中国の貿易白書、交渉決裂めぐって米に責任転嫁

2019/06/06
更新: 2019/06/06

中国当局は2日、米中通商協議に関する中国当局の立場を表明する白書を発表した。白書は、米中貿易戦を引き起こした張本人は米国であり、また貿易交渉の中断も米国に責任があると主張した。

中国国務院報道弁公室が公表した「中米経済貿易協議に関する中国の立場」白書は、5章で約8000字にまとめられた。

そのうちの2章は、米国への批判を展開している。「米国が対中経済貿易摩擦を引き起こし、両国および世界経済に害をもたらした」「米国は、中米経済貿易協議において言行不一致で、信用を重んじない」、知的財産権侵害や強制技術移転などの指摘は「全く根拠がない」とし、米中通商協議の決裂の原因は米側にあると強調した。

その一方で、白書は「中国(当局)は終始、平等・互恵・信用に基づき、協議に臨んできた」と自画自賛し、今後の貿易交渉に関して中国側の条件に合わせなければならないと主張した。

中国側の白書に対して、米通商代表部(USTR)と財務省は3日、共同声明を発表し、「過去の経緯と本質を誤って伝えているため失望した」と批判した。声明は、交渉が中断したのは、中国当局が貿易交渉で合意した執行メカニズムの部分を撤回したためだと改めて指摘した。

声明は、中国当局は今まで、約束を守ることがなかったため、合意の執行メカニズムは不可欠であるとした。声明によると、米側は貿易協議で、中国側に執行メカニズムの実施詳細を提出するよう求めた。「これは中国の主権に脅威を与えることがない上、これらの問題は貿易合意において常識である。同時に、長い間続いた貿易不均衡問題を解決する必要な要点である」

また、中国当局の白書も、「信用」を繰り返したが、「(中国側は)米中双方が合意すれば、中国(当局)はすべての約束を必ず真剣かつ徹底的に履行すると何度も強調してきた」とした。

ロイター通信5月8日付によると、中国当局は米中通商協議の合意文書案を大幅に修正し、今までの交渉を「白紙に戻すような内容」にした。中国側は、特に知的財産権侵害、強制技術移転など、米政府が最も不満を示している問題に関する法律を改正するとの約束を破ったという。

報道によれば、ライトハイザー米USTR代表は、「中国側が過去、改革の約束を守らなかったため、中国側に合意事項を順守させるには法改正が不可欠の立場を示している」。

大紀元中国語電子版は5月の報道で、中国当局が法改正を拒む理由が2つあることを明らかにした。1つ目の理由は、現最高指導部がメンツのために法改正を拒んでいることにある。2つ目は、中国当局が法改正を行えば、今後国際ルールに従い、透明性のある市場運営をしなければならないため、共産党体制の崩壊につながることを危惧しているからだ。

中国問題専門家の横河氏は、「中国当局は白書で、米側からの構造改革の要求に絶対に譲歩できない重要な理由を隠した。当局はこの理由を口にすることができない」と指摘した。

横河氏によると、中国当局は米中通商協議が物別れになったことに関して、国内外に説明しなければならなかった。白書は「その説明」だという。特に、中国当局は今まで米中通商協議について報道規制や検閲を行っているため、当局は「ニセの白書」で国民をミスリードしようとする狙いがある。

現在、中国国内経済が急速に悪化しているため、中国当局は白書を通して、貿易交渉失敗の責任や景気低迷の原因を米国に押し付ける意図もあると、横河氏は指摘した。

また横河氏は、現在、中国当局が米国批判を強めていることから、「合意文書案を修正する前の米中関係に、もう戻りたくないようだ」と推測した。「中国当局は、米政府に対して長期的に対抗していくつもりだ」

米ボイス・オブ・アメリカ2日付は、香港金融専門家の劉夢熊氏の話を引用し、中国の貿易白書は、米中通商協議の決裂に対する「中国側の逆切れだ」と指摘した。

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は6月28~29日、大阪で開かれる予定の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席する。大阪で新たな米中首脳会談が行われるかに、今注目が集まっている。

(翻訳編集・張哲)

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