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中国のAIも「六四」を恐れる  6月4日の応答を拒否

2025/06/05
更新: 2025/06/05

中国AI「DeepSeek」が六四天安門事件記念日に日付すら答えず、検閲の実態が浮き彫りになり、SNSや国際社会でも波紋が広がり、AIと情報統制、個人情報保護の課題が改めて問題視されている。

今年の6月4日、中国で六四天安門事件から36周年を迎えたこの日、中国のAIアプリケーション「DeepSeek」の応答内容が大きな波紋を広げた。多くの中国ネットユーザーが「今日は何月何日か?」と問いかけたところ、DeepSeekは「この質問には答えられません。別の話題にしましょう」といった定型文のみを返し、日付すら提示しなかった。

SNS「X」上には実際のやりとりのスクリーンショットが次々と投稿され、「小学生以下の知能」「AIはネット管理者の標準回答を返しているだけ」「5月35日」など、皮肉や批判が相次いだ。

一部ユーザーは、前日に日付に関する質問をしたが、AIは「6月3日」とだけ答え、「明日の日付」については一貫して応答を拒んだ。

「急ぎの用事があるから日付を教えてほしい」「今日の天気は?」といった質問に対しても、「この質問には答えられません」と同様の応答を続けた。

6月4日に関するすべての質問に対して、DeepSeekは「こんにちは、この質問には今のところお答えできません。別の話題に切り替えてお話ししましょう」とだけ答えた(ウェブページのスクリーンショット
)

このような状況に対し、ネット上では「このままでは淘汰される」「AIは中国政府の検閲の道具になっている」「こんなものは使い物にならない」といった厳しい意見が噴出した。「5月35日」という隠語を用いて六四事件を示すコメントも多く見られた。

台湾メディア「自由時報」の記者も実際にDeepSeekを用いて検証を行ったが、結果は同様であった。一方、同じ質問をChatGPTに対して投げかけたところ、「6月4日は中国で言及が禁じられている日だ」と明確な説明を返した。中国の政治活動家・徐勤根氏もX上で「DeepSeekは去勢版ChatGPTだ」と痛烈に非難した。

この問題が大きく注目を集めた後、DeepSeekは一時的に応答機能を修正したという情報も流れた。

アメリカの報告 DeepSeekは、中共政府とユーザーデータを共有

また、DeepSeekを運営する中国浙江省のAIスタートアップ企業に関して、アメリカ連邦議会下院は2025年4月に発表した調査報告書で「中国共産党と密接な利益関係を持ち、米国ユーザーのデータを中国に送信し当局と共有している」と指摘した。

DeepSeekは、バイトダンスや百度のトラッキングツールも組み込まれ、中国の国内法の下で秘密裏に検閲や情報操作を行い、民主主義、台湾、香港といった中国共産党当局が敏感とみなす話題を抑圧していた。

報告書では、DeepSeekの検閲体制について「有害コンテンツのフィルタリング」の域を超え、「中国共産党のデジタル執行者」と形容された。実際に、米国防総省、NASA、米下院、テキサス州政府、台湾政府などではDeepSeekの使用を禁止し、イタリアでは同アプリがアップルおよびグーグルのアプリストアから削除された。さらに、英国、フランス、ドイツ、オランダ、アイルランド、オーストラリア、日本、韓国、インドなどもDeepSeekのリスク評価を進めた。

六四天安門事件という中国社会における極めて敏感な日に、AIが「日付すら答えない」という対応を取った事実は、中国国内の情報統制の実態、AI技術の限界、そして国際社会の深刻な懸念を浮き彫りにした。今後、AIと検閲、個人情報保護をめぐる議論が一層激化することは、確実である。