中国、原油と金の準備を増やす 戦争に備えるか?

2023/08/18
更新: 2023/08/18

パンデミック後の中国の景気回復は、エコノミストの予想を下回り、様々な指標が経済の失速を示唆している。にもかかわらず、中国は原油を買い増している。

中国で金価が高騰

中国人民銀行 (以下、人民銀)は7月、9か月連続で金準備を増やしたと発表した。人民銀は先月に23トンの金を購入し、現在、総保有量は2137トンとなっている。

2023年上半期の中国の金輸入量は792トンで、前年同期比98%増加した。しかし、6月の金輸入は前月比29%減の98トンとなった。

中国は昨年11月以来、金買いを続け、今年前半には金準備を103トン増やした。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のアナリストは、この金買い増しは下半期も続くと見ている。

WGCはまた、過去18か月間で金を最も多く購入してきた他の中央銀行も、引き続き金保有を増やすと予想している。

「回答者の10人に7人が、世界の金準備が今後12か月で増加すると考えている。これは昨年の調査から大幅に増加している。そのため、人民銀の金需要が、昨年下半期に見られたレベルに匹敵する可能性は低いものの、今後数四半期にわたって楽観的な見方を維持している」とWGCは表明した。

INGグループのアナリストは、金は 「不安定な時期」 に魅力的な資産であるため、人民銀をはじめとする中央銀行が金を買い漁っているとみている。

INGのコモディティ・ストラテジストであるエワ・マンセイ氏は「地政学的緊張だけでなく、経済情勢を理由に、人民銀は金購入を続けるだろう」 と述べた。

北京は金の大量購入に加え、金の採掘量も増やしている。

2023年第1四半期、中国の金採掘量は 「複数の要因が重なったため」 前年同期比3%増加した。

中国が戦争に備えて金を購入しているとの憶測もある。

ロシアは、2014年のクリミア侵攻で米国主導の制裁を受けた後、膨大な量の金を蓄積し、脱ドル化を進めていた。モスクワの軍資金の大部分を金が占めているため、クレムリンは国際金融市場から追放される痛みを和らげることができた。

特に習近平国家主席が中国軍に対し、戦争が起きた場合には「すべてのエネルギーを戦闘に集中させる」よう指示した後では、中国もこのような情勢に備えているのかもしれない。

中国、原油輸入を増やしている

第2四半期のGDPは6.5%と予想を下回り、製造業は4か月連続でマイナス成長に陥っているなど経済が低迷しているにもかかわらず、中国は石油の購入を増やしている。

2023年7月、中国は1日平均で約1029万バレルの石油を輸入し、前年同月比で17%増加した。S&Pグローバル・コモディティ・インサイツによると、2023年上半期の燃料油の総輸入量は前年同期比で約155%増加した。

エネルギー研究所のInstitute for Energy Researchは「ロックダウンからの景気回復が遅く、総需要も低い。にもかかわらず、中国はエネルギー安全保障を確保するために、記録的な量の石油を輸入し、国内の石油生産を記録的水準近くまで引き上げている」 と指摘した。

天然ガスは、国のエネルギー安全保障の取り組みにおいても重要な役割を果たしてきた。中国は、エネルギー商品を長期間にわたり購入する計画を立てており、今年、世界最大の液化天然ガス輸入国となる見込みだ。

景気低迷

エネルギーや金を大量に購入しても、2024年に中国経済は停滞する可能性があると市場アナリストは予測している。

「投資家や消費者の信頼喪失、人口減少、不動産危機、デフレーションの兆候が、中国経済がより長期的な経済停滞に陥る可能性を示唆している。そのため、景気刺激策やその有効性に対する投資家の楽観的な見方が急速に後退する可能性がある」とスイスクオート銀行のシニアアナリスト、イペック・オズカルデスカヤ氏は述べている。

キャピタル・エコノミクスによると、中国の潜在成長率は今年、パンデミック前の5%から3%に落ち込んだ。

チャイナ・エコノミクスの責任者であるジュリアン・エバンス=プリチャード氏は次のように述べた。「これは、コロナ発生以来、最も急激な減速である。公式のGDPデータは、最近の低迷を十分に反映していないが、すう勢成長率の著しい低下と一致している。主な原因はパンデミックではなく、不動産部門の構造的変化である。今年の景気回復が遅いのも、すう勢成長率低下の結果である」

北京当局が今後数か月の間にさらに財政・金融刺激策を採用すると戦略家が予想している中、当局は莫大な量の金と原油を購入し続けるだろうか。

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