アメリカのトランプ政権は、人種差別や反ユダヤ主義への対応を理由に、ハーバード大学との全連邦契約(総額約1億ドル)の打ち切りや、さらに連邦資金の凍結や留学生受け入れ停止など、同大学への圧力を強化中だ。
1億ドル規模の契約見直し GSAが各機関に通達
アメリカ総務管理局(GSA一般調達局)によると、ハーバード大学は、連邦政府機関と30件、総額約1億ドルの契約を締結していた。GSAの広報担当者は「大紀元時報」に対し、5月27日付でこれらの契約に関する通知を各機関へ送付する予定であると明らかにした。
通知の目的は、「重要性の低いプロジェクトは随時打ち切り、重要なものは他の供給業者へ移管することを検討する」ことにある。通知文では「連邦資金の受給は権利ではなく特権である」と明記されたという。
アメリカ総務管理局(GSA)局長ジョシュ・グルエンバウム氏は、全連邦機関に対し、ハーバード大学との契約を精査し「非重要」な案件は終了、必要に応じて他の供給業者へ引き継ぐよう指示した。
「連邦政府との契約は単なる契約上の義務ではなく、納税者の資金を託された重大な責任である」と通知文は強調し「政府は、非差別原則と国家利益を推進する供給業者・請負業者に予算を配分する責任がある」と記されている。
GSAは全連邦機関に対し、ハーバード大学およびその関連機関との契約について、打ち切りや移管の是非を審査するよう支援し、全ての契約は「各機関の戦略的優先事項を断固として支持・推進する」ものでなければならないと強調した。各機関は6月6日までに、各契約の処理状況を報告する義務がある。
連邦資金26億ドル超を凍結 国際学生の受け入れも停止
トランプ政権は、既にハーバード大学への26億ドル超の連邦資金を凍結し、国際学生の受け入れ資格も停止した。新たな補助金申請も認めていない。ホワイトハウスは、ハーバード大学が反ユダヤ主義への対応を怠り、入学選考や学生生活において、人種差別を継続中だと非難し大学側に改革を迫った。
通知文では、「ハーバードは、入学選考や学生生活のその他の面で、人種差別的な行為を継続中だ」と指摘。連邦最高裁で争われた「学生公平入学訴訟(Students for Fair Admissions v. Harvard)」の統計を引用し「学業成績上位10%の志願者のうち、アフリカ系の合格率は56%、ラテン系31%、白人15%、アジア系13%」とし、これらの差異を「衝撃的」と批判した。最高裁は、ハーバードが長年にわたり、人種を基準とした入学選考を行ってきたことを厳しく非難した。
しかし通知文は「ハーバードは今なお改革の意思を示していない」と指摘。新入生向けに「中学レベルの数学」補習コースを設けたことを「学力ではなく差別的要素を優先した結果」と批判した。
雇用・昇進・給与でも差別の疑い 学内誌にも批判
通知文ではさらに、ハーバードおよびその関連機関が人事採用、昇進、給与面で1964年公民権法第7章に違反し、体系的な差別待遇が存在する可能性を指摘した。「ハーバード・ロー・レビュー(法学部の学術誌)」において、論文選考や編集者選定の過程で平等原則が守られていないと批判した。
また、ハーバード大学が非差別原則や国家的価値観を軽視したとし、具体例として、ハーバード・ロー・スクールはユダヤ人学生への暴行で起訴した抗議者に、6万5千ドルの奨学金を与え、同じ事件の別の関係者を神学部の卒業式代表に選出したことを挙げた。通知文は「こうした対応は学生間の暴力を容認、あるいは黙認するものであり、指導者としての重大な失態あるいは無知に基づく意図的な加害行為である」と厳しく非難した。
外国人学生情報の提出拒否 政治的中立性にも批判
国土安全保障省のクリスティ・ノーム長官は先週、ハーバード大学は外国人学生の違反情報の提出に応じていないと指摘した。政府は過去5年間で6種類の情報(懲戒記録や抗議活動映像など)を72時間以内に提出するよう求めたが、大学側は未対応のままであった。
ホワイトハウスは、ハーバードに対して「アメリカの価値観に敵対的」と見なされる国際学生の受け入れ停止も要求し、さらに、ハーバードなどの大学が「リベラル寄りに偏り過ぎている」と批判して多様な視点や言論のバランス確保を求めた。
ハーバード大学の反論と法廷闘争
ハーバード大学のアラン・ガーバー学長は先月「本学は独立性と憲法で保障された権利を放棄しない」と表明。4月には、トランプ政権を相手取り、22億ドルの連邦資金凍結の撤回を求めて提訴したが、これに対し政権側は、さらに4億5千万ドルの資金を追加で凍結した。
先週、トランプ政権はハーバードの、国際学生受け入れ資格を取り消したが、連邦裁判所が一時差し止めを命じ、現在も訴訟が続いている。ハーバード側は、政府の一連の措置は「政治的圧力に屈しなかったことへの報復」だと主張した。
さらなる補助金撤回と免税地位の見直しも示唆
26日、トランプ大統領は自身のSNS「Truth Social」で「反ユダヤ主義的傾向が強いハーバードから、30億ドルの補助金を全米の技術職業学校へ振り向けることを検討中だとした。これはアメリカにとって極めて有意義な投資であり必要不可欠だ」と表明した。さらに、ハーバードの免税地位の取り消しも検討中なことを明らかにした。
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