米国は発射実験で核抑止力の保証を示す

2021/10/23
更新: 2021/10/23

インド太平洋地域における北朝鮮の核・弾道ミサイル計画と中華人民共和国(中国)の核兵器に対する懸念が高まる中、米国は同国の戦略的抑止力の実行性と即応性を明確に示す核の3本柱(三元戦略核戦力)の中から2要素の実験を行った。 2021年9月中旬には定期的に実施されている示威整調活動(DASO)において米海軍オハイオ級潜水艦USSワイオミング(USS Wyoming)から弾頭を搭載していないトライデントII D5潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)」を発射した。 

このDASO認定されたフロリダ州東海岸沖からの発射は、北朝鮮政権が新型の長距離巡航ミサイルと核弹頭搭載可能なミサイルを試験してから数日後に実施された。

ストックホルム国際平和研究所によると、中国は2007年以来核兵器の保有量をほぼ3倍に増やしているが、推定される350発の核弾頭は米国またはロシアが保有する核兵器数の約6%に過ぎない。 

米戦略軍のグローバル・オペレーション・ディレクターであるトーマス・E・イシー(Thomas E. Ishee)米海軍少将は、「DASOの試験および類似のものは、21世紀の戦略的抑止力における私たちの即応力と能力を示しています」と述べている。 

さらに、米海軍戦略システムプログラムのディレクターであるジョニー・R・ウルフ(Johnny R. Wolfe)米海軍中将は、「現在このチームは2084年まで海上での戦略的抑止力を強化することができる次世代トライデント戦略兵器システムを開発しています」とも述べている。 

DASOの発射1か月前に米軍はカリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地からミニットマンIII大陸間弾道ミサイル(ICBM)の運用試験発射を実施した。グローリートリップと呼ばれたこの発射試験は、ミニットマンIIIシステムの持続性を確認した。

 第576飛行試験隊(576th Flight Test Squadron)司令官のオマール・コルバート(Omar Colbert)大佐は、「米国の原子力企業は自由な世界の安全保障体制の礎です。今日の発射試験は米国のICBM部隊が兵器システムの即応性と信頼性をどのように実証しているかの一例にすぎません。さらに、米軍の航空兵の卓越した能力も示しています」と述べている。

発射試験はワイオミング州のF・E・ウォーレン空軍基地にある第90ミサイル航空団、ノースダコタ州のマイノット空軍基地にある第91ミサイル航空団およびモンタナ州のマルムストローム空軍基地にある第341ミサイル航空団のの人員からなるタスクフォースにより実施された。

発射実験ではマーシャル諸島のクェゼリン環礁付近の太平洋に落下する前に通常弾頭で爆破させたハイフィデリティ・ジョイント・アセンブリ再突入体が搭載されていた。 

6,759キロメートルに及ぶ飛行実験はミニットマンシステムの精度と信頼性を確認し、安全・確実・効果的な核抑止力を継続的に保証するためのデータを提供した。 米国の三元戦略核戦力にはSLBMおよび地上発射型のICBM以外に長距離爆撃機が含まれている。核兵器システムはどのような核攻撃を受けても攻撃者に対する国家の報復能力を確保・防衛できるように設計されている。 

DASOおよびグローリートリップのミサイル試験は、米国および同盟国の安全保障に不可欠なシステムの信頼性と有効性を証明している。抑止力は依然として米国の国家安全保障政策の基盤であり、敵対国家のそれぞれが核攻撃に対して即時・確実な同程度の反撃を行える能力を有していることを認識していることで発揮される。

 米軍の将来的な能力を維持することが米国の戦略的抑止力の重要な要素である。そのために、米国は地上発射型戦略抑止ミサイルに加えて米海軍のコロンビア級潜水艦と英海軍のドレッドノート級潜水艦から発射される新型の弾道ミサイルを開発している。

Indo-Pacific Defence Forum