コロナワクチンの効果は自然免疫に劣る:系統的レビューとメタ分析

2023/03/23
更新: 2023/03/24

オミクロン時代、ワクチンの効果は著しく低下した。最近、数十件の研究を対象としたメタ分析により、自然免疫が新型コロナウイルスの全変異種の再感染、症候性感染、重症化に対して、どのコロナワクチンよりも高い予防効果を持っていることが明らかになった。さらに、自然免疫には、ワクチン完全接種と比較して、ウイルス量のリバウンドを抑えるという利点もあった。

自然免疫はあらゆる変異種に対してより高い効果

ワクチンは予防法の一つとされている。ワクチンに限らず、薬物療法や定期的な健康診断も予防法に分類される。また、過去の感染も再感染に対する予防となる。

SARS‐CoV‐2は風土病(エンデミック)、あるいはインフルエンザのような季節性疾患にならざるを得ないと考えられており、変異する可能性も非常に高い。そのため、特定の免疫原をコア成分とするワクチンでは長期的な予防効果は得られないと考えられる。

ワクチンに感染を防ぐ効果がなかったため、宣伝手法は「ワクチンは重症化を防ぐことができる」という方向にシフトしていった。95%の有効性を謳う広告板や、ワクチンの完全接種を促す宣伝ポスターが市民の目に晒された。接種しなければ仕事や学校に行けず、映画や外食に出かけることもできなくなった。そのため、多くの人にとって、ワクチン接種はもはや選択の問題ではなくなった。

しかし、これらの義務付けにおいて、過去の感染が再感染や疾患進行に対し予防効果を発揮することは、しばしば見落とされた。最近のある大規模なメタ分析は、19カ国以上の56の研究から収集されたデータを用いて、過去の感染が症候性疾患や重症疾患だけでなく再感染に対しても極めて有効であることを示している。

図1. 50以上の研究をまとめたメタ分析が、新型コロナに対して過去の感染がいかに予防効果があるかを示した(The Epoch Times)

上の図に示したデータから、過去に新型コロナに感染したことで、武漢型、アルファ、ベータ、デルタの各変異種の再感染に対し80%以上、症候性感染に対し82%以上、重症疾患に対し78%以上という、かなり高い予防効果が発揮されることが分かる。一方で、オミクロン株では、再感染に対し44%、症候性感染に対し45%と予防効果が低下したが、重症疾患に対する予防効果は80%以上だった。

ただし、このデータが示しているのは、さまざまな研究から算出された、過去の感染によってもたらされた平均的な予防効果に過ぎない。自然免疫が持つ予防効果の有意性は、各種ワクチンと比較した際の予防効果の減退の遅さにさらに強く現れている。

以下の図2〜4に示したデータは、接種後40週までのワクチンによる予防効果と、感染後80週までの感染による予防効果を比較したものだ。ここで重要なのは、過去の感染による予防効果の方が、ワクチンによる予防効果よりはるかに長く持続することだ。

図2. 再感染に対するワクチン接種及び追加接種と、過去の感染の免疫有効性の比較(The Epoch Times)

上の図で示したデータでは、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソン(ヤンセン)など、市場に出回っている複数の主要なワクチンや、mRNAワクチンの追加接種による予防効果と、過去の感染による予防効果が比較されている。

この結果は、過去の感染が持つ再感染に対する予防効果が、他の多くのワクチンや追加接種と比較して高確率で有意により長く持続することを示している。ゲームチェンジャーとなったオミクロン株に対しては、ワクチンと自然免疫の両方の有効性が低下した。しかし、例えば、モデルナの有効性が接種後40日に一桁台まで落ちているのに対し、過去の感染による免疫は感染後80週経っても25%以上を維持している。

症候性感染と重症疾患に対する予防効果についても、同様の観察結果が下の図3,4にそれぞれ示されている。このデータも同じことを伝えている。つまり、自然免疫は、現在市販されている他のどのワクチンや追加接種との組み合わせよりも、すべてのSARS-CoV-2の変異種に対して、はるかに強力で持続的な免疫を提供する。

図3. 症候性感染に対するワクチン接種及び追加接種と、過去の感染の免疫有効性の比較(The Epoch Times)
図4. 重症疾患に対するワクチン接種及び追加接種と、過去の感染の免疫有効性の比較(The Epoch Times)

このメタデータ分析にはいくつかの限界がある。例えば、この研究では、既感染群に含まれる患者がどのウイルス変異種に感染したのかが特定されていない。また、ジョンソン&ジョンソン(ヤンセン)やアストラゼネカのような一部のワクチンに関する情報が十分に含まれていないことも、このデータの問題点だ。しかし、このデータには、過去にコロナに感染したことで、再感染や重症化に対してワクチンよりもはるかに高い予防効果が発揮されることが明確に示されている。

このメタ研究で集められたデータは、多くの国で過去数年間にわたって発表されたさまざまな研究から得られたものだ。つまり、少なくとも数人の科学者は、特にオミクロン株が出現した後、自然免疫がいかに強力であるかをよく知っていたということだ。このメタ分析によって、その点が明確になった。

しかし、パンデミック関連の公衆衛生政策において、そうした見解は軽視された。ワクチン接種キャンペーンが強く支持され、自然免疫で守られている人たちにもワクチン接種が義務付けられた。多くの政府の保健機関は、ワクチン接種がコロナに対する有効な予防策の唯一の源泉であるかのように扱っていた。

