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「帰化のほうが永住より容易なのはおかしい」 法相 制度の見直しに言及

2025/05/14
更新: 2025/05/14

外国人が日本に長く住み続けるには、原則として「永住」か「帰化」のいずれかの制度を選択する必要があり、永住は外国籍のまま在留する資格で、帰化は日本国籍を取得して日本人になることを意味する。法的にも帰化は永住より重い決断と位置づけられている。

5月12日の参議院法務委員会で、日本維新の会・柳ケ瀬裕文議員は「永住は厳しいからとりあえず帰化を取っておくという人が非常に増えている。由々しき事態だ」と指摘。具体的には、「永住には10年の在留要件があるのに対し、帰化は5年で申請できる。制度設計として明らかに逆転している」と述べ、見直しの必要性を訴えた。

これに対し法務省は、永住の10年要件について「1998年のガイドライン改正によるもので、長期的な定住実績を判断するため」と説明。一方、帰化については「1899年の旧国籍法を踏襲し、1950年の現行法でも5年在住要件は維持されている」として、歴史的経緯の違いを強調した。

また、審査時に確認する税・社会保険料の年数についても、永住申請では、税金は過去5年、社会保険料は過去2年分を確認するのに対し、帰化ではいずれも過去1年分とされている。この運用の差にも柳ケ瀬氏は疑問を呈し、「永住の方が厳しい審査を経ているにもかかわらず、帰化の方が簡単に国籍を取得できるという逆転は、是正するべきだ」と強く主張した。

鈴木法相は、「制度の成り立ちは異なるが、帰化の方が永住より容易であるという状況があるとすれば、強い違和感を覚える」と明言。「双方とも厳格な審査が必要であり、制度の整合性の観点からも見直しは必要だ」と述べ、運用改善も含めた検討に前向きな姿勢を示した。

議論はさらに、帰化後の取り消し制度の不備にも及んだ。柳ケ瀬氏は、「日本では一度帰化すれば、たとえ反社会的言動や憲法違反的行為があっても、取り消す制度がほとんど存在しない」と問題を提起。今後は「戦略的帰化」の動きが強まる可能性にも懸念を示した。

「例えば10万人、20万人単位で中国からの帰化が進めば、参政権や被選挙権を持つ者が地方政治の中枢に入り、政治的影響力を持つ事態も想定される」とし、国家としての安全保障上の課題になりかねないと警鐘を鳴らした。

その上で、「日本では帰化の取り消しに関する明確な法的要件や手続きが整備されておらず、どのような場合に取り消しが可能か、無国籍となるリスクがある場合の対応も明記されていない」とし、「制度として不備があり、極めて重大な問題だ」と強調し、帰化の取り消し要件や関連手続きの整備を進めるべきだと訴えた。

これに対し、法務省は「詐欺など重大な不正行為があった場合に限り、公益と本人の不利益を総合考慮して帰化を取り消すことは可能」としつつ、「原則としては極めて慎重に判断されるべき」との見解を示した。

さらに柳ケ瀬氏は、「イギリスでは2014年の法改正により、無国籍になる場合でも、国家の安全を脅かす帰化者には市民権剥奪が可能になった」と紹介。二重国籍を認めていない日本においても、国益に反する帰化者への対応を明文化すべきと主張した。

鈴木氏は、「帰化は、日本人としての包括的な地位を付与するものであり、安全保障上、極めて重要な判断だ」と述べた。「イギリスでは、帰化にあたって、従来の国籍を放棄することは、立法上不要となっている」としたうえで、「無国籍者となる可能性を含め、慎重な検討が必要だ」として、制度整備が容易でない事情を説明した。

「むしろ帰化の“入り口”である申請審査段階を厳格化することが重要だ」との認識を示し、帰化後の取り消し制度を含めて、必要に応じて他制度との整合性も踏まえながら検討を進める考えを明らかにした。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。