米国の納税者の資金はいかに中共軍を支えたか

2026/09/04
更新: 2026/09/04

論評

米議会の調査と独立機関の研究により、米国の大学が中国共産党(中共)政府や国防部門の人員を養成する一方、米国の納税者が国家安全保障上のリスクを生じさせるプログラムへの資金提供を支えていたことが明らかになった。

民主党と大学運営者は、中国人留学生が米国の高等教育にとって財政上の命綱であり、米国経済に年間約150億ドルをもたらしていると主張している。大学がこうした主張をする背景には、2008年以降の出生率低下による急激な入学者数減少への懸念がある。大学進学年齢の人口は、2025~2029年に15%減少すると予測されている。

しかし、この主張は、中国人留学生が大学にもたらすとされる資金の相当部分が、米国の納税者によって賄われているという事実を見落としている。また、こうした留学生の多くがもたらす国家安全保障上のリスクも無視している。留学生の中には、中共や中国共産党(中共)軍と直接のつながりを持ち、スパイ活動への関与が指摘された者もいる。

中共に関する米下院特別委員会は、主要な研究大学に在籍する中国人留学生が博士課程に極端に集中していることを明らかにした。博士課程の中国人留学生が授業料収入に占める割合は、わずか0.2%にとどまる場合がある一方、連邦政府の資金で運営される研究施設を利用していた。

調査対象となったある大学では、中国人留学生の25%超が納税者の資金による研究に携わっていた。別の大学では、中国人博士課程在籍者の半数が連邦政府の助成金を受け取っていた。大学側がこの仕組みを正当化する際に挙げる、授業料を全額負担する学部生とは異なる。実際には、科学、技術、工学、数学(STEM)分野の大学院研究者であり、中共軍と関係する教育機関の出身者が不釣り合いに多い。こうした人々は、連邦捜査局(FBI)が学術スパイ活動の主な担い手と指摘してきた層でもある。

米地政学リスク調査会社ストラテジー・リスクスの報告書によると、ミズーリ州立大学は2001~2018年、中国の国有企業や政府機関の管理職を養成する経営学修士(MBA)課程への受け入れルートを運営していた。受講者は1500人を超え、その多くが後に、中国の国防産業、戦略的サプライチェーン、監視分野で上級職に就いた。

中共政府の中国語文書は、この仕組みを「中米国家間協力事業」と表現していた。同様のプログラムが同じ時期にオハイオ州のライト州立大学でも始まっており、孤立した事例ではなく、これらの事業が中国共産党による、より広範な戦略だったことを示している。

学位を授与したのはミズーリ州立大学だったが、学生を選抜したのは大学ではなく、中共であり、中国の国有資産監督管理委員会などの国家機関が、入学基準や各期の受講者構成を管理していた。

四川省と山東省の募集文書では、政治的信頼性を求めていた。初期の通知では中共の正式な党員であることを要件とし、2018年の通知では高い水準の思想的・政治的意識を求めていた。プログラムへの応募者は、英語能力要件の免除など、入学審査で優遇措置も受けていた。

これらのプログラムの修了者には、中国最大の国有航空宇宙・防衛複合企業である中国航空工業集団(AVIC)と関係する幹部もいた。中国航空工業集団は、大統領令14032号と国防総省の「1260Hリスト」に基づいて中国軍事企業に指定されており、米国による投資規制と調達禁止の対象となっている。

報告書はこのほか、人工知能(AI)企業iFLYTEKの副社長も特定している。米商務省は2019年10月、新疆ウイグル自治区のウイグル人に対して使用された監視技術を提供したとして、同社をエンティティー・リストに加えた。

2017年6月25日、フランス・ルブルジェで開かれたパリ国際航空ショーに掲示された中国航空工業集団のロゴ(Eric Piermont/AFP via Getty Images)

報告書は、米国の監督体制に空白があることも指摘している。米議会と行政府は、STEM研究の窃取、中国人留学生への嫌がらせ、国防関連プログラムに在籍する軍関係の博士課程学生に注目してきたが、学位授与を伴う人材受け入れルート、中国国防産業からの参加者、こうしたプログラムを受け入れる地方の公立大学には、あまり注意が向けられてこなかった。

