中国でつづく「民衆による略奪」 崩壊国家を再生させる最大のカギは何か?

2023/10/09
更新: 2023/10/09

偸盗(ちゅうとう)は、仏教でいう十悪のひとつで「盗みをはたらくこと」である。

地域社会から国家全体に至るまで、ある集団のモラルが急激に低下したときに、この悪行が、毒蛇の鎌首のように社会に突出して現れる。

典型的な例として、巨大地震やハリケーンなどの自然災害が発生して、日常生活が壊滅し、都市機能が一時的にマヒした場合などに、理性を失った群衆が壊れた店舗や民家に押し入り、手当たり次第に物を盗んでいく現象が起きる。

こうなると、こっそり盗む窃盗ではなく、非常に大勢で、ためらいもなく、全てを奪ってゆく「略奪」である。この略奪が始まると、その次の「暴動」という段階に進む危険性が極めて高まることになる。

「民度」は人々の成熟度

そこで問われるのが「民度」という、一つの社会を形成する人々の成熟度である。

民度が高い集団であれば、店に主人がいなくても、客はきちんと代金を箱に入れていく。例えば「野菜の無人販売所」が存在する社会は、総じて民度が高いと言えるだろう。それだけ社会が正常に機能している証拠であるし、結果として、天罰や仏罰を避けられるのだ。

「人が見ていないから、勝手に持っていく」という身勝手なふるまいには、実は一つ、重大な視点が抜けている。神仏が見ている、お天道様が見ている、ということだ。

日本で、2011年3月11日に東日本大震災が発生したとき、あの大災害のなかで、多くの日本人が努めて社会秩序を保ち、とくに被災地で暴動や略奪が起きなかったことに世界中が驚嘆した。

ある欧州の海外メディアは、取材した東北の被災地でこんな光景を見たという。

地震によって倒壊したコンビニの店舗内で、ひとりの日本人の少女が、地面におちて砂にまみれた商品のお菓子を拾い、そのまま静かに会計の列に並んだ。海外メディアは「そこに神の姿を見た」と伝えた。

日本人はあの時、本当に胸がつぶれるほどの悲しみのなかにいた。だからこそ、心を合わせ、お互いを気遣い「皆で頑張ろう」と声をかけあった。

東北の被災地を遠く離れた東京都内では、あの3・11の寒夜に、膨大な数の帰宅困難者が出た。

そのようななかでも、見知らぬ人同士が助け合い、同じ方向へ行く車には乗れるだけの人を乗せ、無償で送り届けるなど親切の限りを尽くした。都内のあるホテルは、帰宅困難者に休息してもらうため、1階ロビーを開放した。その際、レストランのシェフが、心づくしの温かいスープをふるまった。

ただし、日本人が本当に完璧であったかというと、残念ながら「玉にキズ」の98点であった。ごく少数ではあるが、津波で壊滅した被災地で「盗み」をする不心得者は、やはりいたのである。

日本にも、もちろん悪い人間はいるし、犯罪も起きる。ただし、総体としては「恥ずべきことを、するな!」という武士道精神があるため、日本は、非常時でも国内の秩序が保たれやすい。

興味深いのは日本の場合、その秩序が、神仏が指導する宗教や信仰に基づくというより、社会のなかで育まれた「日本人の美徳」に根差すことだ。

キリスト教世界の唯一神とは違って、日本神話の「かみさま」は八百万(?)もいるほど数多く、しかも人間にちかい形をしているため、あまり細かくモノを教えるような存在ではない。

それよりも日本人にとっては、責任を取るため切腹する刀のほうに、リアリズムとしての「鋭さ」を感じるのであろう。日本人が刀を持たなくなって久しいが、忠臣蔵が好きであることは、おそらく今後も変わらないと思われる。

「中国に泥棒はいない」と言われた時代

その点、中国ではどうか。

今となっては昔話など何の役にも立たないが、およそ50年前の日中国交正常化(1972)の前後には、本当の話として「現代中国に泥棒はいない」と伝えられた。まだ毛沢東が死んでいない頃のことである。

