米警察「窃盗の容疑者」は現役警官 写真を公開するも、市民の抗議で事件は迷宮入り

2023/03/27
更新: 2023/05/26

ミシガン州南東部のワイアンドット市にあるワイアンドット警察(WPD)は今年1月13日(現地時間)、公式のフェイスブックページで「悲しむべきお知らせ。同署所属の現役警官による窃盗事件を捜査中」として容疑者を写したマグショット写真を添えて投稿した。(下の写真)

窃盗事件はその2日前に、なんと警察署内で発生。当時、バーウィグ(Ofc. Barwig)巡査は休憩室で昼食をとっていたが、急な呼び出しにより食べかけのサンドイッチをテーブルの上に置いたまま、その場を離れた。

ところが、しばらくしてバーウィグ巡査が戻ると、テーブルの上にあったはずの昼食が忽然と姿を消していたという。

そこで犯人は、唯一現場にいて、しかも事件後に現場から自分の頬をなめながら出てきたという「同僚の警官」に絞られた。この警官は以前にもゴミ箱漁り(もちろん手が届く範囲での)のほか、通りすがりの同僚の手から食べ物を強奪したことで、数々の告発を受けていたという。

このように、数々の「悪しき前歴」を持つということで、この容疑者は限りなく「クロ」に近いと見られた。

だが、困ったことに容疑者、つまり被害者の同僚である警官は、憲法修正第5条の黙秘権を行使しているという。要するに「捜査に協力的でない」のだ。

そこで、事件の捜査にゆき詰まったワイアンドット警察は、容疑者の写真を添えて「今後、本件の捜査をどのように進めていくのが良いか、フォロワーの意見を考慮する」とSNSに投稿した。

投稿後、容疑者の無実を訴える声が殺到し、大きな反響を呼んだ。

「この警官の無実を無条件で信じる」「有罪が証明されるまで無罪だ。しかも、あの顔を見れば分かる。彼はやっていない」などの、やや理性に欠ける擁護論から、「これ以上捜査や告発を進めるなら、警察署前で大規模な抗議行動を起こすぞ」という警察への脅しまで寄せられたそうだ。

ここまで一般市民から無条件に信用されている(絶大な支持を得ているというべきか)その容疑者とは誰か。現役の警察官(犬)アイス巡査(Ofc. Ice)だ。

数日後、ワイアンドット警察はこの事件の進捗状況について再度投稿した。

「アイス巡査のために無償で弁護を申し出た弁護士が何十人もいる。このまま捜査を続ければ大規模な抗議が起こりかねない。そもそも彼が有罪であることを証明する映像もなく、それに一般市民は彼の有罪など信じていない」などと説明。ついに「アイス巡査が内部規律や刑事責任に問われることはない」と報告した。

手っ取り早く言えば、怒涛のような支持者の声を前に勝訴は不可能と悟ったか、アイス巡査に対する窃盗罪の告訴は取り下げられた。ということで一件落着、いや、サンドイッチ盗難事件は「迷宮入り」となった。

さて、「濡れ衣」も晴れて無罪放免となったアイス巡査はその後どうなったのか。彼のファンだという地元の飲食店「Lunch Wyandotte」は後日、この元・容疑者に店特注のサンドイッチを差し入れたという。ついでに、アイス巡査を疑って容疑者扱いした彼の同僚(こちらは人間)たちにも、ちゃんと配られたそうだ。 

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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