中国 AIを信じてAIを訴え、訴状もAIにお任せ

AIが選んだ埋葬日は不吉だった? 中国で珍裁判

2026/11/05
更新: 2026/11/04

困ったときはAIに聞く。仕事も勉強も人生相談も、今や何でもAIの時代だ。

しかし中国では、亡くなった母親の埋葬日までAIに相談し、ついには裁判沙汰になるという珍事件が起きた。

中国には、結婚や引っ越し、葬儀などで「縁起の良い日」を選ぶ伝統的な習慣がある。日本の大安や仏滅に似ているが、特に埋葬では、日取りや時間を間違えると、子孫にまで災いが及ぶと信じる人もいる。

信じない人からすれば「そこまで気にする?」と思うかもしれない。しかし、本人たちはいたって大まじめ。単なる日取りの問題ではなく、一族の運命がかかっていると考える人もいるのだ。

浙江省に住む男性は今年4月、90代の母親を亡くした。家族で埋葬日を相談したものの、意見が分かれた。そこで頼ったのが、普段から愛用している中国のAI「豆包(ドウバオ)」だった。

「母が今日亡くなりました。いつ埋葬するのが最適ですか?」

AIは地元の習慣や暦をもとに「4月19日が最も無難」と回答。男性はこれを根拠に家族を説得し、日取りを決めた。

ところが後日、「何時に埋葬すればいい?」と尋ねると、AIは午前7~9時を勧めながら、今度は「4月19日は埋葬の吉日ではない」と言い出した。

「えっ、この間は吉日って言ったのに?」

男性は思わず目を疑った。何度聞き直しても答えは変わらない。すでに親戚には連絡済みで、今さら日取りを変えるわけにもいかない。結局、釈然としないまま、予定通り母親を埋葬することになった。

すると、その後、親戚が交通事故に遭い重傷を負った。

家族からは「埋葬日が悪かったからだ」「風水を乱したせいだ」と非難の声が上がった。埋葬の日取りが一族の運勢を左右すると信じる家族にとって、事故は不吉な日を選んだ結果と映ったのだ。

怒った男性はAIの運営会社に苦情を申し立てたが、返答がなかったため、ついに提訴した。

そして、この事件にはもう一つ、驚きの展開がある。

なんと男性は、AIを訴えるための訴状まで、そのAIに書かせたというのだ。

この訴えを受け、裁判はすでに始まっている。ただし、男性の主張が認められるかは別問題だ。

弁護士によれば、AIが誤った回答をしたとしても、それが原因で実際に損害が生じたと証明するのは難しいという。そもそも、埋葬日と交通事故に因果関係があるという科学的根拠もない。

それにしても、母親の埋葬日をAIに決めてもらい、そのAIのせいで家族ともめ、最後はAIに相談してAI会社を訴えるとは……。

AIを信じすぎて起きたトラブルを、またAIに解決してもらおうとする。便利なAI時代ならではの、何とも皮肉な事件である。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!