カンボジアと中国の共同軍事訓練を敢行 中共肺炎リスクを考慮せず

2020/03/05
更新: 2020/03/05

カンボジアの通信社AKPによると、「反テロと人道主義」をテーマにした中国との共同軍事演習「ゴールデン・ドラゴン」は、3月14日~4月1日に行われる。中共ウイルス(新型コロナウイルス)の蔓延のリスクにもかかわらず、共同軍事演習を敢行しようとする背景には、中国に接近する専制体制フン・セン政権の国政運営の弱さがあると専門家は指摘している。

訓練はチャムキリ地区のチュムキリ軍事射撃訓練場で行われる。中国人民解放軍のメンバー265人を含む3000人の兵士と、戦車、砲兵、迫撃砲、ヘリコプターなどの車両が参加する。

首都プノンペンの中国大使館で行われた式典では、ティー・バン(Tea Ban)防衛大臣が、中国政府がフェイスマスク30万枚と防護服1500セットを寄付したと述べた。この式典で同大臣は、「今回のゴールデン・ドラゴン演習を含め、われわれのさまざまな協力活動は何も変わっていない」と述べた。

「今後も継続して開催する予定だ。キャンセルや中断はない」とし、「カンボジアと中国の協力関係はますます強化され、活発になるだろう」と付け加えた。

カンボジア政権与党の人民党広報はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、カンボジアでは中共ウイルス感染の症例が確認されていないため、軍事演習を開催したと述べた。

カンボジアはますます親中国になっている。2017年には米軍との共同演習を突如中止し、オーストラリア軍とのテロ対策演習も参加を見送った。

中国では、人民解放軍にも感染者が発生し、予定された軍事訓練が停止されたとの情報を、香港の組織・中国人権民主化運動情報センターが伝えている。同センターによると、軍の感染情報は機密扱いのため、政府公表の感染者数に含まれていない。

西側から離れるカンボジア

専門家は、フンセン政権が感染症リスクがあるにもかかわらず大型軍事演習を敢行したのは、中国関係を重視し、西側諸国から距離を置く政治的な意向が明白になったとみている。

タイのナレスアン大学ASEAN地域研究大学院の国際問題講師ポール・チェンバーズ(Paul Chambers)氏は、「カンボジアは自分が信頼できる同盟国であることを中国に示したいのだろう」とRFAの取材に答えた。

米カリフォルニア州オクシデンタル大学の外交および世界情勢担当ソファル・イヤー(Sophal Ear)准教授は、「カンボジアが直面する危険は、テロではなく、政治運営の貧弱さだ。新型コロナウイルスへの対応がまさにするべきことだ」と同氏は述べた。

カンボジアの中国接近は、フン・セン人民革命党政権が始まった98年以降から始まる。国内紛争により政権を握ったフン・セン人民革命党政権は、国際社会から孤立したが、同じ共産主義政党として、中国共産党政権はカンボジアの人民革命党を支援した。カンボジアとの首脳レベルの会談のたびに多額の援助を約束し、2015~16年まで、巨額の政府開発援助(ODA)を実行した。交通インフラ、農業、エネルギー・電力、水・衛生等の分野での支援も行っている。これは、広域経済圏構想・一帯一路が本格化する前の事業だ。一帯一路では、首都プノンペンとシアヌークビルを結ぶ高速鉄道の計画がある。

カンボジアは、南シナ海の領有権主張をめぐるASEAN諸国との紛争を含め、国際問題で中国支持を鮮明にしている。

中国はカンボジアで不動産、農業、娯楽などの分野に投資しているが、現地住民は、中国人の悪質な商習慣やマナーの悪さに絶えず不満を抱き、カンボジアがますます中国の言いなりになるのではないかと懸念している。

米国と欧州はカンボジアに対して制限を掛け始めた。米国は自由選挙を阻止した一部のカンボジア政府高官に対して入国ビザ発給を停止した。欧州連合は2月中旬、カンボジアの特例恩恵措置である「Everything But Arms(EBA)」(武器以外の全品目に対する無関税、数量制限なしの原則)政策の一部解除を決定した。EBAが失効すると、2020年8月にEUの輸入関税が再導入される。

(翻訳編集・佐渡道世)