大紀元時報

中国ロケットの制御不能 「責任基準」満たさない姿勢が浮き彫り

2021年5月27日 09時17分
ロケット「長征5号B(Long March 5B)」(ロイター)
ロケット「長征5号B(Long March 5B)」(ロイター)

中国が打ち上げた大型ロケットが制御不能状態に陥りその残骸が地上に落下した事態は、中国が国際的な安全基準を無視している証であるとして科学者や宇宙関連諸機関からの批判が高まっている。しかも同国はわずか約1年にもロケットで同様の落下事件を引き起こして世間を騒がせた前科がある。

現在中国が開発中の宇宙ステーションのコアモジュールを搭載した全長約60メートルの無人ロケット「長征5号B(Long March 5B)」は、海南省の発射場から打ち上げられた10日後の2021年5月9日にその残骸がモルディブの北のインド洋に落下した。専門家等の発言によると中国国家航天局(CNSA)は残骸が大気圏に再突入する直前まで落下予測や軌道投影データを発表しなかった。他の宇宙開発国なら通常はこうした発表は数日前までに行うものである。

オーストラリア・シドニーのマッコーリー大学・天体物理学部の教授を務めるリチャード・デ・グリジス(Richard de Grijs)博士はロイター通信に対して、「そのため外国の関連機関は長征5号Bから分離された大重量のコアステージを追跡して、必死に地球上の最終落下地点を予測しなければならなかった」とし、「この事態により、落下被害を受け得る範囲に含まれる多くの諸国で不安が掻き立てられた」と述べている。

NASA(米国航空宇宙局)のビル・ネルソン(Bill Nelson)長官は、中国がスペースデブリ(宇宙ゴミ)に関する「責任基準」を満たしていないことは明らかであると話している。 同長官は、「宇宙開発国は宇宙物体の再突入の際に地球の人々や財産が被るリスクを最小限に抑え、運用に関して最大限透明性を高める必要がある」とし、「宇宙活動の安全、安定、安保、長期的な持続可能性を確保するには、中国を含むすべての宇宙開発国と営利団体が宇宙に関して高い透明性を維持し責任をもって行動することが重要である」と述べている。

中国がこうした事態を引き起こしたのはこれが初めてではない。2020年5月にも中国が打ち上げた別の長征5号Bのコアステージの一部が西アフリカに位置するコートジボワールの村落に落下するという事態が発生している。フォーブス誌が報じたところでは、負傷者は出なかったが家屋や会社建物に被害が発生した。

グリジス博士は、「昨年、中国の長征5Bの部品2個が再突入時に燃え尽きずに地上に到達した。これは明らかに基準から逸脱している」と主張している。

国際連合宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)の決議に則り国際連合宇宙局(UNOOSA)が発行したガイドラインには、「ロケット残骸が大気圏再突入時に燃え尽きなかった場合に発生する地上の損傷リスクの防止」を含め、スペースデブリ緩和策を制定することを各国に求める内容が含まれている。

2010年「国連スペースデブリ低減ガイドライン」には、「将来的な宇宙環境を保護するためには、デブリや残骸に関する適切な緩和策を速やかに制定することが賢明かつ必要と考えられる」と記されている。

専門家等の意見によると、全長33メートルで重量2万1000キロと推定されている単段式の長征5号Bのコアステージは、ロケットのペイロード(積載物)が地球周回軌道上に乗った後に分離された。これは、他の多くのロケットのように二段式以上で設計され、下段ステージが軌道に乗る前に早期に分離されて安全な地点に落下させる制御落下の仕組みを備えているものとは大きく異なる。

同博士は、「中国のロケット設計は他の何よりも打ち上げ能力を優先しているようである。つまり、重いペイロードを軌道に乗せるのに十分な推力のことしか考えていないのである」と説明している。

一方で、他の諸国はスペースデブリ削減対策を推進している。今回の中国ロケットの落下事件が発生する数日前、米国の民間宇宙探査会社「スペースX(SpaceX)」が大型ロケットの最新プロトタイプを打ち上げ、初めて安定した制御着陸に成功するという快挙を成し遂げた。同社の発表によると、この再利用可能な超重量の「スターシップ(Starship)」は上空約10キロまで打ち上げられた後、テキサス州の着陸地点に安全に降下した。

ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところでは、NASAとの提携の下、スペースXは全長120メートルの次世代スターシップにより、月周回軌道に乗って宇宙飛行士を再び月に着陸させる計画を立てている。

ロイター通信は、中国当局が長征5号Bの大気圏再突入の予測について「国際協力機構」を通じて共有したと主張している、と報道している。中国有人宇宙事業弁公室は「大気圏再突入により残骸の大部分が燃え尽きた」とする2文の声明を発表し、残骸の落下地点として東経と北緯を示して「海域」の座標を提示した。 欧州宇宙機関(ESA)によると、ロケットの残骸は大気圏落下中に「完全に燃え尽きる」ように計画し、制御不能の落下により負傷者が発生する確率は1万分の1未満に抑える必要がある。

2021年4月の時点で同機関は、「実際、部品のいくつかが地上に落下する可能性がありその一部は深刻な損傷を与えるほどの大きさである」とし、「スペースデブリに関する現代の規制では、こうした事故が発生しないように配慮することが要求されている」と発表していた。 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のジョナサン・マクダウェル(Jonathan McDowell)博士は、ほとんどの宇宙開発国は制御不能な再突入を防止するように宇宙船を設計していると説明している。

マクダウェル博士はCBSニュースに対して、制御落下を配慮しないという中国の姿勢は同国の知識や技術の欠如によるものではなく、ロケット残骸が未来に及ぼす影響に対する無関心さから来ているという見解を示し、「これは軽薄である」と述べている。 

(Indo-Pacific Defence Forum)

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