委員会が公表した調査報告は、「国際基準を満たしていない」と結論づけた。劣悪な建材の使用、汚職、監督不足が原因とされ、中共からの融資返済免除を求める声が広がっている。

中共からの融資返済の猶予期限は2026年に切れる予定だ。ネパールの首相は昨年訪中した際、この融資を「贈与」に切り替え、債務を帳消しにするよう求めた。中共側がどのように対応するかは、いまだ不透明なままである。

セルビアでの屋根崩落

昨年、セルビアでは、ノヴィサド駅の改修工事中に屋根が崩落し、16人が死亡する事故が発生。この事故は数十年ぶりの大規模な反政府デモを巻き起こした。2025年8月、前インフラ相を含む複数の関係者が逮捕され、架空請求により国に1億1560万ドルの損害を与えたほか、工事を請け負った中共国有企業に1880万ドルの不正利益をもたらした疑いが持たれている。

「世紀の事業」から「世紀の重荷」へ

盛雪氏は「中国企業による粗悪な工事は経済的リスクに留まらず、政治危機をも引き起こしている。中国国内の経済は悪化しており、かつてのように資金をばらまく余力はもはやない」と指摘する。さらに、「一帯一路は過去の案件への追及に縛られ、かつての『世紀の事業』から『世紀の重荷』へと変貌しつつある。最終的には外交的孤立と債務の泥沼に陥る可能性がある」と警鐘を鳴らした。

 

寧海鐘
中国語大紀元の記者。
駱亜
中国語大紀元の記者、編集者。