ドナルド・トランプ米大統領は6月4日、ハーバード大学に関わる留学生および研究者へのビザ発給を停止する大統領公告に署名した。対象は、同大学に在籍するF(学生)、M(職業訓練)、J(交流訪問)ビザの保持者であり、この措置は即日発効した。公告は「国家安全保障上の重大な懸念」を理由とし、特にハーバード大学と中国共産党との関係を問題視している。
公告の主要内容
対象者:ハーバード大学に在籍する全外国人学生・研究者(F/M/Jビザ保持者)
効力:新規ビザの発給を停止し、既存ビザの取消権限を国務長官に付与
例外措置:国務省および国土安全保障省が「国益に合致する」と判断した場合に限り、適用除外
期間:6ヶ月間(延長の可能性あり)
背景:ハーバードと中国の「危険な関係」
ホワイトハウスの声明によれば、ハーバード大学は過去5年間で約10億ドル(約1438億円)の海外資金を受け入れ、そのうち1億5千万ドル(約250億円)以上が中国からの寄付に由来する。声明は、同大学が「中国人民解放軍の準軍事組織員に対する訓練を実施し、中共の軍事近代化に資する研究を中国人研究者と共同で行った」と指摘した。米下院の中国特別委員会も調査を通じて「ハーバードは中国共産党の『海外党校』と化している」と結論づけた。
トランプ大統領は公告の中で「ハーバードには憂慮すべき外国勢力との結びつきと過激化の歴史がある」と非難し、中共党首である習近平の娘が2010年代に同大学で学んだ事実にも言及した。
情報開示拒否が引き金
国土安全保障省が「外国人学生による違法・危険行為に関する記録」の提出を要請したにもかかわらず、ハーバード大学は3人分の不完全な資料しか提出しなかった。この対応が直接的な引き金となった。公告は、同大学が規律記録を適切に管理せず、政府による監視能力を損なったと批判し、FBIの「外国勢力が学術界を通じて機密情報を窃取し、プロパガンダを拡散している」とする警告を引用した。
反発するハーバード大学
ハーバード大学広報はロイター通信に対し「政府による学校運営への介入に対する報復である」と反論し、学術の自由と大学の自治権の侵害を訴えた。これに対しトランプ大統領は「優秀でアメリカを愛する学生は歓迎するが、過激派やトラブルメーカーは排除する」と強調した。
累積する対立の経緯
今回の措置は、以下のような一連の対ハーバード政策の延長線上にある。
- 連邦補助金凍結:同大学への数十億ドル規模の資金提供を停止
- 入学差別調査:白人、アジア系、男性、異性愛者に対する不公正な選考の疑いを調査
2023年、最高裁は同大学の「人種を考慮した入学選考」を違憲とする判決を下しており、今回の公告は「判決後も同大学が平等な教育機会を侵害している」と指摘した。
キャンパス内の治安悪化と反ユダヤ問題
ホワイトハウスは、「暴力犯罪を含む学内事件が急増している」と警告し、反ユダヤ主義的事件の煽動者の多くが外国人学生であると述べた。トランプ大統領も「アメリカ人学生の権利が脅かされている」と訴えた。
今後の影響
6か月間の暫定措置終了後、国務省と国土安全保障省が延長の是非について提言を行う予定である。他大学の留学生に対しては現時点で影響を与えないが、中国関連の研究機関に波及する可能性が懸念されている。国際教育研究所(IIE)のデータによれば、ハーバード大学には約5千人の外国人学生が在籍しており、そのうち約35%が中国出身者である。
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