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中国 警察介入下でも抗議続く

中国・深センの電子工場で大規模ストが継続中【動画あり】

2025/12/12
更新: 2025/12/12

中国・広東省深セン市の電子機器メーカー、易力声科技(深セン)有限公司で、工場労働者による大規模ストライキが1週間以上続いている。

表向きの発端は「残業の全面停止」だったが、労働者たちは、会社が工場を海外に移転し、その際に本来支払うべき補償金を減らすため、意図的に残業を全面停止したと受け止めている。その認識が、抗議に踏み切らせた最大の理由である。

 

抗議現場の様子。工場前に集まる労働者と、治安維持のため配置された警察官。2025年12月、中国・広東省深セン市(映像よりスクリーンショット)

 

「なぜストに踏み切ったのか」

易力声は11月末、「海外需要の減少」を理由に、2026年3月末まで残業を全面的に取りやめると従業員に通知した。

この措置により、多くの製造現場で働く労働者の手取りは月2千元前後(約4万円)にまで落ち込み、深セン市が定める最低賃金2520元(約5万円)を下回る事態となった。

深センでは基本給が低いため、残業代を前提に生活が成り立っている労働者も少なくない。そのため「この収入では生活できない」「家賃すら払えない」と不満が一気に広がり、12月4日、製造現場で働く労働者約3千人がストライキに踏み切った。

 

抗議現場の様子。工場前に集まる労働者と、治安維持のため配置された警察官。2025年12月、中国・広東省深セン市(映像よりスクリーンショット)

 

こうした中で、労働者の間では別の見方が強まっていった。

易力声は、生産の一部を人件費の安いベトナムへ移転する計画を進めているとされており、その動きと残業禁止が結び付けて受け止められたのである。

中国では、工場を移転したり、実質的な人員整理を行う場合、これまでの給料を基準に、勤続年数に応じた補償金を支払う決まりがある。このため、移転前に残業を止めて給料を下げておけば、将来支払う補償金の額も少なくて済む。

労働者は、今回の残業禁止を、海外移転に備えて補償金を減らすための措置だと受け止めている。

 

抗議現場の様子。工場前に集まる労働者、2025年12月、中国・広東省深セン市(映像よりスクリーンショット)

 

さらに従業員の間では、会社が注文をベトナムなど海外の工場に回す一方で、国内の工場では給料を生活できない水準まで引き下げ、働き続けられなくなった人を自分から辞めさせようとしているのではないかという強い不信感が広がっている。

従業員が「自主的に辞めた」となれば、会社側は勤続年数に応じた補償金を支払わずに済む。そのため、給料を下げたり、勤務条件を悪化させることで従業員を追い込み、自主退職に導く手法は、中国企業では珍しくない。

こうした仕組みを理解した労働者にとって、残業禁止は単なる経営判断ではなく、将来の補償を奪われかねない重大な問題だった。それが、警察の介入を受けても抗議が収まらない理由となっている。

動画はこちらをクリック

 

追い込まれる工場労働者

抗議が始まった12月4日以降、工場周辺には連日、多数の警察が動員された。
9日には抗議に参加していた労働者が警察に連行される場面も確認され、現場は一時緊迫した空気に包まれた。

しかしその夜、千人以上の労働者が工場の正門前に集まり、拘束された仲間の解放を求めて抗議を続けた。長時間にわたる対峙の末、警察側は拘束していた労働者を解放し、人々は深夜になってようやく現場を離れた。

それでも、抗議は終わらなかった。一部の労働者は生活のため職場に戻ったものの、多くは引き続き工場周辺に集まり、会社側の対応を注視している。

易力声はかつて「万人規模の工場」と呼ばれたが、現在の従業員数は約3千人にまで減っている。残っているのは、10年以上働き続けてきた中高年の労働者が中心だ。

 

抗議現場の様子。工場前に集まる労働者、2025年12月、中国・広東省深セン市(映像よりスクリーンショット)

 

こうした労働者にとって、海外移転と補償の有無は死活問題である。年齢的に新たな職を見つけるのは容易ではなく、補償がなければ生活の見通しが立たない。

「若いころからここで働いてきた。いま辞めさせられたら、次はない」

現場では、そんな声が繰り返し聞かれる。

 

抗議現場の様子。工場前に集まる労働者と、治安維持のため配置された警察官。2025年12月、中国・広東省深セン市(映像よりスクリーンショット)

 

今回のストライキは、単なる賃金不満ではない。低い基本給、残業に依存した生活、そして海外への生産移転。中国の製造業が長年抱えてきた問題が、ひとつの工場で一気に表面化した形だ。

働き続けても暮らせない。辞めれば、長年の労働に対する補償も失われるかもしれない。その板挟みの中で、労働者は声を上げるしかなかった。

経済成長を支えてきた現場の人々が、最後に頼ったのはストライキという手段だった。深セン市の工場前で続く抗議は、中国経済の足元で広がる不安と行き詰まりを静かに映し出している。
 



中国・深センで3千人ストライキ 残業禁止で生活崩壊の危機【動画あり】

中国・深センの工場で約3000人がストライキ。突然の残業禁止で1000元台(約2〜3万円弱) まで落ち込み、生活が成り立たなくなったためだ。現場には武装警察が投入。テレビが宣伝する“繁栄中国”とは違う素顔がここにある。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!