英国放送協会(BBC)は11月13日、制作したドキュメンタリー番組で誤解を招く編集を行い、米国のトランプ大統領の演説内容をつなぎ合わせて放送したことについて、トランプ氏に謝罪した。しかし、損害賠償金の支払いには応じない考えを明らかにした。
BBCはまた、問題となった番組を今後放送しない方針を決定した。これに先立ち、トランプ氏の弁護団はBBCに宛てた書簡で、報道の撤回と謝罪、そして「トランプ氏が被った損害への適切な賠償」がなされない場合、10億ドル(約1500億円)規模の損害賠償訴訟を提起すると警告していた。
BBCの報道官は14日、「BBCの弁護士は11月9日に書簡を受け取り、トランプ大統領の法務チームに書面で回答した」と明らかにした。
さらに同報道官は「BBCの会長サミール・シャー(Samir Shah)はホワイトハウスに直接書簡を送り、2021年1月6日の演説映像を編集した件について、トランプ大統領に対し、自らとBBCを代表して深い謝意を表明した」と述べた。
報道官は続けて、「BBCはこのドキュメンタリーを自社のいかなるプラットフォームでも再放送する予定はない。映像の編集方法については深く遺憾の意を表する一方で、BBCは名誉毀損の主張には断固反論する立場を示している」とコメントした。
問題となったのは、BBCの看板番組「パノラマ(Panorama)」で放送されたドキュメンタリーである。番組では、2021年1月6日に発生した米連邦議会議事堂襲撃事件当日に行われたトランプ氏の演説の一部を、異なる場面の発言を切り合わせ、あたかも連続して発言したかのように編集していた。その結果、視聴者にはトランプ氏が暴動を扇動したかのような印象を与えたとされる。この番組は、2024年大統領選挙の1週間前に放送された。
トランプ氏の弁護士は、BBCによる編集を「名誉を傷つけるフェイクニュース」だと主張し、フロリダ州の名誉毀損法に違反するとしている。
また、トランプ大統領は11月11日に放送された米FOXニュースの番組「イングラハム・アングル(The Ingraham Angle)」に出演し、この件について言及した。トランプ氏は「BBCが自分の演説を公衆を欺く方法で編集し、発言を『過激に』聞こえさせた」と述べ、BBCを提訴する可能性があると示唆した。
BBCはすでに今回の件を「判断の誤り」だったと公に認めており、その後、BBCのティム・デイヴィ(Tim Davie)総裁と報道部門責任者デボラ・ターネス(Deborah Turness)氏が共に辞任した。
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