「何百万人死んでも…」人命軽視の中朝露、日本は「米国の核の傘」で抑止できるか

2023/09/06
更新: 2024/02/28

米国は国民を100万人死なせるわけいかないが、中共は上海郊外で核爆発があり100万人死亡しても、大した問題ではないと切り捨てるかもしれない。これが(強権政治の)恐ろしさだ。核でどうにかなるという程度でもなくなってしまう。

8月中旬に発表された、台湾有事の政策シミュレーション(日本戦略研究フォーラム主催)では、中国が台湾への軍事侵攻の高まりを受け、日本は米国に「拡大抑止(核の傘)」入りを要望することが想定された。いっぽう、軍事ジャーナリストは、人命を軽視する独裁政権に対する核兵器の抑止効果に疑問を投げかける。

核抑止論とは、法外な破壊力をもつ核兵器を保有することで、戦争を抑止する力となるといった考え方。また、米国の核兵器を同盟国で共有しその抑止効果を享受することを「核の傘」と呼ぶ。

日本における核の傘議論は昨年、ウクライナ侵攻後に注目された。安倍晋三元首相は、ロシアによる侵略戦争への教訓として、核の傘議論を日本でも進める必要があると主張した。いっぽう、被爆国としての責務を強調する岸田文雄首相は、核共有の議論はしないとの立場をとる。

日本政府が堅持する「持たず、作らせず、持ち込まず」とする非核三原則は理念であり、法的拘束力はない。

日本の安全保障環境はかつてないほど厳しくなっている。令和5年版防衛白書は、周辺国の中国、ロシア、北朝鮮の軍事動向が増大する脅威と位置付けた。核の傘は安全保障と外交の現実的な視点から選択手段として、冒頭に記した政策シミュレーションでも取り入れられている。

日本の近隣3カ国 人命軽視の独裁政権

昨年3月発表された、米バイデン政権の核政策方針「核態勢見直し」によれば、「核抑止力と拡大抑止(核の傘)の維持は最優先事項だ」と明記し、大筋で従来方針を踏襲した。ロシアや中国の核の脅威が高まる中、抑止力維持を求める日本などの同盟国を考慮した。

しかし、人命を軽視する独裁政権に対して、西側の核抑止は成り立たない可能性があると、軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹氏は指摘する。

中国共産党は70数年の歴史のなかで失策や弾圧により自国民を迫害してきた。核戦争に関する見解は冷酷な毛沢東の意見が知られる。50年代にソ連で開かれた社会主義国間の会談で、毛沢東は核戦争が勃発しても「全世界人口の半分が滅びる」のみと述べ、他国首脳を凍り付かせた。

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ウクライナ侵攻を断行したロシアは、兵士に訓練と称して軍事作戦に参加させた。兵士は前の大戦期の装備品など粗末な防備で戦地に赴いており、ウクライナ側を驚愕させたという。ロシアは「兵士は畑から取れる」といったソ連時代の旧来の思想を今なお実践中の見方もある。

北朝鮮は金一族が核兵器を含む兵器開発を続け国民は慢性的な飢えに苦しんでいる。同一の朝鮮民族である韓国にも容赦はない。8月末にも、韓国軍指揮拠点等を標的とする戦術核を使い“焦土化”させる訓練を行なった。

こうした独裁体制上の体質から、「もはや米国の核抑止さえ、これらの国にとっては有効でもないかもしれない」と鍛冶氏は指摘する。

「米国は国民を100万人死なせるわけいかないが、中共は上海郊外で核爆発があり100万人死亡しても、大した問題ではないと切り捨てるかもしれない。これが(強権政治の)恐ろしさだ。核でどうにかなるという程度でもなくなってしまう」と大紀元の取材に述べた。

前出のシミュレーションでは、中国の大方針を「軍事行動を避け、情報戦やサイバー攻撃、世論戦」と仮定した。しかし”平和統一”に失敗した場合、武力を用いた特別軍事作戦を決行する。中国は非戦略核兵器を用いて、米国の軍事介入を防ぐため、在日米軍基地やグアム基地、空母機動部隊などを攻撃すると想定した。

このほか、今年2月、米国の国際戦略問題研究所(CSIS)が発表した別の台湾有事シミューレションでは、中国が核兵器を使用する可能性は低いものの、長期化することで使用の可能性が高まっていくと指摘する。

有事において核兵器の使用を回避するためには「軍事的な誤解を避ける、危機管理のメカニズムが成立する信頼関係を醸成する、通信手段を確保する」などを挙げた。

いっぽう、皮肉にも、今回のウクライナ侵攻において、ロシアの核抑止が米国や北大西洋条約機構(NATO)に対して効果を示したと分析されている。

明海大学教授の小谷哲男氏は日本戦略研究所への寄稿文で、米国は「ロシアとの核戦争を恐れ、直接的な軍事介入の可能性を早々に否定した。これは、ロシアの核戦争の脅威が、米国や同盟国の介入を抑止したためだ」と指摘した。

小谷氏は中国への影響について「急速に核戦力を増強しており、米中間の戦略的安定性が成立すれば、台湾有事が発生する可能性がある。米軍の介入も抑止される可能性がある」と述べている。

台湾有事 ロシアはどう出る?

前出の日本のシミュレーションは、ウクライナ戦争は終結した段階で台湾有事の勃発が想定されている。中国が台湾侵攻に踏み切るような場合、ロシアはどう出るのか。鍛冶氏は、北方領土への侵攻を含む中国共産党の作戦への協力の可能性をあげた。

中露は共同訓練を2019年より定期に実施している。中露艦隊が日本を周回する動きを見せ、ロシア海軍は北海道周辺の動きを活発化させている。インタファクス通信8月27日付によれば、ロシア海軍の艦艇は中国海軍との3週間以上もの太平洋の合同巡視活動を終えて帰還。中露の艦隊は日本海、オホーツク海、ベーリング海、太平洋を航行し、北方領土周辺も通過したという。

さらに、露プーチン大統領は重ねて中国共産党の「一つの中国」理論に支持を示しており、台湾の自治を間接的に否定している。

こうした一連のロシアの動向から、鍛冶氏は、台湾有事に際しロシア海軍の介入を予想する。日米台の「兵力を二分するための中露の連携」を行い、ロシア軍による北方領土への侵攻といった日本への攻撃も考えらるとした。

抑止には核兵器の保有のほか、軍事力増強、同志国との連携強化、経済制裁や外交圧力などがある。台湾自身の”備え”も急がれる。米下院のロブ・ウィットマン軍事副委員長率いる議員団は1日、台湾を訪問し、米国には台湾への武器売却の遅れを解消する義務があると述べた。

8月末、バイデン政権は台湾への装備品供与を含む自衛能力強化を支える「対外軍事資金プログラム」を承認。総額8000万ドルを提供する。ホワイトハウスによると、支援には武器や弾薬のほか軍事訓練なども含まれている。

米インド太平洋軍デービッドソン前司令官は、議会上院軍事委員会の公聴会で「27年までに中国共産党が台湾侵攻の準備を整えるだろう」と警告した。情報機関を統括する国家情報長官室も今年3月、同様の見解を報告書で示している。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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