中国 感謝の言葉まで「ぜいたく自慢」とされたキャノン裁員騒動

補償金に「感謝」の声 キヤノン工場閉鎖が浮き彫りにした日中企業の待遇差

2025/12/26
更新: 2025/12/26

「ありがとう、キャノン」。
そう書き添えられた動画が、ほどなく中国のネット上から姿を消した。

中国にある日系企業・キヤノンの工場閉鎖をめぐり、解雇された従業員が受け取った補償金を紹介する動画が相次いで投稿された。いずれの動画にも共通して添えられていたのは、「感謝」という言葉だった。

広東省中山市に所在するキヤノン(中山)オフィス機器有限会社は11月21日、レーザープリンター市場の縮小を理由に、生産および事業活動の終了を決定した。提示された補償案は、実際の勤務年数に基づいて支払われるもので、その水準は中国では異例といえる。生産停止に伴い人員整理は行われたものの、従業員からは「最大限の誠意を感じた」「感謝しかない」といった声が相次いで寄せられた。

 

キヤノン(Shutterstock)

 

交流サイトには、16年勤務で約46万元、組立ラインの責任者で約88万元、清掃業務に12年間従事した従業員でも約30万元を受け取ったとする投稿が相次いだ。中でも、20年働いて約63万元(日本円でおよそ1400万円前後)を受け取ったと語る動画は、大きな注目を集めた。

ところが、その動画は短時間のうちに閲覧制限がかけられた。理由として示されたのは、「ぜいたく自慢に当たるおそれがある」という判断だった。補償金額を事実として伝えただけの内容に対し、ネット上では「単なる退職金の話ではないか」「感謝の気持ちを述べただけだ」と、疑問や反発の声が広がった。

多くの人々がこの話題に引き寄せられた背景には、国内企業との著しい格差がある。長時間労働や突然の解雇が珍しくない中国社会において、外資系企業の対応は鮮烈な対照をなした。不満や怒りではなく、「感謝」の言葉が並んだこと自体が、その違いを際立たせている。

長年働いた結果を、数字として示すことすら規制の対象となる。比べられて困るのは、労働者ではないはずだ。

 

キャノン中山工場の裁員補償を伝える投稿。
感謝の言葉が並ぶ中、動画は「ぜいたく自慢」として制限された。(中国のネットより)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!