「世界遺産に、まるで刑務所のような有刺鉄線が必要だったのか」
中国・山東省の世界遺産・泰山を囲む全長約135キロの有刺鉄線が、中国国内で大きな批判を浴び、管理当局は撤去を決めた。
泰山は、古くから中国人にとって特別な山だ。歴代皇帝が天に祈る儀式を行った場所として知られ、「泰山北斗」という言葉は、その分野で最も尊敬される人物を指すほどである。また、「泰山より重い」という表現は、命や責任の重さを語る時にも使われてきた。
そんな名山が、有刺鉄線で囲まれた。しかも、その距離は約135キロに及ぶ。
地元住民や登山愛好家によると、有刺鉄線には野ウサギやアナグマ、キツネ、野鳥などが絡まり、命を落とすケースが相次いでいたという。現場では、近づくと腐敗臭が漂う場所もあったと話している。
当局は当初、「森林火災の防止」「害虫対策」「無断入山の防止」のために設置したと説明した。
しかし、中国メディアが現場で検証したところ、鋭い刃はペットボトルを簡単に切り裂く一方、火の粉や飛来する害虫を防ぐ効果はほとんど期待できないと指摘。「本当に防火対策なのか」と疑問の声が相次いだ。
SNSでは、「自然を守るどころか、動物を傷つけている」「火事になったら消防隊はどう通るのか」「景観まで壊してしまった」など批判が噴出。
関連話題は中国SNSでトレンド入りし、世論の高まりを受け、現地の管理委員会は7月2日、「7月10日までにすべて撤去する」と発表した。
一方で、中国メディアは、この事業には約6億円が投じられたにもかかわらず、環境への影響評価や景観への配慮、住民への説明が十分だったのか疑問視している。さらに、記者が問い合わせても担当部署がはっきりせず、行政機関同士で責任を押し付け合う場面もあったという。
中国で「重さ」の象徴とされてきた泰山。その山に張り巡らされた有刺鉄線は、撤去されてもなお、公共事業の軽さを問い続けている。

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