米下院特別委員会の報告書は主要研究大学6校を調査し、全ての大学が、中国の「国防七校」のいずれかに在籍した経験を持つ中国人を受け入れていたことを明らかにした。「国防七校」は、中共軍のための研究を主要任務とする教育機関である。

同委員会はまた、バイデン政権が大統領令10043号を執行しなかったことも明らかにした。同令は、軍と関係する研究に従事する中国人に対し、米国の査証を発給することを禁じていた。それと同時に、米国の納税者は、この国家安全保障上のリスクへの資金提供を支えていた。

ミズーリ州立大学の事例では、中国側の募集資料に3者による資金負担の仕組みが記されていた。10万8千ドルの授業料の半分を中国政府が負担し、学生が約2万7千ドルを支払い、残る4分の1は米政府の支援で賄われていた。

ある大学では、中国人大学院生が就くスタッフ職1139件のうち402件が、連邦政府の助成金または契約によって賄われていた。州の納税者や民間のプログラムは、さらに113件に資金を提供していた。同大学では、中国人大学院生の職務の36%超が、連邦または州レベルで米国の納税者によって賄われていた。

別の大学では、中国人大学院生2580人のうち1115人、すなわち43%が、大学院助手としての給与を主な資金源としていた。公立研究大学の大学院助手の給与は、その大部分が連邦政府の助成金と州の予算から出ている。

2025年5月29日、北京の海外留学仲介会社に掲示された、ハーバード大学を含む米国の大学のポスター(Jade Gao/AFP via Getty Images)

中国共産党と関係する留学生によるスパイ行為は、第1次トランプ政権以降、十分に記録されている。しかし、こうした研究者の多くが米国の納税者から資金提供を受けているという事実は、状況をさらに懸念すべきものにしている。

米司法省は2024年10月以降、ミシガン大学の学生、研究者、最近の卒業生のうち、少なくとも12人を、国家安全保障に関係する犯罪で訴追したが、これらの全員、中国籍であった。この中には、キャンプ・グレイリングで軍事演習を撮影しているところを発見された上海交通大学の交換留学生5人も含まれている。

FBIのカッシュ・パテル長官は2025年9月、上院での証言で、同年1月以降、スパイ活動または密輸に関与した外国情報機関の工作員59人が逮捕されたと明らかにした。また、FBIの全55地方支局で、中国に対する防諜捜査が進行していることを確認した。

米下院国土安全保障委員会は、米国における経済スパイ事件の訴追の80%で、中国政権に利益をもたらすことを意図した行為が申し立てられていると記録している。

米議会は問題を認識しているが、こうした人材受け入れルートをまだ閉ざしていない。中国共産党に関する下院特別委員会のジョン・ムーレナー委員長(共和党、ミシガン州)が起草した「The SAFE Research Act」は、外国の敵対勢力が支配する組織と連携する大学に対し、連邦政府によるSTEM分野の資金提供を禁じ、中共軍との関係の開示を義務付けるものである。米下院は2025年9月、同法案を国防権限法案の修正条項として可決した。しかし、210の教育機関が反対し、最終法案から削除された。

エリック・シュミット上院議員(共和党、ミズーリ州)が提出した「中国共産党から高等教育を守る法案」は、中共党員とその家族に対し、学生査証または交流訪問者査証の発給を禁じるものである。

「中国共産党のスパイ活動から国防研究を守る法案」は、戦争省の資金による研究を実施する大学が、2027年以降、懸念対象となる中国組織と契約することを禁止するものである。

いずれの措置も問題の一部にしか対処しておらず、どれも成立していない。このため、米国は中共によるスパイ活動に対して脆弱な状態に置かれている。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
経済学者、中国経済アナリスト。上海体育学院を卒業後、上海交通大学でMBAを取得。20年以上アジアに滞在し、各種国際メディアに寄稿している。主な著作に『「一帯一路」を超える:中国のグローバル経済拡張』(Beyond the Belt and Road: China's Global Economic Expansion)や『A Short Course on the Chinese Economy』など。