「子どもたちはどこへ消えたのか。そして誰がその帰り道を閉ざしたのか」――ある母親の悲痛な問い
この夏、中国各地で10代から20代前半の若者が次々と行方不明になっている。7月だけでもSNS上には138件以上の失踪情報が投稿され、その多くが学生だった。「高収入」「海外就職」「無料旅行」などの甘い誘い文句に引き寄せられ、最後の位置情報が雲南省(ミャンマーとの国境)だったという投稿も目立つ。最年少の失踪者はわずか14歳だった。
経済的困窮や就職難に直面する若者たちは、犯行グループにとって格好の標的となっており、SNSや求人アプリを通じて巧みに狙われている。生還者の証言によれば、彼らはミャンマーやカンボジアなどにある「詐欺園区」と呼ばれる無法地帯に売られ、パスポートや携帯を没収された上で詐欺業務を強いられていた。中には、家族に対して身代金を要求されたケースもある。

救出された例もわずかに存在する。安徽省の高校生・胡一嘯(こ・いっしょう)さんは南京から雲南へ向かった後に消息を絶ったが、父親の必死の捜索により7月25日に帰国を果たした。また、未成年と判断され解放された大学生・彭宇軒(ほう・うけん)さんも生還した。一方で、湖北・山東・貴州・広東などでは今も多数の若者が行方不明のままで、公的な捜索体制は脆弱。家族は手がかりもないまま、自力での捜索を強いられている。

さらに、失踪者家族の最後の頼みだった「中国尋親網」が7月中旬に突然閉鎖された。25年間、失踪情報を共有し再会の場となってきたこのサイトが、当局の説明もないまま姿を消し、家族たちは希望の光を失った。

若者の大量失踪という異常事態に、高校生・胡鑫宇(こ・きんう)さん失踪事件の不可解な経緯を引き合いに、臓器収奪との関係を疑う声も高まりつつある。「子どもたちはどこへ消えたのか。そして誰がその帰り道を閉ざしたのか」――ある母親の悲痛な問いが、沈黙を続ける国家に突きつけられている。





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