8月31日、中国広東省東莞市の裁判所は、オランダの半導体メーカー、ネクスペリア(Nexperia B.V.)と傘下の設備会社が保有する中国子会社の一部持分を凍結した。対象額は最大約21億4千万元(約509億円)。訴訟は、ネクスペリアの中国親会社、聞泰科技(Wingtech)が起こした。
この対立は、オランダ政府が約1年前、聞泰科技とその創業者によるネクスペリアの経営支配を制限したことに端を発する。問題は中国とオランダの関係だけでなく、自動車や家電製品に使われる半導体のサプライチェーンにも影響を及ぼしている。
聞泰科技は今年5月、広東省東莞市中級人民法院に、ネクスペリア、オランダ子会社のアイテック(Itec B.V.)、ネクスペリア経営陣の複数のメンバーを提訴した。聞泰科技は、被告側がオランダによる「差別的な制限措置」を実施したと主張し、80億元の損害賠償を求めている。
聞泰科技は8月31日夜、東莞市中級人民法院が8月28日付の民事裁定で、ネクスペリアとアイテックが保有する一部持分の凍結を命じたと発表した。訴訟はまだ本案審理に入っていない。
発表によると、凍結対象は中国企業4社の持分で、ネクスペリアの無錫市と上海の半導体事業のほか、設備部門が全額出資する無錫市の子会社を含む。
措置は8月下旬から適用し、2029年8月まで続くという。
聞泰科技は、発表時点で裁判はまだ始まっていないと説明した。訴訟の結果には不確実性があるため、今回の訴訟が同社の財務状況や今期、今後の業績に与える影響は現時点で判断できないとしている。
中国共産党の裁判所が保全措置 ネクスペリアが声明
今回の動きを受け、ネクスペリアは8月31日、大紀元に声明を寄せ、中国共産党(中共)の裁判所による持分の保全措置は、ネクスペリアや子会社の日常の事業運営や経営に影響しないと説明した。
ネクスペリアによると、措置の対象は中国にある一部法人の持分に限られる。これらの法人は2025年10月以降、ネクスペリアの管理体制から外れて運営されており、同社は支配権を持っていない。現在のネクスペリアの事業運営にも関わっていないという。
また、法的手続きはまだ本案審理に入っておらず、財産保全は中国の民事訴訟における手続き上の措置にすぎないと説明した。聞泰科技の主張について、裁判所が最終判断を示したものではないとしている。
ネクスペリアは現在、裁判所の命令内容を確認し、今後の法的対応を検討している。
同社が発表した2026年第2四半期決算では、売上高、収益、キャッシュフローがいずれも大きく伸びている。また、中国以外の工場で生産の回復と能力増強を進めている。
第2四半期の売上高は世界全体で3億5560万ドルとなり、前四半期比18.4%増加した。中国以外の事業では、純利益と営業キャッシュフローもともに増加した。
ネクスペリアと聞泰科技の対立
対立が表面化したのは2025年9月。オランダ政府は、重要技術と供給網の安全を守ることを理由にネクスペリアに措置を講じ、聞泰科技による同社の経営支配を制限した。
その後、オランダの企業裁判所は、ネクスペリアの張学政CEOを職務停止とし、聞泰科技が保有する株式の議決権を独立した管理下に置いた。
張学政CEOは2020年からネクスペリアのCEOを務める一方、聞泰科技の創業者兼CEOでもある。
会社の提出資料によると、聞泰科技はオランダに本社を置くネクスペリアの法人を所有し、この法人が中国の一部子会社を支配している。
オランダ政府は、張学政CEOがネクスペリアの事業や知的財産をヨーロッパから中国へ不当に移転しようとした疑いがあると指摘した。こうした動きが、オランダやヨーロッパにおけるネクスペリアの重要技術、製造、研究開発能力を脅かす恐れがあるとしている。
対立が表面化した後、聞泰科技はネクスペリア中国の従業員に社内文書を送り、オランダ本社の指示に従う必要はなく、中国法人の業務方針に従うよう求めた。
文書では、ネクスペリア中国は中国企業として独立して運営し、意思決定を行うとしていた。
オランダ政府がネクスペリアへの介入に踏み切った後、中共当局もネクスペリアの中国事業に輸出規制を実施し、一部製品の出荷を停止した。
その後、中共とオランダの協議を経て、中国側は供給を再開し、オランダ側も関連する規制措置を停止した。
ただ、ネクスペリアと聞泰科技の間では、現在も経営権をめぐる争いが続いている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。