政府は6月6日、首相官邸で第5回こども政策推進会議(会長・石破茂首相)を開催し、「こどもまんなか実行計画2025」を決定した。これは、少子化の進行や子どもを取り巻く厳しい現状を受け、出生数や合計特殊出生率が過去最低を記録する中、子どもや若者への支援を抜本的に強化するための新たな方針である。
石破首相は会議で、「昨年の出生数は68万6,061人と過去最少、合計特殊出生率も1.15と過去最低となった。多くの人が子どもを持ちたいという希望を実現できていない現状を重く受け止め、少子化に歯止めをかける対策に全力で取り組む」と述べた。また、婚姻数が微増したことにも触れ、こうした動きを一過性で終わらせない重要性を強調した。
また、石破首相は、少子化の背景には若い世代の将来への不安があると指摘し、その解消のために若い世代の所得確保に取り組む考えを明言した。具体的には、「最低賃金を2020年代に全国平均で1500円に引き上げる」という政府目標の実現に向けて努力する方針を示している。石破首相は「全体で1%程度の実質賃金の上昇を定着させることに全力を尽くす」と述べ、最低賃金引き上げの目標達成に強い意欲を示した。

今回の実行計画は、「こども基本法」に基づく「こども大綱」のもと、全ての子ども・若者が心身の状況や置かれている環境にかかわらず、幸せに暮らせる「こどもまんなか社会」の実現を目指すものだ。政府は約400の子ども施策を一体的に推進し、毎年6月ごろに計画を改定、施策の点検と見直しを続ける。
計画の重点は三つの領域に置かれる。第一は、困難に直面する子ども・若者への支援であり、自殺防止や貧困対策、障害児や医療的ケア児への早期支援の強化が盛り込まれた。特に、増加傾向にある小中高生の自殺や、いじめ、不登校、児童虐待への対応が急務とされ、学校や教育委員会と福祉・医療関係者の連携強化、地域ぐるみの支援体制の構築が進められる。
第二は、未来を担う子ども・若者へのより質の高い育ちの環境の提供と、少子化対策の推進である。若い世代の所得向上や、出産費用の自己負担無償化、高校無償化の検討など、経済的な不安の軽減を目指す施策も盛り込まれている。
第三は、「こどもまんなか」の基礎となる環境づくりの推進で、子どもや若者の意見を政策に反映させる仕組みや、災害時の子どもの居場所づくりなど、多様な視点からの環境整備が進められる。
政府は今後、施策の効果検証を行い、出生数や婚姻数、子どもの幸福度の指標にも注目しながら、計画の着実な実施を目指す方針だ。
石破首相は「三原大臣を中心に、あべ文部科学大臣や福岡厚生労働大臣を始めとする、全ての閣僚が一丸となって『こどもまんなか実行計画2025』を具体化していただくよう、お願いいたします」と述べ会議を締めくくった。
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