どれほど絶望すれば、母親はその手で我が子を落とし、自分も後を追うということになるのか。
12月3日、中国・杭州市を走っていた自動車のドライブレコーダーが、陸橋で起きた悲惨な一瞬を捉えた。
映像には、橋の上にいた女性が幼い子どもを抱きかかえ、すぐ下の車が行き交う車道へ落とし、その直後に自らも子のあとを追うように飛び降りる瞬間が映っていた。
(母親が幼児を橋から落とし自らも続いた瞬間〈モザイク処理済み〉、2025年12月3日 浙江省杭州市)
中国では、生活がわずかに崩れ始めると、あっという間に立て直せなくなる。仕事は減り、物価は上がり、誰に相談しても助けは来ない。むしろ問題を口にすれば厄介者扱いされ、警察が来ることさえある。人々は助けを呼ぶことを諦め、静かに追い詰められていく。
だからこそ、この母親の行動を「理解できない」と切り捨てる人は少ない。SNSには「ここまで追われたら、自分も壊れる」「この国で子どもを育てることがどれほど過酷かわかる」という声が並ぶ。
悲劇への深い同情とともに、「なぜこんな国で親がここまで追い詰められるのか」という怒りが広がっている。
中国で、幼い子を道連れに親が自殺する事件は、この数年で珍しいものではなくなった。生活費に困り、借金に追われ、行政にも社会にも頼れない。家族だけで抱え込み、出口のない日々に押し出されるように、限界へ向かっていく。
今回の母親も、長いあいだ助けを求め続けたに違いない。母は強い。子どものために希望が一筋でも残っていたなら、こんな選択をするはずがない。
どれほど絶望すれば、母が自らの手で我が子を道連れにするのか。
この問いに向き合わない限り、同じ悲劇は中国社会の中で繰り返される。


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