確かに、このような話が多くある。例えば、日本からの訪中団が泊まったホテルの部屋に何か忘れ物をした場合、それが安物のカメラであれ万年筆であれ、次の訪問地のホテルの「その人の部屋」まで、団体が到着するより早く確実に届けられたのだ。

神ワザのような実話は、いつしか伝説となって「現代中国に泥棒はいない」と言われた。その結果、そうした伝説を生んだ「新中国」にすっかり魅了され、大学教授など日本の知識人のなかにも毛主席と中国共産党のシンパがかなり存在した。

いっぽう当時の台湾では、まだ蒋介石が存命であった。国民党独裁による強権的な軍政を敷いていたため、とにかく腐敗がひどかった。

大陸から渡ってきた少数の外省人が、社会のあらゆる場面で台湾人(内省人)を虐げていたのが、当時の戒厳令下の台湾であった。台湾の戒厳令は1987年まで続く。

周知の通り、台湾が本格的に民主化に向かうのは、20世紀最大の哲人政治家といわれた李登輝総統の時代からである。李登輝氏ご自身が、生前に「22歳まで自分は日本人であり、その基盤は日本の武士道精神である」ということを何度も言っておられた。

ともあれ、戦後日本のリベラリズムからすれば、それまで国交を保ってきた中華民国(台湾)よりも、大陸中国の共産主義体制のほうに魅力を感じ、強く引き付けられた。加えて、上野動物園に来た2頭のパンダに、日本人の心はとろけさせられた。

要するに、東シナ海の日本領海に中国船がずかずか侵入してくる今日の様態を、半世紀前は想像もしていなかったのだ。繰り返すが、ここで昔話を並べても、何の役にも立たない。ともかく50年前の「現代中国に泥棒はいない」は、もはやブラックジョークの語類に入ってしまったようだ。

「一夜にして、何もかもなくなった」

残念ながら近年の中国では、人々のモラルの低下が原因とみられる集団での窃盗・略奪事件が後を絶たない。とにかく唖然とするほど、ごっそり持っていかれるのだ。

最近では、河南省の野外音楽フェスでの窃盗事件があった。また、江蘇省の結婚式場でも、窃盗被害に遭ったことがわかり、関連話題はSNSのホットリサーチ入りした。

今月3日、江蘇省徐州市のウェディング企業が、野外にセッティングした結婚式の会場が、とんでもない窃盗に遭ったことがわかった。

中国メディアの取材に対し、被害を受けたウェディング企業の責任者は「今月3日の深夜3時に、ようやく式場のセッティングを完了した。ところが(4時間後の)朝7時になると、空っぽになっていた」と語った。損失額は1万元(約20万円)ほどだ。

「空っぽ」とは、本当に全てのものが盗まれていたことをいう。説明によると、現場には電線コードから道具類、お祝いの花を含め、ネジ1本すら残されていない無残な状態だったという。

この責任者によると「事件の後、様々なルートを通じて聞いて回ったところ、窃盗を働いたのは付近の村人たちであった。盗まれたものは、すでに転売された。残りは捨てられたり、各自の家に持っていかれたりしている」という。

事件後、実際に近くの村の住民の家で、盗まれた会場設備の一部が発見されている。ウェディング企業はこの被害について警察に通報。事件は、現在調査中であるという。

「誰もいないから取った」と平気で言う感覚

これに先立ち、河南省南陽市で開催された野外音楽フェスティバル「迷笛音楽節(9月29日~10月2日)」でも、大規模な窃盗があったことが中国メディアの報道でわかった。

夜のうちに、あるいはスタッフがトイレに行っているわずかな間に、イベントに来ていた人たちの現金をはじめ、携帯電話、衣服や靴、寝袋、テント、挙句の果てには「キャンピングカーを盗まれた」と訴える人までが続出した。被害者は100人以上にのぼるとみられる。

「付近の村民らしき人たちが、三輪トラックやバイクなどを使って、音楽フェス近くのキャンプ場から盗んだとみられる物品を大量に運んでいた」という目撃証言が出ている。

盗難事件は現在捜査中。ただし、盗まれた物品が回収できる望みは、極めて少ない。

 

