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人口減少社会を切り拓く「行政の再構築」 第12回デジタル行財政改革会議開催

2025/12/25
更新: 2025/12/25

令和7年(2025年)12月24日、首相官邸において第12回デジタル行財政改革会議が開催された。本会議では、急速に進む人口減少社会という大きな課題に対し、デジタル技術を最大限に活用して公共サービスを維持・強化するための今後の取組方針が示された。

担い手不足と公共サービスの危機

今回の会議の背景には、日本が直面している深刻な人口構造の変化がある。日本は2008年をピークに総人口が減少しており、2050年には約1億469万人にまで減少すると予測されている。特に、社会を支える中核となる生産年齢人口(15歳〜64歳)の減少は著しく、2022年から2050年にかけて約25%、数にして約1,881万人も減少する見込みである。

会議のまとめを行う高市総理(出典:首相官邸ウェブサイト)

こうした人口減少と少子高齢化は、国民生活に直結するあらゆる分野で担い手不足を引き起こしている。具体的には、2040年までに医療・福祉の就業者が約130万人不足し、ドライバーなどの輸送・運搬関係も約100万人近くが不足すると推計されている。さらに、地方自治体の職員も2045年には需要に対して約22%不足すると予測されており、従来の対面や紙を前提とした行政運営では公共サービスを維持することが困難になるという危機感が、今回の改革の強い動機となっている。

第12回会議における主要な取組方針

高市総理は本会議において、人口減少が我が国最大の問題であるとの認識に立ち、デジタルを最大限活用して「生活者目線」で担い手を支援していく方針を強調した。デジタル行財政改革は「公共サービス等の強靭化」と「現役世代の活躍を支える働く環境整備」の二つを柱としている。

具体的な施策として、モビリティ分野では自動運転レベル4のバスやタクシーの実装を加速させるため、2026年度に向けて10箇所程度の先行的事業化地域への支援を集中させることが決定された。インフラ分野においては、人手に頼っていたメンテナンス業務をデジタル化し、人工衛星とAIを用いた水道の漏水検知や、ドローンを活用した上下水道施設の点検を推進することで、現場の負担を大幅に軽減する。医療・介護の現場では、電子処方箋や電子カルテの導入を推進するとともに、救急医療と消防が迅速に情報を共有できるプラットフォームの構築を進める。さらに、介護現場にテクノロジーを導入することで生産性を高め、質の高いケアを維持しつつ職員の負担を軽減するモデルの普及を図る方針である。

今後の予測と制度改革の展望

今後の最大の焦点は、これらのデジタル化を支えるための法的・制度的な基盤整備である。政府は来年の通常国会への法案提出を念頭に、官民データ活用推進基本法の抜本的な改正や新法の制定に向けた検討を進めている。この改革では、AI開発やデータ利活用の円滑化を図る一方で、国民の安心感を確保するために個人情報保護法の見直しも併せて行われる予測だ。

行政運営においては、2026年5月から各府省庁へ展開される政府独自の生成AI利用環境「ガバメントAI源内(げんない)」の活用が本格化する。これにより、政策立案の高度化と膨大な事務作業の省力化が同時に進み、公務員がより高度な判断業務に専念できる環境が整うと考えられる。また、全国約1,800の自治体が個別にシステムを開発する非効率を解消するため、システムの標準化・共通化が進められており、今後は「自治体からの照会事務の自動化」などの新たな候補業務についても具体化が進む見通しである。

総じて、デジタル行財政改革は「無駄を削る」という過去の行政改革の枠を超え、デジタルによって「行政を創り替える」段階へと移行している。今後はアナログ規制の見直しの成果を現場の実装につなげ、人口が減少しても一人一人が質の高いサービスを享受し、豊かに暮らせる社会の実現を目指している。

大紀元日本の速報記者。東京を拠点に活動。主に社会面を担当。その他、政治・経済等幅広く執筆。