国際 IN-DEPTH 宗教がAI革命の最新のターゲットになりつつある理由(1)

世界経済フォーラム上級顧問がAIで聖書を書き換えを提案

2023/06/26
更新: 2023/07/04

数週間前、世界経済フォーラム(WEF)の上級顧問は、AIを使って聖書を「書き換え」、「より包括的」で世界中の人々に魅力的な経典にすることを提案した。これらの動きは、世界中の確立された宗教的権威に対して前例のない文学的、神学的な課題を提起している。

イスラエルの歴史家で哲学者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏は、『サピエンス全史』を執筆したベストセラー作家である。彼は、5月19日にポルトガルのリスボンでジャーナリストのペドロ・ピント氏とのインタビュー中に、AIが世界的な宗教テキストを作り出す可能性を予測した。

「将来的には、新たなカルトや宗教が現れるかもしれない。それらの崇拝されるテキストは、非人間の知性によって書かれたものだ」と彼は述べた。

すでに、信仰者は人工知能に導かれている。

6月9日に行われたAIによる礼拝では、数百人のルーテル派キリスト教徒がドイツのニュルンベルクの聖パウロ教会に集まり、礼拝した。

会衆が落ち着くと、祭壇の上に設置された大型スクリーンに、髭面の黒人を擬人化したChatGPTチャットボットのアバター(ネット上の分身)が登場し、礼拝を先導し始めた。

「親愛なる友人の皆さん、今年ドイツで開催されたプロテスタントの大会で、最初の人工知能としてここに立ち、皆さんに説教できることを光栄に思います」とアバターは言った。

4人のAIの画像と声のうちの1人が、40分以上にわたってキリスト教の礼拝を指揮し、歌をリードし、祝福を捧げ、人間ではなく機械が書いた説教を行った。アバターの顔は無表情で、声も単調だった、とイベント後に人々は指摘した。

ウィーン大学の29歳の神学者・哲学者であるヨナス・シンマーライン氏は記者に語った。「このサービスは私が考案したものが、実際には、98%くらいは機械が担当したと思う」

「私は人工知能に言った。我々は教会の大会に参加している、あなたは説教者だ…教会の礼拝はどのようなものだろうか?」

心も魂もない

この実験的な礼拝は、数万人の信者が集まると言われる地元のプロテスタントの会議の中で行われた。

チャットボットは、女性2人と男性2人、4回アバターを変えた。「過去を捨て、未来の課題に集中すること」、「イエス・キリストへの信頼を失わないこと」を説いた。

コンピュータの伝道師に対する受け止め方は様々であった。熱心に撮影する人もいれば、批判的な目で見る人もいた。チャットボットは、「信仰を守るためには、祈り、定期的に教会に通う必要がある」と信者に語りかけ、時には失笑を買った。

会議に参加したハイデローゼ・シュミット(54歳)は記者に、「心も魂もなかった」と語った。

IT関係の仕事をしている彼女は、好奇心でこのイベントに参加したという。しかし、礼拝が進むにつれ、次第に不快に感じるようになった。

「アバターは全く感情を示さず、身振り手振りもなく、早口で単調に話すので、彼らの話に集中するのがとても大変でだった」と指摘。

しかし、他の人たちはこの新しい技術を受け入れ、感動していた。

10代の青少年を連れてこの礼拝に参加した31歳のルター派牧師、マーク・ジャンセン氏は、「もっとひどいことを想像していた」と語った。「こんなにうまくいくとは思っていなかった。AIの話にはまだ多少不安定なところもあったが、うまく機能している」

しかし牧師は、すべての精神性や感情が欠けているように見えると指摘した。

オランダのトゥウエンテ大学の技術倫理研究者であるアンナ・プジオ氏(28歳)は、「私が考える課題は、AIが非常に人間に似ていて、それに惑わされやすいということだ」と述べた。

AIを使用して礼拝を主導すれば、AIに前例のない支配力を与える可能性があり、近いうちに 「人を操り、社会を再構築する能力 」を含む、前例のない支配力を与える可能性があるとハラリ氏は指摘した。

「それができれば、私たちを撃つために殺人ロボットを送り込む必要はなくなる。人間に引き金を引かせることができるのだから」

世界の終わり?

では、これは、誤りを犯しやすい人間の要素を取り除き、「良い言葉」を最適化ソフトウェアに通して、良い方向に導く機会なのか?それとも、大衆を操作する機会なのだろうか?

弁護士でブロガーのジェフ・チルダース氏は、後者について警鐘を鳴らした。

チルダース氏はニュースレターのサブスタック(Substack)のブログ「Coffee and Covid」で、AIによる影響を受けた宗教の出現を予測した。

彼がそれを読者に発信したのは、ハラリ氏がAIが書いた聖典の可能性について公にコメントする数日前、そしてドイツでAIが主導する礼拝が行われる前だった。

チルダース氏は日中、フロリダ州ゲインズビルで商業訴訟の弁護士を務めている。夜間は、パンデミックの始まりに立ち上げたブログのためのニュース収集に専念することが多い。

また、聖書の「ヨハネの黙示録」に記されている「終わりの時」を文字通りに解釈するキリスト教徒で、「予言者」でもあると自称している。

チルダース氏はエポックタイムズに「黙示録には、世界の終わりが描かれている」と語った。「そして世界の終わりには、いくつかのカラフルなキャラクターが登場する。そのうちの一人は、ハリウッドやその他諸々によって大衆化された反キリストだ」

「あるキャラクターは子羊のような角を持つ第二の獣。この第二の獣は、反キリストの前に力を振るう。人々は通常、第二の獣を偽預言者と呼んでいる。なぜなら、黙示録の記述にあるように、全世界に獣である反キリストを崇拝させることになるからだ」

多くの人は、反キリストが政治関係者であると予想し、第二の獣が宗教の人物であると見ているそうだ。しかし、その「偽預言者」は実際どのような姿をしているのか。

「偽預言者は、命を吹き込まれた像であるとか、超自然的なものであるとか、いろいろな説がある」とチルダース氏が説明している。

前例のない量のデータにアクセスし、過去の歴史上の人物のスタイルを模倣する能力を持つスーパーコンピュータがますます本質的な方法で情報を作成し、人間に提示する。

「人々はイエスやムハンマド、ブッダからアドバイスを受けたいと思うようになる。これらの歴史上の人物のAIバージョンが登場する」

チルダース氏は、人々が 「文字通り彼らを崇拝し始める」と確信した。

実際のところ、このようなチャットボットプログラムの開発は、すでに進行中である。

(続く)

宗教がAI革命の最新のターゲットになりつつある理由(2)
AIは第2の聖書を書くことができるか

フロリダ州担当記者。米国の宇宙産業、テーマパーク産業、家族関連の問題も取り扱う。
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