中国・北京で続く豪雨とダムからの放流により、北京市をはじめ各地で大規模な洪水が発生した。
北京市当局は7月28日までに「死者30人」と発表したが、本紙の現地取材によれば、実態はそれをはるかに上回る深刻さだという。

北京市懷柔(かいじゅう)区孫胡溝村(そんここうそん)では、村書記(トップ)夫妻を含む4人が水に流され、さらに300人以上が避難できず山中に取り残された。現在は連絡も取れず、道路も完全に寸断された状態だという。29日朝、村民は本紙に対し「政府はうそつきだ! 発表した死亡者数なんて全然あてにならない。うちの村の惨状はまったく報道されていない」と怒りをあらわにした。

災害の引き金となったのは、連日の記録的豪雨と、複数ダムの同時放流である。これにより下流域の村落に大きな被害をもたらした。道路や通信網は寸断され、多くの住民が孤立し、一部の村では避難が間に合わず、水かさが一気に増した山間部では「最後の電話」の後に消息を絶った住民も多い。

公式発表によれば、北京では道路31か所が損壊し、136の村で停電し、通信も断絶し、基地局1800基以上が停止して、8万人以上が避難したという。

いっぽう、北京市民や専門家の間では、「都市部を守るために農村が犠牲にされた」との批判も出た。弁護士の劉明氏は本紙に対し、「ふだんは下流に水が足りなくてもダムの放水を渋るのに、いざ大雨が降ると今度はダムを守るために一気に放流する。その結果、下流の住民が大きな被害を受けた。これは中国共産党が自分たちの利益を最優先している典型だ」と批判した。

政府は災害の原因を「強い雨」とするだけで、ダムの放流には一切触れていない。
(北京市の被災状況、2025年7月27日、28日)
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