日本政府、ポスト5G開発公募でTSMCを採択 つくばに研究拠点

2021/06/01
更新: 2021/06/01

経済産業省は5月31日、先端半導体製造技術の公募事業の採択先を、半導体の受託生産の最大手・台湾積体電路製造股份有限公司(TSMC)に決定したと発表した。TSMCは、日本企業20社以上と共同で半導体後期製造技術を開発する。茨城県つくば市に370億円で専用施設を建設し、日本政府が費用の半分を出資する。

ロボットや人工知能などハイテク技術の生産には、通信規格「5G」よりも機能の優れた、超低遅延や同時通信などを実現する「ポスト5G」に必要な先端半導体製造技術が不可欠だ。経済産業省は、この開発を引き受ける事業先の公募を行なっていた。

31日、TSMCほかソニーセミコンダクタソリューションズ、先端システム技術研究組合などが、5件の開発研究テーマ別の公募事業者として採択された。このほか、電子部品メーカーのイビデンや半導体プロセス材料の富士フィルムなど、多数の日本企業が事業に関わる。

発表によると、TSMCが3月に設立した日本の完全子会社「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」は、経済産業省系の企業、産総研のクリーンルームに試験ラインを構築する。日経新聞などによると、この試験ラインの建設は9月頃に開始する。本格的な研究開発は2022年に始まる予定だという。

経済産業省によると、TSMCジャパン3DIC研究開発センターは、「日本の材料・装置メーカー及び研究機関・大学とのパートナーシップに強力に取り組む。最先端の技術ポジションを獲得すべく、拡張性があり、製造可能で費用効果の高いソリューションの開発を行う」と説明している。

TSMCはロイターの取材に対して、開発研究施設は「材料の分野でより多くの専門知識を活かし、業界に価値をもたらすことを目指す」「パートナーである日本企業とともに、半導体技術の進歩を推進するための日本政府の支援に感謝している」とコメントした。

主要国で先端技術の開発製造が進むなか、世界的な半導体不足が起きており、多くの分野の生産が滞っている。米国の同盟国として中国技術系企業を忌避する日本は、公募を通じて、海外トップ技術企業の国内施設への誘致を奨励していた。日本は将来的に、ポスト5G情報通信システムで用いられる先端半導体を国内で製造できる技術を確保することを目指している。

専門家は、半導体の供給不足は何年も続くと予想している。TSMCは4月、生産能力を増強するため、2021年の設備投資予算を約2倍にすると発表した。

(佐渡道世)

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