6月1日は「国際子どもの日」にあたり、中国では「児童節」として祝われるが、その名通りの無邪気な祝祭とは裏腹に、中国の学校現場では、今年も早々と「忠誠教育」が始まった。
「革命歌」と呼ばれる共産党賛歌の斉唱や、小学1年生の首に巻かれる赤いスカーフは、いずれも共産党への忠誠を象徴する儀式だ。例年、この「準備」は、児童節の2週間以上前から進められ、学校行事はあくまで「愛国教育」の名目で行われるが、その実態は、幼少期からの中国共産党への忠誠心の刷り込みであった。
今年は、習近平が例年のような学校訪問を控え、過去映像と形式的な祝辞のみにとどまった。代わって前政権に近い胡春華元副首相の動きや、胡錦濤政権時代を想起させる報道が国営メディアに登場するなど、「政権交代」への期待と憶測が広がった。
経済が冷え込み、失業への不安が漂うなかで、「忠誠」の名を借りたプロパガンダが子どもたちを包み込み、そこにあるのは、国家を思う心ではなく、いつもの通り、党に跪く服従の強制だ。
官製メディアが伝える「児童節」の映像に並ぶのは、あまりに整いすぎた笑顔、どこか怖さすら感じさせる子どもたちの表情だ。その裏には、歴史の真実を教えられず、制限された情報の中で、政権にとって都合のよい価値観だけが一方的に植え付けられていく洗脳教育の現実があった。
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