ソフトバンクグループ(SBG)の子会社で、電力インフラ事業を手がけるSB Energy, Inc.は9月1日(米国時間)、新規株式公開(IPO)に向けた登録届出書「Form S-1」を米証券取引委員会(SEC)に公開提出した。
上場先として、上場先はナスダックのグローバル・セレクト・マーケットおよびナスダック・テキサスで、ティッカーはSBEを予定している。売り出す株式数や想定価格帯は現時点で決まっていない。
日米の金融大手が共同主幹事
共同リード・ブックランニング・マネージャーには、J.P. モルガン、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、シティグループの米金融大手4社と、みずほが名を連ねた。
米国市場での上場に加え、英国の個人投資家が参加できる公募も予定しており、Marex Financialが運営するプラットフォームを通じて株式を販売する計画だ。
今後は市場環境や米証券取引委員会による登録届出書の審査を踏まえ、上場手続きを進める。
AI普及でデータセンターの電力需要増加
ソフトバンクグループが米国の電力インフラ事業を強化する背景には、生成AIの普及に伴うデータセンターの電力需要の増加がある。
日本の財務省が公表したコラム「海外経済の潮流」によると、通常のインターネット検索に必要な電力量は1回当たり約0.3ワット時(Wh)であるのに対し、生成AIへの問い合わせでは約2.9Whと、約10倍の電力を消費する。
国際エネルギー機関(IEA)の特別報告書「Energy and AI」の2025/2026年更新版では、世界のデータセンターによる電力消費量が、2025年の485テラワット時(TWh)から、2030年には約950TWhへほぼ倍増すると予測している。これは日本の年間総発電電力量に匹敵する規模である。
AIに特化したデータセンターの電力消費量は、同じ期間に3倍へ増える見通しである。2030年までの電力需要の増加分のうち、米国では約半分、日本では半分以上をデータセンター需要が占めると予測されている。
米国電力中央研究所(EPRI)の分析では、米国内のデータセンターの年間電力消費量は2024年の184TWhから、高成長シナリオでは2030年に794TWhへ増加する。
送電網への接続に最大7年
データセンターの建設と、電力インフラ整備に必要な期間の違いも課題となっている。
データセンターの建物は1~3年程度で建設できる一方、発電所や送電網などの整備には3~15年程度を要する。データセンターが集中するバージニア州では、送電網への新規接続までに最大7年の待機時間が生じている。
こうした接続の遅れは、電力料金の上昇や投資計画の遅延、住民による反対運動につながっている。メーン州では、データセンターの新設を一時停止する法案も議論されている。
OpenAIと計10億ドルを投資
そうした中、ソフトバンクグループは、AI向け半導体だけでなく、データセンターや発電設備を含む物理的なインフラの確保を進め、人間の知能を超える「ASI(人工超知能)」の実現を目指している。
SBGとOpenAIは、SB Energyにそれぞれ5億ドル、計10億ドルを投資することで合意している。資金は、テキサス州におけるOpenAI専用のAIデータセンターの建設・運営と、その電源の確保に充てられる。
SB EnergyのIPO計画は、AI向けデータセンターと電力インフラの整備を進める中で行われるものである。
オハイオ州で80兆円規模の構想
ソフトバンクグループの孫正義代表は2026年3月、米オハイオ州で総額5千億ドル(約80兆円)規模のAIデータセンター構想を発表した。
計画では、送電網の混雑による影響を避けるため、データセンターに10ギガワット(GW)規模のガス火力発電所を併設する。原子力発電所10基分に相当する発電能力を確保し、データセンターで使用する電力を全て自前で賄う構想である。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、東芝、日立製作所、ゴールドマン・サックスなど、日米の主要企業21社がパートナーとして参画している。
AIの普及によって、デジタルインフラの拡大や経済成長と電力消費の増加が再び結び付く「リカップリング」が進むとの見方もある。日本でも、減少傾向にあった電力需要が増加に転じることを前提に、エネルギー基本計画の議論が進められている。
ソフトバンクグループは、半導体、データセンター、発電設備を一体的に整備し、AI事業に必要な電力を安定的に確保する方針だ。
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