14日ぶりに姿を現した習近平と、ベラルーシのルカシェンコ大統領の会見は、「家族的集まり」とされ、公式行事や成果もなく不可解な点が多い。中国政治の内幕に迫ってみよう。
習近平は、長らく姿を見せなかったが、6月4日になって、中国共産党の中枢所在地である中南海でルカシェンコ氏との会見に臨んだ。
ベラルーシの報道によれば、ルカシェンコ氏はこの会見について、「これは少人数の家族的な集まりであり、公式なものでも業務的なものでもない」と述べた。
また、代表団の一員であり、対中関係を担当する第一副首相ニコライ・スノプコフ氏も「これは家族ぐるみの友好的な昼食会であり、これこそが今回の訪問の目的である」と語った。
要するに、今回の訪問は、国賓訪問でも実務訪問でもなく、あくまで「家族的な集まり」で、つまり、ルカシェンコ氏は、他の目的ではなく、習近平との面会そのものを目的として北京を訪れたことになる。
しかし、中国側の対応を検証すると、この会見には少なくとも十の奇妙な点が浮かび上がった。
第一の点
今年1月27日に、ルカシェンコ氏は7度目の大統領当選を果たしており、今回の訪中は大統領を再任した以降初の訪問である。本来であれば、国賓または実務訪問として、正式な歓迎式典や業務会談、国賓晩餐会などが設けられるはずだ。ところが、今回は「家族的集まり」とされ、それらの形式をすべて省略した。なぜそのような形式をとったのかは不明である。
第二の点
ルカシェンコ氏は6月2日に北京入りしたにもかかわらず、習近平との会見は訪問最終日の6月4日、帰国直前になってようやく実現した。この日程は極めて不自然である。
第三の点
ルカシェンコ氏は習近平に対して「あなたの家に招かれたことを感謝している。当然、私の家にも来てほしい」と述べたが、習近平の家族や夫人の彭麗媛と会ったという情報は存在しないのだ。
第四の点
新華社は中南海での会見を伝えたが、具体的な会見場所については言及していない。過去には、習近平は瀛台(えいだい:清朝時代の離宮の一部)でオバマ氏やプーチン氏と会見しており、この場所には象徴的な意味がある。瀛台は中南海の中核に位置し、歴史的にも重要な場所であったはずである。
2014年11月11日には、オバマ氏と瀛台で会見し、予定を大幅に超える5時間に及ぶ対話を行った。また、2024年5月16日夜には、同じ瀛台でプーチン氏と会見し、散歩や茶会を含む丁寧な応接を行った。
だが今回は、会見場所が瀛台ではなかった。ベラルーシ側が公開した写真には、「純一斎」と記された扁額(へんがく建物の門などに掲げる横長の板に、名称・標語・詩文などを墨書または彫刻したもの)が写っており、これは中南海内部の豊沢園北西部に位置している。習近平は「私のオフィスはこの隣にある。ここであなたを迎えるのは初めてだ」と述べたという。つまり、会見場所はナンバー1建物の瀛台ではなく「純一斎」建物であった。
第五の点
オバマ氏やプーチン氏との会見時には、CCTVによる6分25秒と3分38秒の詳細な報道や映像記録が存在していた。だが今回の会見については、映像はわずか1分32秒にとどまり、出迎えや見送りの様子も伝えられていない。極めて簡略化された報道である。
第六の点
新華社の報道も極めて簡潔であり、「習近平が語った」段落と「ルカシェンコ氏が語った」段落のみで構成されている。実質的な内容は存在せず、経済・技術・文化・国際協力に関する協定も、共同声明も示されていない。
ルカシェンコ氏は北京まで来て、ただ習近平と旧交を温めただけという印象を残した。
第七の点
ベラルーシ側の報道では、今年8月末から9月初めの上海協力機構サミットと閲兵式に、習近平がルカシェンコ氏を招待したとされ、しかし、中国共産党のメディアはこれについて一切触れていない。なぜこの情報が伏せられているのか不明である。
第八の点
ルカシェンコ氏は3日間北京に滞在したにもかかわらず、中国共産党中央政治局常務委員6人の誰とも会っていない。とりわけ中央弁公庁主任であり「総務責任者」と称される蔡奇とは会っていない。唯一同席した高官は、外交部長である王毅だけである。
2024年のプーチン氏会見には蔡奇と王毅が共に同席していた。今回、蔡奇が姿を見せなかった理由は何か? 他の常務委員にも面会していないのか?
第九の点
今回の訪中に関して、北京側は事前に何の告知もしなかった。6月2日の到着時も新華社は報じず、『参考消息』が短く触れただけだった。
同日、AFP記者が中国外交部に詳細を求めたが、林剣報道官は抽象的な発言に終始し、具体的な説明を避けた。6月4日になってようやく新華社が会見の記事を発表した。なぜ中国メディアはこの訪問をこれほど控えめに扱ったのか?
第十の点
新華社が最初に会見のニュースを配信した際、写真を添付していなかった。2時間後にようやく写真が追加された。この対応の遅れも異例である。
ベラルーシ大統領として3日間北京に滞在したにもかかわらず、実質的成果は皆無に等しい。なぜルカシェンコ氏は、今回の訪問を行ったのか。
私の見解では、ルカシェンコ氏はプーチン氏の盟友であり、習近平の現状について情報を得る目的を持って、訪中したと考えられる。現在、国際社会では習近平の権力低下が囁かれており、プーチン氏やルカシェンコ氏が真相を確かめたかった可能性が高い。
結果として、ルカシェンコ氏は、中国側の一連の対応を観察することで、習近平の現状を把握できたであろう。
これら十の奇妙な点から判断するに、「習近平は形式上の権力を維持しているが、実際の主導権は温家宝や張又侠らに移っている」との説に一定の信憑性があり、習近平はすでに中国共産党内部で決定された筋書きに従い、象徴的存在として振る舞っているだけなのかもしれない。
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