アメリカで企業の営業秘密を盗み、中国側に提供していたとして有罪判決を受けた中国出身夫婦の市民権を剥奪した。3月30日、米カリフォルニア州南部地区連邦地裁のジェームズ・E・シモンズ・ジュニア判事は、オハイオ州在住のジョウ・ユーとチェン・リーについて、国籍に必要とする「善良な道徳的性格」を満たしていないと判断し、市民権の取り消しを命じた。違法行為によって道徳的な信用が大きく失われており、市民権は正当な手続きで得たものではないと判断した。
アメリカ司法省によると、両被告は入国当時、中国国籍だった。チェンは2007年、アメリカ国立小児病院の支援を受けてH-1Bビザ(就労ビザ)で入国し、その後「卓越した能力の保持者」として永住権を取得した。
ジョウも2008年、同じくアメリカ国立小児病院の支援でH-1Bビザにより入国し、2011年にチェンの配偶者として在留資格を変更し永住権を取得した。チェンは2016年、ジョウは2017年にそれぞれアメリカに帰化した。
2人は同病院で10年以上勤務した。その一方で、児童疾患の研究や診断、治療に用いられる「エクソソーム(細胞間のメッセージ物質)」に関する営業秘密を不正に取得し、中国で「北京捷騰生技公司」(Beijing Genexosome)を設立。盗み出した営業秘密をもとに事業を展開し、2017年に同社をナスダック上場企業のアバロン・グロボケア社に売却し、約150万ドルの利益を得ていた。
2019年7月、2人を米カリフォルニア州で逮捕した。2人は罪を認め、2021年に判決が言い渡された。チェンは禁錮30か月と出所後3年の保護観察、ジョウは禁錮33か月と同じく3年の保護観察のほか、260万ドル以上の賠償を命じられた。
裁判所は、両被告の電信詐欺などの行為が「道徳的に問題のある犯罪」に該当すると認定。これが市民権を取り消す十分な理由になるとして、情状酌量を認めなかった。営業秘密の窃取や詐欺の共謀はいずれも善良な道徳的性格の要件を損なう重大な違法行為だとし、市民権剥奪の根拠とした。
アメリカ司法省のボンディ長官は声明で、「アメリカ国民に対して重大な犯罪を犯しながら市民権を維持することは、移民制度の容認できない濫用だ」と指摘。また、「今回の帰化取り消し事案は、市民権を好き勝手に使ってよいものではなく、自分の努力で得るべき特別な資格であることを、司法省が強く示したものだ」と付け加えた。
また、司法省民事局のブレット・シュメイト司法次官補は「国籍を得ることは当然の権利ではなく、この国の人々から与えられる特別な資格だ。もしアメリカの移民制度の寛容さが悪用された場合、制度はそれを正す」と述べた。
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