実際には、政府の保健機関は、大手製薬会社およびワクチンメーカーの強力な販売代理店となっていた。これがエビデンスに基づいた医療や公衆衛生だと言えるだろうか。商業的利益と産業複合体によって動かされていなかったと言えるだろうか。

データはまた、オミクロン株がパンデミックの大勢を変えたということも示している。オミクロン株は、すべてのワクチン、さらには過去の感染によって得た免疫の有効性を激減させたにもかかわらず、重症化は引き起こさなかった。これはおそらく明るい兆しだ。しかし、今のところ、なぜ波が来ては去るのか、また次の変異種をどう予測するのかは全く分かっていない。科学界はこのウイルスに対する理解が追いついておらず、肝心な質問には答えることができていない。

ワクチン完全接種者の間でウイルス量がリバウンド

今日、人類が直面する疾病に対する解答として、ワクチンが増々注目を集めている。しかし、ワクチン接種が有害事象、副作用、マイナス効果、免疫力低下などの望ましくない結果とどう関連しているかに関して、理解はむしろ限定的な範囲にとどまっている。

少し意外かもしれないが、香港で行われた最新の研究結果によって明らかになった、もう一つの懸念事項がある。それは、抗ウイルス剤で治療を受けているワクチン接種者の間でウイルス量がリバウンドしたことだ。

一般的にウイルスは、宿主に依存して複製する非生物的存在と考えられている。血液中に存在するウイルスの量、すなわちウイルス負荷は、ウイルスの宿主に対する感染の程度を示し、通常、体が感染に対してどのように対処しているかを示すサインとなる。

ウイルス負荷はCt値によって測定される。これは、「Threshold Cycle(閾値のサイクル)」の頭文字をとった表記で、ウイルスが一定の濃度に達するまで、患者サンプルに対して機械がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を何回行う必要があるかを示す値だ。一般的に、Ct値が低いほど検体のウイルス量が多く、Ct値が高いほどウイルス量が少ないことを示す。

コロナの治療によく使われる抗ウイルス剤、例えばファイザー社が開発したパクスロビド(一般名:ニルマトレルビル・リトナビル)やモルヌピラビルは、何らかの方法でウイルスを阻害し、私たち自身の免疫システムが感染を食い止めるのを助ける。しかし、『ランセット』誌に掲載された香港の研究では、ワクチン完全接種者の間で、抗ウイルス治療を行った後にウイルス量が大きくリバウンドしていることが示された。

図5. 抗ウイルス剤治療10日後、ワクチン完全接種者内でウイルス量の極端なリバウンドが観察される。(The Epoch Times)

パクスロビドは、ワクチン不完全接種者にとって新型コロナに効くという点で、かなり成功した薬だ。しかし、ワクチン完全接種者に対しては、その効果が極端に弱まってしまうようだ。また、治療後10日程度で、ウイルス量が効果的にリバウンドしている。つまり、一連の治療が終了した5日後にウイルスが復活している。

モルヌピラビルによる治療では同様の問題は見られなかったが、これはウイルスを阻害するメカニズムの違いによるものと思われる。パクスロビドはウイルスのプロテアーゼを標的とするが、ウイルスの複製を阻害する効果はモルヌピラビルほどではない。この研究では、mRNAワクチンを2回接種するか、中国のシノバックワクチンを3回接種していれば、完全接種の基準を満たしているとされた。しかし、これらのワクチン接種は、抗ウイルス治療後のウイルス量のリバウンドにどのような影響を与えるだろうか。

ワクチン完全接種は免疫系を消耗させ、ウイルスクリアランスは必要なほど効果的でなくなるようだ。したがって、この研究において、抗ウイルス治療が終了してウイルス量がリバウンドした時点で、被験者らはウイルスを可能な限り効果的に管理していなかったということになるのだろう。

このパンデミックは、私たちにどんなメッセージを伝えようとしているのだろうか。新型コロナはここ数年にわたり世界を混乱に陥れ、非常に多くの人々が深刻な影響を受けてきた。当局が採用した介入方法も、限定的な効果しかなかったように思われる。

パンデミックが一段落した今、どういった動機でこれらの予防策が取られたのかを振り返り、本当に私たちの利益のために実行されていたかどうかを分析する時期に来ている。これらの人工的なやり方が、本当に母なる大自然に匹敵する力となりうるのだろうか。

私たち人間が謙虚であり続けること、自分の知識の限界を受け入れること、そういった態度が必要なのは明らかだ。中国共産党のゼロコロナ政策のように、極端な政策でウイルスへの勝利を自画自賛するようなことは決してあってはならない。

私たちはパンデミックに勝ったわけでも、ウイルスに勝ったわけでもない。私たちは神の慈悲のもとに、パンデミックを生き抜いただけだ。

この記事で示された見解は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの見解を反映するものではありません。

ニューヨークを拠点とする大紀元記者。健康記事を担当。
米ニューヨークの飛天大学バイオメディカル・サイエンス学部助教授。大紀元系列メディアやVOA、RFAなどで、アナリストやコメンテーターとして活躍している。米陸軍で微生物学者を務めた退役軍人でもある。「現在の危機に関する委員会:中国」のメンバー。
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