6月4日、駐日中国大使館の前に立つ警察官(Photo by PHILIP FONG/AFP via Getty Images)

親中共メディアには「注意書き」を...専門家、巧妙な対日浸透工作を警戒

日本と台湾の専門家はこのほど、日本語メディアが中国官製メディアの報道を引用しプロパガンダを発信している現状について、中国共産党が「目立たないよう静か」に浸透工作を行っていると指摘した。民主主義国にいる読者が無意識に影響されることを防ぐために、中国共産党の政治的な背景を持つ発信者には「注意書き」を明示するよう促した。

民主主義を推進する台湾のNGO「ダブルシンク・ラボ」研究員ティモシー・ニューベン氏と一橋大学大学院法学研究科准教授の市原麻衣子氏は、フランシス・フクヤマ氏が編集長を務める古典リベラル派メディア「アメリカン・パーパス」に文書を寄せた。

2人は「日本に影響を与えるため、巧妙な方法をとる中国」と題した文章のなかで、中国共産党は台湾や日本に対して、ソフトなアプローチを取ることで警戒心を抱かれないようにしていると指摘。具体例として、経済や中国情報を伝える日本語ウェブメディアを通じた政治宣伝を挙げた。

これらの日本語メディアは、日中の文化的親和性や「植民地主義」といった欧米史の負の部分を強調するとともに、第二次世界大戦をめぐる日本の罪悪感についてしばしば取り上げている。近年では、中国人民解放軍と関係の強い大手電子機器メーカー「ファーウェイ」については「中国が誇るグローバル企業」と紹介した。いっぽう、欧米が指摘するイラン制裁違反やスパイ機能付きの製品といった疑惑について説明していない。

また、ウイグルの人権問題では、中国共産党のメディアの論調に合わせて「日本はウイグル問題で欧米と肩を並べるべきではない」との主張が見られた。これらのメディアは、新華社通信や中国新聞社など中国官製メディアと契約していることが文中で述べられている。

2人は、こうした中共の政治宣伝を行うメディアに対しては、読者が知らない間に影響を受けることのないよう、ソーシャルメディア等はそれらの親中共的背景について「注意書き」を明示するべきだと助言している。

中国共産党政権については、習近平主席が演説で語った「愛される、信頼される」イメージの形成は世界的には成功していないと2人は指摘する。新型コロナウイルスの感染源やウイグル人の人権状況について情報の透明性を求める国際社会の要求に答えず、隠蔽したり、他の民主主義国に責任転嫁しているなどしているため、かえってネガティブな印象が強まっていると分析した。

用語解説

浸透工作:中国共産党に敵対する社会、国家、組織に入り込み、共産党の利益に反する行動を未然に妨ぐ工作のこと。情報操作、信用失墜作戦、政府の不安定化、挑発、結束を弱める工作、「役に立つバカ」の募集、フロント組織(前線組織)の設立などが挙げられる。