会場ちかくのキャンプ場で、他人の荷物をあさり、自分のカバンに入れる付近の村の女性。撮影者の問いかけに対して「誰もいないから取ったんだよ」と、意味不明の弁解をしている。「盗み」という感覚が全くないらしい。(NTD新唐人テレビの報道番組よりスクリーンショット)

 

フェスティバル会場ちかくのキャンプ場で、他人の荷物をあさり、自分のカバンに入れる付近の村の女性がいた。「なぜ、そんなことをするのか」という撮影者の問いかけに対して、女性は「誰もいないから取ったんだよ」と、意味不明の弁解をしている。

つまり「誰もいない。そこにあるから取った(盗った)」のだそうだ。おそらく、この付近の農民であろうこの女性には、そもそも「盗み」という感覚が全くないらしい。

「モラル崩壊」が国を崩壊させる

今の中国は、人々のモラルが崩壊したと言われている。

例えば、田舎道を走っていたトラックが交通事故で横転したとする。すると、付近の村から村民が湧き上がるように群がり、運転者を救助するのではなく、トラックの積み荷を、血走った目で争いながら強奪していくのだ。

同類の事件は、過去にもたびたび起きている。中国では「付近の村民による集団窃盗」のような事件は、もはや珍しいことではない。

例えば2020年8月、江蘇省で「豚肉を積んだトラック」が交通事故に遭い、高架橋から下に落ちて横転した。トラックの壊れた後部ドアから、豚肉を入れた箱が地面に散らばった。

これを聞きつけた近隣の住民は、トラックや三輪バイクなどで次々とやってきて、手当たり次第に豚肉をつかみ、持ち去ったのである。当時、100人以上がこぞって「豚肉争奪戦」を繰り広げた。

幸い助かった運転手はその時、高架橋の上から「やめてくれ!」と叫んだ。しかし、誰も聞く耳を持たず、現場を清掃する作業員までもが、こぼれた豚肉を持ち去ったのである。何の用途があるのか不明だが、トラックの「壊れて落ちたドア」まで誰かに持ち去られた。

その時の様子は動画にも残っているが、とても人間社会の光景とは言えず、アフリカの草原で肉食獣が獲物に集団で襲いかかる場面に似ている。つまり、人間が営む社会としては、完全に正常さを失っているのだ。

もはや、こそこそやる窃盗ではなく、白昼堂々と集団でやる略奪がまかり通っている。

こうした重度のモラル崩壊を「国家の崩壊」と表現しても間違いではないだろう。中国は今、上から下まで、このようになってしまったのだ。

「中共を除去し、文化を復興させる」

中国で相次ぐ大規模な窃盗・略奪事件について、中国問題専門家でエポックタイムズのコラムニストである王赫氏も「人々のモラルが崩壊したことと関係がある」と指摘する。

「中国は本来、礼節や礼儀を重んじる国だった。しかし、中国共産党による70年以上にわたる邪悪な支配が中国の伝統文化を破壊し、人々の道徳心を失わせた。基本的な道徳すら失われた今の中国では、実に多くの乱象(でたらめな事象)が起きている」

「中国人が、人間として尊厳をもって生きたいのならば、ただ無神論や共産党を捨てるだけではまだ足りない。失われた伝統を取り戻し、破壊された文化を再建しなければならない。そうしなければ、人間の善や、隣人との友愛を取り戻すことはできないからだ」

王赫氏は、そう述べた。

肝心なのは「中国共産党を完全に捨て、さらに、失われた伝統文化を取り戻す」ことだ。まだ道は長いが、21世紀初頭の今、中国人が自民族の再生をかけて、何としても成し遂げねばならないことは、この2点に集約されている。

中共政権が倒れるのは、もはや時間の問題であり、その時期は意外と早いかもしれない。

その際、中共の悪しき残滓を完全に除去するとともに、仁義礼智信の「五常」をはじめ、失われた正統な文化を復興させてこそ、本当の中華民族の再生が始まるだろう。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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