中国社会では、受けた不公平や理不尽さを訴える場がもはや存在しない。
絶望した市民ばかりだけではない。警察も裁判官も、ネットという最後の手段にすがるが、その声が当局の敏感神経に触れるものであれば直ちに封じ込められてしまう。
最終的に残されるのは、黙って耐えるか、体制に背を向けるかの二択である。正義なき国に未来はあるのか?
中国では近年、前代未聞の異常な「ネット告発ラッシュ」が起きている。背景には、通常の行政ルートでは全く取り合ってもらえず、逆に報復を受けるという中国特有の構造的問題がある。
元県長の妻は裁判官の不正を、現職警官は上司からの圧力や自身に着せられた濡れ衣を訴え、裁判官は高官の巨額収賄や不正を暴き、それぞれ詳細な証拠と共にSNSを通じて世に公表した。
他にも、性被害を受けた大学生や学歴を盗用された市民など、実に各界の人たちは、相次いで自身が受けた苦しみや屈辱などの不当な扱いに対してネットで発信した。
しかし、その内容が、当局の敏感な神経に触れるようなものであればそもそも投稿できないか、運よく無事公開できたとしてもいずれは検閲にひっかかり抹殺されるのだ。内容や事情によっては、投稿者のアカウントも、身の安全もただでは済まない場合もある。
自らの身分証を手に掲げて、モザイクなしでその顔をネットに晒して、不当性を涙ながらに訴えるのだが、ほかに手があるならばそのような真似などするはずがない。それでも、中国のSNSにはそのような投稿があふれている。
正義を求める声が、法の外でしか響かない国。それはもはや国家ではなく、恐怖と沈黙で成り立つ檻である。
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